上 下
105 / 191

遠征訓練

しおりを挟む






「案内くらいしてやってこい。」
 陛下に言われ、マルセルが皇女の元に行き謁見室からゾロゾロと出ていくのを見送る。

「申し訳ございません。言い過ぎましたよね。」
 皇后に謝ると、大声で笑い出す。

「いいのよ!私こそ邪魔してごめんなさいね!」

「いえ。邪魔だなんて…」

 陛下も近づいてきて言う。
「中々堂々といい返しだったと思うよ。
 喧嘩売ってきたのは皇女からだ。気にしなくていいよ。」

「そうですか?」

「あぁ。見れば分かるのにわざわざ
 貴女がそうだったのですか。なぞほざいている時点で気に食わなかったから、良くやってくれたよ。」
 笑う陛下。

 両陛下と階段を下りるとカレルドが来る。
「ちょっと来い。話がある。」

「?はい」

 ニーナ達を見つけ目で合図し、コチラに来るのを確認する。

「それでは、失礼いたします。」
 両陛下にお辞儀をしカレルドに着いていく。




「どこ行かれるのですか?」
 ゆっくり歩くカレルドの少し後ろから着いていく。

「遠征が明後日に決まった。
 メンバーも決まったから顔合わせだ。」

「え…」
 ”てっきり無しになったのかと思ってた…”

「来たくないなら来なくて良い。」
 カレルドの横に並ぶ。
「いじわるですね!」

「それは、お前だろ?」
 フッと笑うカレルド。

「ふふ。確かに!
 意地悪ついでにお聞きしていいですか?」

「なんだよ。」

「今日の私に合わせて、黒のスーツなのですか?あの時、後で見てらしてましたもんね?」
 歩きながらカレルドの顔を覗き込む。

「…あぁ。だったら何だよ。」
 やっとカレルドと目が合う。

「いえ。お似合いですよ!」

「そりゃどーも。」

 ジーッとカレルドを見つめる。
「わかったわかった。お前も似合ってるよ。」

「ふふ。ありがとうございます。」

 少し歩くと第二騎士団の皆が見えてきた。
 セナが剣を振り回している。

「セナって本当に来ないんですか?」

「あぁ。アイツには違う仕事を任せる。」

 “ふぅーん。ただのお留守番ではないのね。”
 セナを見ながら思う。

 騎士団長が私達に気づき近づいてくる。
「遠征メンバーだけでいい、並ばせろ。」

 すぐに号令がかかり、私たちの前に並んでいく。
「新人24人、中堅9人。ベテラン5人。後お前用に女騎士2人。の40人だ。と俺だな。」

「意外と多いですね。」

「訓練でもあるからな。こんなもんだろ。
 1週間程の予定だ。」

 “そうなんだ…”

「いいか、次期皇后を護衛しつつの遠征訓練だ。傷1つ付けることも許されないからな。
 もしもがあれば、お前らの首なんぞで許される話ではなくなる。
 心して臨め。」
 騎士たちに向かって言うカレルド。

 “怖いこと言うわね”

「「はい!」」
 騎士全員の声が響く。

 ニコリと笑い言う。
「よろしくお願いしますね。」
 取り敢えず目の前の騎士達に言うと、私の言葉に全員膝を付き1人の騎士が言う。

「こちらこそ、よろしくお願い致します。」

「コイツが今回の指揮官だ。」

「あら、殿下じゃないのですか?」

「あぁ。俺は基本何もしない。
 お前ら、助けてもらえると思うなよ。」
 カレルドが冷たく騎士達に言い放つ。

「「はい!」」
 また騎士全員の声が響く。

「もういいぞ、戻れ。」
 解散になりそれぞれの訓練に戻っていった。

「あれ、そう言えばロベルト居ませんよ?」

「走ってんだろ。」

 “まだ走らされてるのね”
 ふふっと笑うとカレルドに聞かれる。

「今からどうするんだ?」

「そうですねぇ…。ここまで来ましたし、お散歩でもしてから部屋に戻ろうと思いますけど?」

「その散歩は辞めといたほうが良さそうだぞ。」
 カレルドが、私の後を見ながら言う。

「どうしてですか?」
 すると、大勢の足音が後ろから聞こえてきた。振り返ると、マルセルと皇女が並んで歩いてくる。
 その後ろには、10人程の侍女らしき女性を引き連れている。


 “ぅげ…”




 、

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」 成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。 「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」 ********************************************        ATTENTION ******************************************** *世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。 *いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。 *R-15は保険です。

別れてくれない夫は、私を愛していない

abang
恋愛
「私と別れて下さい」 「嫌だ、君と別れる気はない」 誕生パーティー、結婚記念日、大切な約束の日まで…… 彼の大切な幼馴染の「セレン」はいつも彼を連れ去ってしまう。 「ごめん、セレンが怪我をしたらしい」 「セレンが熱が出たと……」 そんなに大切ならば、彼女を妻にすれば良かったのでは? ふと過ぎったその考えに私の妻としての限界に気付いた。 その日から始まる、私を愛さない夫と愛してるからこそ限界な妻の離婚攻防戦。 「あなた、お願いだから別れて頂戴」 「絶対に、別れない」

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

十年目の離婚

杉本凪咲
恋愛
結婚十年目。 夫は離婚を切り出しました。 愛人と、その子供と、一緒に暮らしたいからと。

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました

さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。 私との約束なんかなかったかのように… それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。 そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね… 分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!

貴方の事なんて大嫌い!

柊 月
恋愛
ティリアーナには想い人がいる。 しかし彼が彼女に向けた言葉は残酷だった。 これは不器用で素直じゃない2人の物語。

処理中です...