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真相への1歩
しおりを挟む「アルヤ。ちょっと来い。」
隅で、声を落として話す。
「さっきの男だが、皇宮の侍女だと思われる奴に金で広める様に頼まれたと吐いた。
ここに来るのも指示があったらしい。」
「…でしょうね。」
すぐに打ち解け、楽しそうに話す侍女らを見ながら言う。
「初めは、お前の侍女からだと話したらしい。
だから俺が呼ばれ、問い詰めたら皇宮の侍女だと言い直した。
ローブで隠してはいたらしいが、袖のボタンの模様と、隙間から見えた服装で皇宮の侍女だと思ったらしい。」
「…はあ?」
思わず眉間に力が入る。
「そんな顔するな。
そう言えと、言われたらしい。」
深いため息をつき、少し頭を抱える。
「…私も話す事できますか?」
「そう言うと思って来たんだ。
だが、記者がまだウロウロしている。少しだぞ?」
私を見下ろし不敵に笑うカレルドに私は頷く。
視線を戻すと、ニーナが紅茶のポットを軽く持ち上げコチラを見て笑った。
ニーナの元に行く。
「ちょっと外に行ってくるわ。
戻ってきたら頂くわね。」
「かしこまりました。」
「どうか…したの?」
心配そうな顔をした叔母が言う。
「少し話しに行くだけですから。大丈夫ですよ。すぐに戻ります。」
ニコリと叔母に話し、ニーナの耳元でこそっと言う。
「殿下を連れて戻ってくるわ。
ソフィアにお茶を運ばせて?無理はさせなくていいわ。」
黙って頷くニーナと離れ、カレルドと外に出る。
エノワールとロベルト、ベテラン騎士の3人が先程の男を囲っていた。
私に気づき3人は軽くお辞儀をする。
手を後ろに回され、縄で捕らえられ膝をつき俯いている男の前に立つ。
「聞きたいことがあります。」
男のは顔をあげ私を見上げた。横にいるカレルドも見えたのだろう、顔がみるみる青くなる。
屈み、少し小さな声で言う。
「アナタに依頼した、侍女だと言う方の特徴を詳しく教えてください。」
観念した様にポツリポツリと話す。
「黒いローブを深く被ってたので顔は見ていません…
声や背格好で女性だと思いました…
金を受け取る時に見えた、袖のボタンの模様と、隙間から見えた服装で皇宮の侍女だと思いました…」
「私の侍女だと言えと言われたのでしょ?どの様に言われましたか?」
「え、えっと…
誰かにバレたりしたら、アルヤ様の侍女に言われたと言えと言われました…」
「私の事を『アルヤ様』とその者は言ったのね?」
「え?は、はい…」
「その話は、いつの事?」
「5日前の夜です…」
それを聞き立ち上がる。
「わかりました。」
横にいたカレルドが言う。
「すごいな。随分しぼられたんじゃないか?」
“私の事を『様』呼びする者は少ない。
後は皇宮に戻ってからになるわね。”
「はい。」
「お見事ですね。」
エノワールが私に笑顔で言う。
「ありがとう。
さぁ、戻りましょう。少し協力してください?座ってくれるだけでいいので。」
ニコリと笑いカレルドと店に向かって歩く。
「ソフィアとか言う娘。お前の叔父、叔母の娘ではないのだろ?」
「はい。…近くの孤児院の子です。」
私の返事に返すことなく、カレルドと店に戻る。
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