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天使
しおりを挟むどんどん高く舞い上がり、太陽が沈んだ山の先の街の灯りまで見えてきた。
「あ!あれ海ですか?」
「あぁ。すぐ横の街がお前が言ってた港街だ。
真っ直ぐ行けば明日の夕方には着くが、回って行くから明後日の昼頃の到着予定だ。」
「わかりました。」
灯りのつく港街を見ながら言う。
“キレイ…”
そう思いながら片手を前に出す。
「何だ?」
手を横に動かす。
細長く紐状に水を出し、その水をほんのりピンクに光らせて見せた。
「ほぉ。」
「実は、色々試したのです。殿下の様には出来ませんが…」
「これの事か?」
カレルドは、パチンと指をならす。
空からキラキラと光るものが降ってくる。
「はい。…本当、簡単に出しますね」
空を見上げて言うと、手を引かれた。
腰に手を回され、ふわっとドレスの裾が揺れる。
「年季が違うからな。そこまで出来れば上等だろ。」
「そ、そうですか?」
カレルドの揺れる髪から耳に付けている魔鉱石が見える。
温室で指輪を貰った時の事を思い出す。
“指輪だけじゃなくて、耳につけてる魔鉱石まで光ったのよね…”
そう思い、指輪を光らせていた様に試してみる。
思いの外強くピンクに光った。
“あ…”
「…お前なぁ。」
「ふふ。すみません。
ラドラインかと思いましたか?」
「あほか。気配で分かるし、光り方も違う。
今お前が光らせ見せたのも、ピンクがかっていたしな。」
「なぜか少し、ピンクになるんですよね…」
「お前だと分かりやすくて良いじゃないか。
何かあったらそれで呼べ。」
優しい表情を見せる笑うカレルド。
「はい。」
私も笑顔を見せる。
瞬間、カレルドの後ろから少し強い風が吹く。
髪とドレスが後ろに靡いた。
「…天使の国か。よく言ったもんだな。」
「え?」
「さぁ。戻るか。準備が終わった様だ。」
歩いてきた森の先の開けた場所を見下ろすカレルド。
同じ場所を見ると、無数にテントが立てられ灯りがついている。
大勢の騎士達が、私達を見上げているのが分かった。
「み、見られてますよね?」
「そりゃぁ、俺たちから見えるなら、あっちからも見えるだろうな。」
「何か、恥ずかしい…」
「今更だな。」
ゆっくりと、真下ではなくテントの近くに降りる様に少し進みながら降りる。
「ホントーーーーに!おキレイでした!」
私用に立てられた大きなテントに入りつつハンナが言う。
「ふふ。まだ言うの?もうやめて頂戴?」
「もう、目に焼き付いて離れませんもの!」
就寝時の護衛としてついてきたイリスも声をあげる。
「ええ!お二人のシルエットにキラキラと星が降ってくるような!
まるでお伽話を見ているような感じでした!
もう、お話が書けそうなくらいです!」
エマもまだ興奮が覚めていない。
ニーナはそんな3人の後ろで、クスクス笑うだけだった。
「天使だって呟いていた方も何人か居ましたよ!
ピッタリだな!って思いました!」
鼻息荒くエマが私の横で言う。
「私も聞きましたし、思いました!」
「私も!お嬢様の髪とドレスが舞うたびに息を呑みました!」
ハンナとイリスが言う。
「天使だなんて、言い過ぎよ。」
笑う私の後ろに来てニーナが口を開く。
「適切な表現だと思いますよ?」
「え!?ニーナまで!」
ニコリと私に笑顔を見せる。
「美しくて賢くて優しくて人当たりもいいし剣まで使えて…
お嬢様完璧すぎません?」
ハンナが言う言葉に反応するのはエマだった。
「そうですよ!お嬢様は完璧なんですぅ!」
えっへんと、胸を張る。
「何でエマさんが偉そうなんですか。」
イリスの言葉に、皆んなが笑う。
次の日も、カレルドと馬車に揺られる。
今日も目を瞑り、寝ているのか起きているのかわからないカレルドの近くで外を眺める。
朝、出発前にエマから受け取った本を手にする。
“恋愛物ね…エマらしい。”
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