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騎士ロベルト
しおりを挟む朝、出発前にエマから受け取った本を手にする。
“恋愛物ね…エマらしいわね。”
ページを開く。
大人になり初恋の人と再び出会い、発展していく物語。
半分ほど読み、本を閉じ外を見る。
“やっぱり、恋愛物は私には合わないわね。”
空想広がるファンタジーや、
体験する事ないであろう非日常の物語を好む私には
皆んなが面白いと言う恋愛物は分からない。
“私自身が、特殊な環境にいるせいのあるのかも…“
そう思いながら、カレルドを見る。
「何だ?」
カレルドが少し目を開ける。
「いいえ。何でもありません。」
ニコリと笑い、また目を瞑るカレルドを見届けてから外を見る。
“初恋かぁ…”
思い出し、頬が緩む。
ボーッと外を眺めていると、騎士たちが入れ代わり立ち代わりに私を見に来ている様だった。
何人かと目が合う。
すぐに目を逸らす者。
軽く会釈する者。
話そうとしたのか、馬車の近くまで寄る者もいた。
「ふふ。鬱陶しいわね。」
笑ってしまい、勘違いした騎士が嬉しそうな顔を見せた。
「お前でもそんな、言葉使うんだな。」
「失礼いたしました。小声で言ったつもりでしたが聞こえました?」
カレルドの方を向き言う。
「あぁ。」
「見てたのですか?」
「まぁな。馬の足音で近づいてくるのはわかるからな。」
「皆、新人ですか?」
「いや、中堅が2人いたな。」
「あら。殿下が私と乗ってるの知っているでしょ?わざわざ怒られにきたのかしら?」
「寝てるとでも思ったんじゃないか?」
半目だった目がパチリと開き、赤い瞳が私を見る。
「ふふ。ずっと目を瞑られてますからね。」
そう言いながらまた窓の外を見ると、また違う騎士と目が合う。
窓を開け、話しかける。
「私に何か用?」
「な、何されているのかと…思いまして…」
話しかけられるなんて思っていなかったのか、詰まりながら言う騎士。
「それを知ってどうするの?」
黙る騎士の目を見続け言う。
「暇なの?」
「あ、いや…」
どんどん顔が青ざめていく。
どうやらカレルドと目が合っているようだった。
「申し訳ございません…!」
そう言いだんだん後ろに下がって行った。
「ふふ。話す度胸があるから来てると思ったけれど、違った様ですね。」
クスクス笑う私と違い、カレルドは大きなため息をつき、窓を開け腕を出す。
少しして、指揮官が横に来る。
「どうされましたか?」
「止めろ。」
少し狼狽えるが言う。
「…かしこまりました。」
すぐに1番前に行きゆっくりと馬車が止められる。
指揮官が戻ってきて、カレルドは馬車を降りて私に言う。
「降りるなよ。」
「はい。」
後方に向かうカレルドを窓から見ていると、ロベルトが横にきた。
「あら。どうしたの?」
「ここに居ろ。っだと。」
私とは目を合わせず、後ろを見ながら言うロベルト。
私も後方を見ながら言う。
「気になる?」
「別に。怒られて当然だろ。」
「ふふ。そうね。」
怒号も聞こえず、悲鳴も聞こえない静かな後方から目を離し、ロベルトを見る。
「だいぶ、雰囲気かわったわね?訓練はどう?」
チラッと私を見ただけで、すぐに視線を戻し、一言だけ言う。
「別に。」
「淡白ねー。」
話していると、カレルドとエノワールが戻ってきた。
「不快な思いをさせてしまった様で、申し訳ございません。」
エノワールが私にお辞儀しながら言う。
「えぇ。鬱陶しかったわ。」
笑顔で言う。
「この様な事がないよう、指導していきます。」
「お願いね。」
エノワールと話している最中に、カレルドは馬車に乗り込む。
そんなカレルドを見て思いつく。
「ロベルトを、そこにずっと居てもらう事はできますか?」
「好きにしろ。」
カレルドの許可を貰い、ロベルトに言う。
「どうかしら?貴方が嫌なら無理には言わないわ。」
「…わかった。」
「わかり.ま.し.た。でしょ?」
エノワールに言われて言い直すロベルト。
「…わかりました。」
「ふふ。お願いね。」
そう言い窓を閉める。
エノワールは前に行き出発の合図をし、ロベルトはそのまま私達の馬車の横についてくる。
機嫌の悪そうなカレルドに言う。
「気に食わないですか?」
「別に。」
ロベルトがいる反対側の窓に肘をつき眺めながら言うカレルド。
思わず笑う。
“本当。そっくりなんだから。”
何度か襲撃はあったが、ロベルトの活躍もあり何事もなく本日の目的地の街に着き2日目が終わる。
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