記憶喪失の令嬢は皇太子に激執着される

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港街到着

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何度か襲撃はあったが、ロベルトの活躍もあり何事もなく本日の目的地の街に着き2日目が終わる。

予定通りの為、領主が出迎えてくれ一晩泊めてもらう。
特に何事もなく、次の日の朝を迎える。

侍女らが張り切り、少し着飾る事になった。

「あまり着飾ると萎縮させてしまうから、少しよ?」

「わかってます!」
エマが私の髪を梳かしながら言い、準備が進められる。

カレルドが迎えにきて2人で領主にお礼を言い馬車に乗り込み、3日目の訓練がはじまった。

ロベルトは昨日と同じく、私達の馬車の横に来る。
目も合わせようともしないロベルトを見て笑う。

港街に近づいてきて海が見えてくる。
窓を開け、潮風を感じながら外を眺める。

楽しみにしている自分もいるが、緊張や不安がそれを覆う。

“お母様と出て以来、来れてなかったのよね…
今更になって会いに来て。と不快に思わないだろうか…”

そんな事を思っていると、ずっと黙っていたカレルドが口を開く。

「事前にエノワールを使いに出し、確認させている。
お前が訪ねたいと言っていると伝えると、泣いて喜んだそうだぞ。」

驚きカレルドを見ると目が合う。

「…ふふ。前々から思っていましたが、私の心の中が読めるのですか?」

「丸わかりだ。」
フッと笑われる。

「何ですかそれ。」
笑っていると、開けていた窓から風が入ってくる。
髪を抑えながら、外に目線を戻し言う。

「…ありがとうございます。」

これ以上は話す事なく、山道が終わり港街の前まで来る。

事前に訪問予定を伝えていた為、領主と住民らの出迎えてを受ける。

カレルドが馬車から降り、馬に乗り戻ってきた。
その間に、侍女が私の乗っている馬車に乗り込む。

「何だか緊張しますね!」
エマが胸を抑えて言う。

「ふふ。そうね。」

カレルドとエノワールが馬車の右側に。
ハンナ、イリス、ロベルトは左側。
後ろにベテラン騎士2人が囲む。

「いいか?」
カレルドに聞かれる。

「はい。お願いします。」

「窓は閉めとけよ。」

頷き、窓を閉める。

「遠いのですか?」
ニーナが私に聞いてくる。

「そんなに遠くなかったはずよ。」
そう言いながら外を見ると、ずらりと市民達が一目見ようと並んでいる。

カレルドを見てだろうか、黄色い悲鳴が聞こえてくる。

私も何人もの人たちと目が合う。
手を振る人達に軽く手を上げ答える。

何となく、見覚えのある風景。

“ここだ。”

そう思った瞬間、馬車が止まり扉が開かれ、先に侍女らが降りる。

扉の方を見ると、懐かしい店先が見え老人の2人の足が並んでいるのが見える。

降りようとすると、カレルドの手が差し伸べられた。

その手を取り、ゆっくり降りる。

目の前で腰を90度程に曲げお辞儀する老人2人の前に立つ。

「お待ちしておりました。」
顔を上げずに言う2人。

「顔を上げてください。」
ゆっくり顔が上がりすでに泣きそうな表情が見えた。

ドレスの裾を持ち上げ、陛下にするような丁寧にお辞儀をする。
「叔父様。叔母様。お久しぶりでございます。」

周りに集まっていた野次馬から騒めきが聞こえる。

「そ、そんな!私たち何かに!」

叔母の慌てる声がし、顔をあげ抱きつく。

「お元気そうで…何よりです。」

「貴女こそ…」
叔母の振り絞る様な声がする。

スッと離して笑いかけ、次は叔父に言う。

「叔父様も、お元気そうで。」
既に手で涙を拭う叔父は言葉にならず、大きく頷く。

大きいと思っていた2人の小さくなった背に寂しさを覚える。

「ここでは何ですから、中にどうぞ。」
そう言いながら、叔母はお店の扉を開けようと後ろを振り向こうとした時、野次馬の中から声がした。

「お嬢様!お嬢様!!
危ない動物を飼われていると言う噂は本当なのですか!?皆不安がっていますよ!」

その声のした方を見る。

掲げられた手には真新しい手帳が握られ、人混みをかけわけ前に来る男はイリスに止められいる。

“手帳を持っていると言うことは、記者だろうか…”

その男の発言を皮切りに、記者だと思われる人達から次々と手が挙げられ質問が飛ぶ。

野次馬達の騒めきが大きくなっていく。

ため息を吐き、不安そうな顔をする叔父と叔母をの顔を見る。

2人にニコリと笑いかけ聞く。

「その噂で、皆さんが不安がっているのは本当ですか?」

「えぇ…」
バツの悪そうに言う叔母

「…そんな事する子ではない。と言って回ってはいるのだが」
叔父も言う。

すると、若い女の人の声が響く。
「ありえない。と、何度言ったらわかるのですか!!」

最初に手を挙げた男に喰ってかかっている子を見る。




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