115 / 217
命に代えても。
しおりを挟むはぁー。
長いため息をつき、カレルドは馬車を降りた。
「お前はここにいろ。」
エノワールに言い、後方に歩いて行く。
「うわぁ。」
眉間にシワを寄せ、苦い顔をするエノワール。
「あの…耳を塞ぐのをオススメします…」
「え?何するつもりなの!?」
すると、後ろの方がざわつくのが分かる。
男達の悲鳴と怒号が段々大きくなっていく。
嫌な予感がして手で耳を塞ぐ。
エノワールは既に耳を塞ぎ、チラチラと後ろの様子を伺っていた。
『パァン!!!』
と、凄まじい音と共に一瞬光る。
「ふぇ!!??」
「まだ来ますよ!!」
『パァン!!パァン!!』
次は2回連続で鳴る。
あまりにも凄まじい音に、思わず目を瞑る。
間があき、ゆっくり目を開ける。
「もう、大丈夫そうです。」
後ろを確認し、エノワールが言う。
「何あれ!?」
「あぁやって威嚇し、脅してるんですよ。」
「あれ脅しなの?!」
“何人か殺ったんじゃないかと思うような音だったけど…”
「えぇ…まぁ。」
エノワールと話しているとカレルドが帰ってきた。
「行くぞ。」
馬車に乗ってきたカレルドから、不思議な香りがする。
雨が降ったあとの様な。そんな香り。
馬車の扉が閉められ、ゆっくり動き出す。
「すごい音でしたけど…」
「あぁ。ただの威嚇だ。殺したりはしてないから安心しろ。」
私の考えがわかるのか、思っていた事を答えられる。
「そうですか…」
少し早い鼓動を感じながら外を見る。
“疲れた…”
馬に乗ったエノワールが近づいて来たのに気づきカレルドは窓を開ける。
「何だ?」
「回り見てきましょうか?」
「いや、指揮官の指示があるまで動くな。」
「本当に何もしないつもりですか?」
「あぁ。何かない限り動く気はない。」
“…じゃぁさっきのは何かあったから動いたって事?
例のやつら、とか言ってたわね…”
外から目を離さずに思う。
「はぁ…わかりました。取り返しがつかなくなる前に動いて下さいよ。」
エノワールのその言葉にバッと2人を見る。
「おっと。失礼いたしました。」
私に笑顔をみせ言うエノワール。
カレルドも私を見て笑う。
「心配するな。命に代えても守ってやるよ。」
ブワッと顔が火照る。
「よくそんなセリフを言えますね。」
「お前も言ってこい。」
そうエノワールに言うと、ピシャッと窓を閉めるカーテンも閉めるカレルド。
「ふふ。ぜひエマにも言ってくれる方を送ってあげてください。」
カレルドは目を瞑り言う。
「知らねぇよ。」
クスッと笑い朝から読んでいた本を手に取る。
カレルドと馬車に揺られ過ごす。
たまに話つつ本を読む。沈黙の時間のほうが長いけれど苦ではなかった。
もう一度、襲撃があったが直ぐに制圧され、恐怖などは感じなかった。
段々と日が暮れ始め空が赤くなる頃、馬車が止まる。
「今日はココで設営だな。」
カレルドに手を引かれ馬車を降りる。
開けた場所に、騎士達がテントを組み上げていく。
ひんやりする風が吹く。
「絶対1人になるなよ。いいな?」
「わかりました。」
侍女らは食事の準備の手伝いに行きく。
私達は、新人騎士たちが指導を受けながら悪戦苦闘しつつテントを立てる姿を見守る。
「はぁ…。まだまだ時間がかかるな。」
「こういうのを含めての訓練なのでしょ?」
「さぁな。」
「さぁな。って…
何度も遠征訓練しているのでしょ?」
「初めてだが?」
「え?!そうなのですか!?」
「あぁ。俺の隊ではな。
他の隊は隊長に任せてさせた事はあるが、俺は最後の一日だけ見ただけだしな。」
「え、ならなぜ今回訓練を?」
「まぁ。色々と事情はあるが…」
そう言いながらカレルドは空を見上げ、私を見る。
首を傾げる私にカレルドは腕を出す。
「ここで突っ立って話すより、歩きながら話そうじゃないか。」
突然の提案に驚いたが、出された腕に手を軽くかけながら言う。
「いいですよ。」
ニコリと笑うと、カレルドも微笑み返してくれる。
、
1
お気に入りに追加
192
あなたにおすすめの小説

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)
青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。
だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。
けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。
「なぜですか?」
「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」
イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの?
これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない)
因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。


【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる