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予定外の訪問者
しおりを挟むすると、カレルドが舌打ちしながら立ち上がり扉を見つめている。
何だ?皆が思った瞬間、外から大勢の女性の悲鳴のような声が聞こえてくる。
「なんですか?」
皆が思っているであろう事を、私がカレルドに聞く。
「マルセルだ。」
カレルドの言葉に侍女二人が反応する。
ため息をつく私に、叔父が聞く。
「その名は、確か…」
「はい。もう一人の皇太子殿下です。」
叔母もソフィアも緊張した面持ちとなる。
「心配しなくて大丈夫ですよ。カレルド殿下と違って物腰の柔らかい方です。」
「おい。」
カレルドが私の方に少し振り向き睨む。
ソフィアの身体がビクっと反応するのが分かった。
「あら、本当の事ですもの。」
カレルドはまた舌打ちしながら出て行った。
「良く平気でそんな…」
ボソッとソフィアが言う。
「ふふ。いつもの事だもの。
まだいつもより柔らかい方よ。慣れてね?
私の侍女になると良く関わるわよ。」
コクリと大きく頷くソフィアを見て、扉に付いている窓に目をやると丁度マルセルの姿が見えた。
“本当にマルセル殿下ね…
どうしてわかるのかしら…”
「ちょっと待っててね。」
そう言い皆を残し、外に出る。
女性の野次馬が、多く集まっている。
「マルセル殿下?どうされたのですか?」
「アルヤ。君に会いに来たんだよ。」
ギュッと強く抱きしめられる。
「ちょっと!?やめてください!」
驚く私を離すことなくマルセルは続ける。
「3日ぶりなんだ。もう少し。もうアルヤ不足だよ…」
「何ですかそれ…」
私の頭の上から低い声がする。
「おい。」
「何だよ。お前はアルヤと優雅に馬車に揺られてたんだろ?
初日から黒尽くめの奴らを連れ帰らせて、仕事しろ。なんて手紙持たせんなよ。」
「あの黒い奴らはお前の仕事だろうが。」
“あ。初日の黒いローブの人たちの事?”
「だから仕事しに出てきたんだろ。
まぁ、皇女が面倒すぎて正直助かったんだけど。」
「あ、あの。そろそろ良いですか?
叔父さま達が中でびっくりしてますので…」
そう言いながら、店の窓から見える叔父達を
見る。
「おや。」
マルセルはそう言いながら少し私から離れ、中にいる皆にひらひらと手振る。
ニーナとエマはサッとお辞儀をしたのが見えた。
叔父達は呆然と立ち尽くしている様だった。
「挨拶しても?」
「はい。ですが、急な訪問なので皆驚いてますのでお手柔に…」
「もちろん。」
ニコリと笑うマルセル。
マルセルを連れて戻ると、すぐに挨拶をする。
「急な訪問、申し訳ございません。
思わず、愛しい人を追いかけてきてしまいました。
第一皇太子の
ロンバルディ マルセルと申します。
お見知りおきくださると幸いです。」
胸に手を当て、お辞儀をする。
カレルドとは違い、にこやかなマルセルを見て慌てながらも、叔父と叔母、ソフィアも深々とお辞儀をする。
言いたいことはあるが、叔父達の横に行き紹介する。
「ご紹介しますね。
叔父様と叔母様。良く一緒に遊んでいたソフィアです。」
「お会い出来て嬉しいです。」
マルセルの笑顔を見て硬直する3人。
そっとソフィアに耳打ちする。
「お茶の準備をお願いできるかしら。」
言いながら、ニーナとエマにも目配せする。
「は、はい!」
そう言い、ニーナ達と共に準備をしに行く。
エマがすぐに椅子を奥から持ってきたのを見て、叔父が言う。
「ど、どうぞ。お座りください。」
「話しに混ぜてくれるのですか?
光栄だなぁ。」
そう言いニコニコと椅子に座るマルセル。
既に座っていたカレルドの舌打ちが小さく聞こえた。
そんな2人の間に私は座り、叔父たちも座る。
「どんな話ししてたの?」
マルセルが私に聞く。
「ソフィアを…皇宮侍女として迎える話をしていました。」
「皇宮の?君のじゃなくて?」
首を傾げるマルセル。
「はい…」
さっきの話を簡単にまとめて説明する。
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