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自己紹介
しおりを挟む「アルヤ!?」
はじめに飛んできたのはソフィアだった。
次に、叔母がくる。
「…もぉ…恥ずかしかったぁ」
「え?」
ソフィアの声がした後にカレルドの声がする。
「何だ?感動で泣いてるかと思ったら、俺への不満か。」
フッと笑うカレルドを見上げる。
「色んな感情が飛んでいきました!あそこまでしなくて良いでしょ!?」
「アレくらいしとけば、馬鹿げた噂はかき消されるだろ?」
「また新たな噂が広まるだけですよ…もぉ…」
私とカレルドの会話にクスッと笑ったのは側に来ていたソフィアだった。
「さっきまであんなに毅然としてたのに、別人ね。」
「もぉ、ソフィアもよ!あんなのに食ってかからなくていいのよ!」
そう言いながらソフィアを抱きしめる。
「3日くらい前にフラッとやって来て、あの噂を言って回ってた人だから…つい。」
ソフィアが、横にいる叔母と後ろにいる叔父を見る。
抱きしめていた手を離し、私も振り返る。
「私達も反論したのだが…力に慣れずに申し訳なかった。」
叔父が私に謝った。
「ごめんなさいね。」
横の叔母も謝る。
「大丈夫です。謝らないでください。」
叔父と叔母に笑顔を向ける。
“3日前…私たちが皇宮を出た日ね…”
カレルド方を向くと手が差し伸べられた。
「いつまでそこでしゃがみ込んでるつもりだ。」
「殿下のせいなのですけど?」
そう言いながら手を取り立ち上がる。
「殿下…ってやっぱり…あの…」
ソフィアはボソッと言い、呆然とカレルドを見上げる。
「あ、ごめんなさい!紹介するタイミングを失ってたわね…」
するとカレルドがフッと笑うと、胸に手を当て、少しだけ腰を曲げる。
「第二皇太子の
ロンバルディ カレルドだ。」
“そうよね…この人、皇太子なのよね。”
ソフィアがガバッと立ち上がりお辞儀をする。
「ご、ご挨拶が遅れました、申し訳ございません。ソフィアと申します。」
叔父も叔母も再び深々とお辞儀をし、挨拶をカレルドにする。
「構わないから、顔をあげろ。」
カレルドが言うと、3人は顔をあげた。
すると、扉がノックされる。
扉の窓からエノワールの姿が見えた。
叔母が扉を開ける。
「お話中、大変申し訳ございません。少々よろしいですか?」
胸に手を当て軽くお辞儀をし、カレルドを見るエノワール。
カレルドは頷き私に言う。
「扉前に、イリスと侍女を前に置いておく。戻るまで出てくるなよ?」
「わかりました。皇太子殿下。」
ニコリとカレルドを見る。
「何だそれ?」
「何でもありません。」
私の返事に、フッと笑いカレルドは扉に向うが、叔父の横で動きが止まる。
「腰が悪いのだろ。気にせず座って構わない。」
そう言い店から出て行った。
“え…”
「み、見ただけで分かるのか…?」
驚いて言う叔父に、叔母が椅子を持ってくる。
「凄い方ね…」
「お身体、悪いのですか?」
椅子に座る叔父の前に屈み手を取り、心配の表情を見せる。
「もう70歳にもなると、ガタがくるのは当然だよ。」
私に優しく笑いかける叔父。
「それにしても、高貴な方になり過ぎて…どう接していいか分からなくなるわね。」
叔母が私を見て笑い言う。
「何も気にしなくて大丈夫ですよ。
昔のように接してください。ソフィアもね。」
叔父と叔母にニコリと笑いかけ、後ろを向きソフィアにも言う。
「…一緒に遊んでいたのに、次期皇后陛下になって帰ってきて、皇太子殿下も連れてきて…
凄く不思議ね。」
ソフィアが何とも言えない表情で言う。
「そうね。あの頃はこんな事になるなんて想像もしてなかったわね。
全然帰ってこれなくてごめんなさい。」
立ち上がり言う。
「いいのよ…色々と大変だったのは知っているわ。」
今度は叔母が私を抱きしめる。
「ありがとうございます。」
私も抱きしめ返す。
「心配で手紙を出したが、受取不可で戻ってきてしまってね。」
叔父の言葉に驚く。
「え!ごめんなさい!
シャンドリ邸では届いていて、何度かお返事出せましたけど
…皇宮では私への手紙は厳しく選別され私の元に来る物は少ないのです…
私から出すべきでしたね…すみません。」
「大丈夫だよ。大変なのは分かっていたし、たまに聞くアルヤの噂で、元気な事がわかったからそれで十分だったからね。」
叔父の言葉に、少し苦笑微を見せる。
「変な噂じゃないと嬉しいのですけど」
すると、扉についている窓からエマがチラチラ見ているのがわかった。
クスッと笑う。
“気になるわよね。”
そんな私を不思議そうに見る叔母
「どうしたの?」
軽く抱き合っていた叔母と離れ、扉の前に行く。
「紹介したい子達がいます。」
そう言い扉を開け、侍女二人を店に招き入れる。
「私の侍女をしてくれている、ニーナとエマです。」
私の紹介で2人は深々とお辞儀をする。
次に、2人に紹介する。
「叔父さまと叔母さま。
よく一緒に遊んでいた同い年のソフィアよ。」
お互い挨拶をしていると、カレルドが戻ってきた。
少し空気が張り詰めるが、カレルドはお構いなしに私を呼ぶ。
「アルヤ。ちょっと来い。」
隅で、声を落として話す。
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