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推測

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「俺だってごめんだ。」

「ふふ、そうですね。すみません。」
 2人が一緒に馬車に乗る所を想像して、笑いが込み上げて来る。

 すると、数人の女性の叫び声がした。
「きゃー!!本当にいらっしゃるわーー!」

 声のした方をマルセルが見上げ、軽く手を上げ、そのまま人差し指を立て口元に持っていった。私も少し見上げる。
 すると、さらに大きな叫び声となる。

「はは。静かになる事はなさそうだね。」

「ふふ。そうでしょうね。お二人が皇宮の外で揃うのは珍しいのではないですか?」

「それもだろうけど、アルヤも皇宮の外に出るのも珍しいからね。」

「珍しいのも見たさですね。」
 笑いながら、振り返ることなく言う。

「…ソフィアだっけ?侍女にするって子。
 中々度胸ある子だね。」

 マルセルが少し声のトーンを、落として言う。

「はい。私とも話せますし、お二人に問題なくお茶を出せてましたし、多少ですか声を出す事もできましたね。
 中々そういう子は居ませんから、貴重な子です。イジメないでくださいよ?」

 マルセルを見た後に、カレルドの方も見る。

「しねぇよ。」
 ボソッとカレルドが言う。

 “エマを揶揄うくせに…”

「そんな貴重な子を、皇宮侍女からさせていいの?それこそ、イジメられるかもよ?」
 マルセルが私を見ながら言う。

「心配しだしたらきりないですから…
 いきなり侍女経験のない子を、私の侍女として置くと、それこそ反感を食いそうじゃないですか?
 ある程度経験しつつ、先程話した人をしぼれればいいのです。」

「なるほどねぇ。
 女の子の集まりは怖いからねー。
 皇女見てて、つくづく感じたよ…
 皇女が帰ってから、皇宮侍女として迎えるのかい?」

「いいえ。私が皇宮に戻りすぐに迎える準備をします。」

「大丈夫かい?皇女らが来て、今大分皇宮内荒れてるけど?」

「でしょうね…
 ですが問題ありません。共通の敵がいた方が侍女同士での会話も増えますし、大変な事は始めに経験して、段々楽になっていく方がやりやすいでしょうし。」

 そう言い終わると、カレルドが言う。
「何を悩んでいるかと思ったら、そんな事まで考えてたのか。」

「はい。大事な友達を巻き込むのですから…
 色々考えました。」

「あの子を侍女にする為にここに来たのかい?」
 マルセルが私の顔を覗き込む。

「あ、いえ。偶然です。
 ソフィアがここに残っていることすら知りませんでしたから。」

「まぁ、正直助かるよ。俺が侍女らを調査するのには限界もあったし、どうしようか考えてたところだったしね。」

「ふふ。私達では、難しい事ですものね。」

「それで?
 ぶっちゃけ誰だと思う?裏にいる貴族は。」
 唐突なマルセルの問いに少し黙る。

「…何も証拠なんてありませんので、ココだけの話ですよ?
 可能性が高いのは、キャロル嬢だと思っています。」

「はは。俺もそう思うよ。」

「俺も。」
 マルセルもカレルドも賛同してくれる。

「噂が幼稚なのですよね…
『猛獣や魔獣を私が飼っている』って広められたところで、私の地位は揺るぎませんし。」

「ふ。幼稚か。確かにそうだな。」
 カレルドが、一瞬笑うのが見えた。

 マルセルはただ、笑うだけだった。

「ですが、お金まであの子だけで出せるとは思いませんね。
 ミラディン侯爵も咬んでいるなら、もっとまともな策を講じるでしょうし。」

「馬鹿貴族がキャロルに支援しているか。
 どこかの貴族にそそのかされて、使われているか。だな。
 まぁ。後者だろうな。」

「はい。
噂になっている騒動の時には、キャロル嬢は皇宮を出て1ヶ月ほど自宅謹慎中でした。
が、キャロルの侍女や、ダナン様は皇宮に出入りはしていた様ですし、その辺りから皇宮に広がった噂を耳にし、私への当て付けで噂を広めた。って所でしょうか。
それに目をつけた他の貴族がいる…」

「でも、キャロル嬢の侍女らは、皇宮侍女の服装じゃないね。
まぁ。手に入らないことはないのかもしれないけど。」
マルセルが考えながら言う。

「そうですね。
ですが、キャロル嬢は皇宮で教育を受けていましたから。
皇宮侍女何人かと、仲良くしていても不思議ではないですね。
キャロル嬢の裏にいる貴族と繋がっている、皇宮侍女なんかも、いるかもしれないと考えています。」

「まぁ。もう時期戻ってくるし、キャロルの侍女らも含めて、頑張って見つけ出してもらうしかないね。」

「はい。
一人見つけられれば、後はズルズルと芋づる式で出てきそうですけど…」
ここで、フッと店の中でカレルドが言った言葉を思い出した。




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