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皇后の戯れ 

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「おや。いないな。」

 すると、ニーナの声がした。
 何か陛下に言っているようだ。

「どうやら、ロザリアが連れて行ったらしいよ。私達も呼んでたらしいから行こうか。」

「はい。」

 片付けをし、陛下の少し後ろにつき廊下を歩く。

 “大きな背中…”

 確かに、この方の次の皇帝は大変だろう。
 全てにおいて比べられる。
 まだ陛下も40代前半。誰もが、既に退く事を考えているなんて思ってないだろう。

 そんな事を思っていると、陛下が口を開く。

「そう言えば。後4日ほどで皇女が到着するそうだよ。」

「かしこまりました。」

「そのすぐ後にキャロル嬢が戻ってくる。
 全く。平和な日々は続かないな。」

 “あぁ…キャロル…忘れてた”

「なぜ、妃教育を受けていらっしゃるのですか?」

「あぁ、あれは妃教育ではないよ。本人はそう思っているようだから言いまわっているようだが。」

「そうなのですか!?」

「あぁ、貴族が受ける教養の範囲だ。
 泣きつかれてね。わがまま放題で覚えようとしないんだと。
 だから、ココだと流石に聞くだろうと言っていたが見ての通りだ。
 ミラディン侯爵家には、恩があるから受けたが、とんだ厄介者だよ。」

「そうだったのですね…」

「まぁ、1年だけの約束とたんまり金を積ませたがね!」
 はははと笑う陛下。

「…旅行資金ですか?」

「その通りだよ。」

 ”お金がよく絡むのはそういう事ね…”

「あ、その件はロザリアにはまだ言ってないんだ。だから秘密だよ?」

 少し私の方を向き笑う陛下。

「かしこまりました。」
 私も笑顔で返す。

 皇后の部屋の前に付くと、皇后の笑い声が聞こえてくる。

「何やら楽しそうだ。」
 そう言いながら陛下が扉をノックする。

「私だ。アルヤ嬢もきたよ。」

「どうぞー!」
 皇后の声がし、扉が開き陛下と部屋に入る。

「楽しそうな声がしてるが、何してるんだ…?」

 そう言う陛下の後ろでお辞儀をする。

「いらっしゃーい!」
 皇后が駆け寄ってきて陛下の腕をガッチリ掴む。

「アルヤもいらっしゃい!」

「えっと?なんでマルセルとカレルドがそんな元気ないんだ?」
 二人して椅子に座り項垂れているのを見て陛下の顔が引きつるのが分かる。

「アルヤがやってたのを真似て面白いもの作ったの!次はあなたの番よ!」
 楽しそうな皇后に苦笑いする陛下。

 “あ…何となく分かった気がする”

 座っている二人の足元を見ると、皇后に履かされたであろうヒールのついた靴。

 思わず吹き出す。

「アルヤ嬢!?一体何やってたんだ!?」
 皇后に今まさにヒールを履かされそうになっている陛下の声がする。

「ふふ。話の流れで少し…。」

 笑いながらマルセルとカレルドが座る椅子の前に行き屈む。

「ふふ。手を引くので走ってみますか?」
 クスクス笑いながらマルセルに言う。

「本当に申し訳なかったと思ってるよ…」

 カレルドは黙ったままだった。

「あ、アルヤ!ドレス出来たの!そこにあるから持って行って頂戴ね!」
 皇后に言われ、指を差された方を見る。

「ありがとうございます。」
 立ち上がり、箱を持ち上げる。

「私は、失礼しますね。」
 扉の前で皇后に言う。

「あら、一緒に笑っていけばいいのにー」

「いえ。やりたい事がありますので。楽しんで下さい。
 ドレスありがとうごまかした。」

「そうー?合わせてみて合わなかったら言ってね!」

「はい。それでは、失礼いたします。」
 お辞儀をし、早々に部屋を出る。

 エマにドレスの箱を預けていると、皇后と陛下の声がする。

「ほら!ジャンプ!」

「無茶言うな!」

 思わず笑ってしまう。
 “随分高いヒールだったわね。”

「あの…部屋ではなにが…」
 エマが恐る恐る私に聞いてくる。

「ふふ。皇后様の戯れで、3人の身長が2メートル超えたわ。」

「な、なんですかそれ?」
 エマだけでなく、ニーナとハンナも頭の上にハテナが飛び交う。

「さ、行くわよ。ここに居たら巻き込まれるわ。」

 皇后の笑い声だけが聞こえる部屋から逃げるように立ち去る。


コレがきっかけになり、パーティなどの時は椅子が多く並べられるようになった。





あっという間に4日が経ち、皇女がくる日になる。






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