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エノワール
しおりを挟む門の前には、豪華な馬車が2台と、その後ろに荷馬車が数台並んでいた。
既に準備が出来ているのか、騎士たちは整列していた。
「あんな豪華なので行くの?」
エノワールに聞く。
「はい。襲ってこないと訓練にならない。と言われ、ひと目で高貴の方が乗っていると分かるようにしました。」
「そ…そうなの…」
“そんな説明で、納得してしまう自分怖いわ…”
カレルドの横に行き言う。
「お待たせしました。」
「あぁ。お前は2番目の馬車だ。1番目には侍女二人とハンナを乗せる。」
「わかりました。」
侍女らはエノワールに連れられて、1番前の馬車に乗り込む。
私は、カレルドに手を差し伸べられ手を取り2番目の馬車に乗り込むとカレルドも入ってきた。
「あれ?一緒に乗るのですか?」
「あぁ。」
そう言うと、馬車の窓を上から下にスッと下ろして開け手を出しなにから合図をしている。
カレルドと同じように窓を開ける。
訓練なのだろうが、何だか浮かれている様な新人が目に入る。
その中に、一人だけ異常に緊張の顔をしたロベルトの姿があった。
“だいぶ顔つきが変わったわね…”
そう思っていると、馬に乗った騎士が来る。
「出発致します。」
カレルドと私を見て言う。
“指揮官を任せられてる人ね。”
「あぁ。」
カレルドの素っ気ない返事の後に、笑顔を作り言う。
「お願いしますね。」
「は、はい!」
すぐに前に行き、ゆっくりと馬車が動き出す。
「お前は、そうやってすぐ俺の敵を増やそうとする。大人しくしてろ。」
カレルドが窓の縁に肘をつき私を見る。
「敵って…大袈裟ですね。ちょっと笑っただけじゃないですか。」
「大袈裟なもんか。」
「カレルド殿下こそ、少しは笑って味方でも増やしたらどうですか?」
そう言った瞬間、ぶふ。っと誰かの吹き出す笑いが聞こえた。
前のニーナ達が乗っている馬車と私達の馬車の間に、馬に乗って着いていているエノワールが肩を震わせるのが分かった。
“聞こえてたかな?”
声でわかったのか、カレルドは外を見もせずに言う。
「おい。エノワール。」
段々エノワールが私達の横に馬を寄せる。
「すみません。聞こえてきたのもで。」
まだニヤケが残るエノワールを睨むカレル
ド。
“エノワールはドイムと同じ側近なのよね…”
出発前のドイムを思い出す。
「ねぇ。エノワールは私のこと好き?」
私の唐突な質問に笑顔が消え、青ざめるエノワール。
「あ”ぁ?」
カレルドは私を見て凄む。
「な、何ですか、その質問…殺す気ですか?」
怯えるエノワールに言う。
「あ、ごめんなさい!ドイムの話を最近聞いたからつい!」
慌ててカレルドとエノワールに弁明する。
「あぁ…アイツか。」
カレルドがボソッと言う。
「あぁ…
同じ側近だからって僕もそうだと思わないで下さい…
首が繋がったまま棺桶に入りたいのですから…」
“二人ともドイムが私の事思ってるの知ってるのね…”
「最近エノワールも、私に対してよそよそしかったから。」
「そ…そうですか?」
目線を私からそらすエノワールを見て言う。
「ほらー。」
「もう、勘弁してくださいよ…」
エノワールはカレルドを見て助けを求める。
するとカレルドはフッと笑い言う。
「コイツはお前が怖いらしい。」
「え?怖い?私何かしたかしら?」
「ちょっと!言い方!」
焦るエノワール
「お前の部屋の前で、俺とマルセルが言い合ってたのを怒ったろ?あれが怖かったらしい。」
カレルドの説明にエノワールは片手で顔を覆い言う。
「怖かったとか言ってませんから。
威厳を感じた。と言ったんです。
…あんなに怒られている姿初めて見ましたし」
「同じようなもんだろ。」
カレルドがボソッと言うのを聞き逃さなかった。
「違いますから!」
そんな2人に思わす笑ってしまう。
「ふふ。何だ。ドイムの様な理由で私を避けてるのなら、ニーナはあげられないなって思ってたの。良かったわ。」
ニコリとエノワールを見る。
「な!」
一気に顔が赤くなるエノワール。
「アイツと同じ理由なら、やる、やらないの問題の前に、頭と体が離れる事になるがな。」
サラッと怖いことを言うカレルドを見て思う。
“あ…それもそうね。”
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