記憶喪失の令嬢は皇太子に激執着される

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皇女到着

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あっという間に4日が経ち、皇女がくる日になる。

特に変わることのない日常に変化が訪れる日。
“二ヶ月後の皇太子のパーティまで滞在されるのよね…長いわね…”

皇后にもらったドレスに着替えながら思う。

黒と赤のドレス。
皇后とお揃いだそうだが、どうお揃いなのかは分からない。

「着なれない色だから落ち着かないわね…」
鏡を見ながら言う。

「赤は極力避けてきましたからね。お似合いですよ?」
ニーナが準備をしながら答えてくれる。

「ありがとう。」

「あ!来たみたいですよ!馬車も人も沢山です!」
エマが窓を見ながら言う。

立ち上がりエマの横に行く。

「謁見室で陛下たちがお待ちのはずよ、行くわよ。」

「はい!」

憂鬱な気持ちを隠すように扉を出る前に深呼吸をする。
“…よし。”

着替えの為、廊下に居たイリスを合わせ3人を連れ謁見室に急ぐ。

謁見室の前につくと今来たばかりなのだろうか、両陛下がいた。

私に先に気づいたのは皇后だった。

「あら、アルヤ!おはよう」

2人の前まで行きお辞儀をする。
「おはようございます。皇帝陛下、皇后陛下。」

「おお、似合っているよ、アルヤ嬢。」
「ええ!とっても!」

褒めてくれる両陛下に笑顔で返す。
「ありがとうございます。皇后様のセンスがいいからです。」

「あら、嬉しいわね!」
色は同じだが、少し違うデザインのドレスに見を包む皇后と話していると、後ろから声がする。

「話すなら中でしろ。」
振り返ると、一瞬誰だかわからなかったが、カレルドだった。

「あら、あなた今日黒なの?」
皇后に言われて納得する。

「あぁ。」

“黒スーツ着てるの、初めて見たかも…”

見惚れているとマルセルも到着する。
「おはよー…って、お前黒かよ。」

「わりぃかよ。」

「違和感すごいんだが。」
朝から睨み合う2人を止めるの陛下だった。

「朝から鬱陶しい。ほら、入るぞ。」

そう言い、謁見室の扉が開かれる。

赤く長いカーペットがひかれ、その先の高い位置に玉座が2つ並べられている。

独特な緊張感のある部屋。

4人の後ろに付いて入る。
既に集まっている関係者の視線とざわめき立つが声が聞こえたが、直ぐに消え皆頭を下げる。

「アルヤ、似合ってるよ。」
私の横にきてマルセルが声をかけてくる。

「ありがとうございます。」
特に着飾る事のないいつも通りのマルセル。

カレルドも私を見ているのが見えた。
マルセルと同様、着飾ってはないものの黒だと言うだけで特別感があるような気がする。

「きっと、アルヤに合わせたんだよ?腹立つな。」
マルセルもカレルドの視線に気づき私に言った。

「そんな、まさか…」
カレルドを見ると目が合いフッと笑われる。

“…嘘でしょ”

玉座の前の階段の前で陛下が止まり呼ばれる。
「アルヤ嬢。キミは私達と上に。」

「え、私がですか?」

「そうよ。」
皇后に手を差し伸べられる。

私の前にいたカレルドが、すっと横にズレ言う。
「行ってこい。」

「頑張ってね。」
横にいたマルセルにも言われ、皇后の手を取る。
たった数段だが、1段登る事に空気が薄くなるような感覚に陥る。

ざわめきが大きくなり視線が先程より痛い。
気にしてない風に胸を張り登る。
誰も不平不満は言っては来なかった。

「私の後ろに居て頂戴ね!」

「はい。」

両陛下の笑顔だけが救いだった。
言われた通り、皇后の玉座の右後ろに立つ。

マルセルとカレルドは陛下側の階段の前にいる。

「好きに発言して構わないわ」
皇后が私に言う。

「はい。」
“そんな言う事ないのだけど…”


10分程で扉の外が騒がしくなるのが分かった。

“きた。”

扉が開かれ、ゾロゾロと大勢が入ってくる。
その先頭に居るのが皇女だろう。

フワッとウエーブのかかった赤毛が印象的な女性だった。

「お久しぶりでございます。








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