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陛下の思惑
しおりを挟む「まぁ、座ってなさい。
お茶でも準備させよう。」
“まだ、私の話が終わってないことが分かるのね…”
「あ、それなら私が。侍女が外で待機していますので。」
「そうかい?ならお願いしようかな。」
「かしこまりました。」
そう言い、少し扉を開けお茶の用意をお願いする。
「カップは2つでいいわ。」
ニーナとエマが頷き廊下を歩いていくのを少し見届け扉を閉め、もとのソファに座る。
「読むといいよ。」
そう言い陛下から渡されたのは、初代皇后について書かれているページが開かれたままの本。
「それは、私が見ていいものなのでしょうか…」
「構わないよ。次期皇后はキミなのだからな。
コイツらにも、読めと言ってきたんだが、さっき読んでたんだ。
まぁ私も、数年前に初めて読んだがね!」
笑う陛下から本を受け取る。
「ありがとうございます」
本に視線を落すと、銀髪の初代皇后の事が書いてある。
“『不思議な技と特別な石をこの国にもたらした。赤い瞳は妖艶に輝き荒れた地に緑と水をもたらした。』
…赤い瞳”
陛下の目を見る。
「その…赤い瞳は、いつから皇族の象徴になったのですか?」
「初代からだとされているよ。」
「…初代皇后陛下は赤い瞳ではなく、濃いピンクだったのかもしれませんね。」
フッと笑う陛下。
扉がなる。コンコン。
「お茶をご準備が出来ました。」
ニーナの声がする。
「あぁ。どうぞ。」
陛下が扉に向かって言うと、扉が開きニーナとエマが入ってきてお辞儀をする。
「失礼いたします。」
エマがお茶を入れている間にニーナが私の横に来る。
「カップは2つだとお聞きしましたが…」
「ええ。いいのよ。私と陛下にお願い。」
ニコリと陛下に笑いかける。
「いいよ。」
陛下の返事を聞き、マルセルとカレルドを見る。
「ここからの話はお二人に聞いてほしくありません。
ご退出。お願いできますか。」
「そう言う約束だからね。」
マルセルが先に出る。
その後に、舌打ちをしたカレルドが部屋から出て行った。
ニーナが私と陛下の前にお茶を置き、二人も部屋を出る。
「侍女2人だけでは少ないだろ?増やす予定は?」
「増やしたいとは思っておりますが…中々。
得に今からは、足を引っ張る人はいらないので。」
そう言い紅茶を口にする。
「はは。まぁ、なにかあれば言いなさい。
皇宮内の侍女でも構わないよ。」
「ふふ。ありがとうございます。」
頭をリセットさせるかのように違う話をするが、本題を切り出す。
「…狩猟大会での賭けの帳簿。見せて頂くことはできますか?」
「いいよ。」
そう言い陛下は立ち上がり机の引き出しから紙の束を直ぐに取り出し戻ってくる。
「…もしかして、準備されてたのですか?」
私の質問には答えず陛下は笑顔を見せるだけだった。
「コッチがマルセルで、コッチがカレルドだ。」
テーブルに2つの厚さの違う紙の束が並べられた。
「よろしいですか?」
「どうぞ。ちなみに赤文字は貴族で黒は市民。金額順で並んでるよ。」
頷き、まずはマルセルの方の束を手に取りめくる。
“赤文字ばっかり…金額も相当ね…”
予想道り。
ほぼ貴族の名で埋め尽くされていた紙の後ろの方には黒文字で女性の名前が並んでいた。
次に、カレルドの方の束を手に取りめくる。
“意外と貴族の名があるのね…”
だがやはりマルセルには敵わない。
赤文字はすぐになくなり後は黒文字がずらりと並ぶ。
その中に1つだけポツリと赤い文字が目に入る。
シャンドリ ヴェラス 1ゴールド
“お兄様…”
お茶を飲んでいた陛下が言う。
「どうかな?私的には予想通りでつまらん結果だったが。」
「そうですね。予想通りです。
…お二人にもコレを見せたのですか?」
「いや、何も言ってこないから見せてないよ。」
「そうですか。」
“まぁ、ボードにもなってたしわざわざ見る必要はないわね。”
紙の束を陛下に返す。
「ありがとうございました。」
“あの場でこの差がつくのなら、国全体だとあからさまな差が出るのでしょうね…”
「まぁ、これはあいつらの頑張りで簡単に変わるものだからな。」
考えていることが見透かされているかのように陛下に言われる。
「ふふ。そうですね。」
「後は?何かあるかな?」
陛下に聞かれ、答える。
「今、私の所に来てくれている女性騎士等が聞かせてくれた話なのですが…」
3人から聞いた騎士団での騒動を話した。
「あれも、陛下ですね?許可がないとそもそも騎士団には入れませんし。」
フッと笑い陛下は答えた。
「あぁ、そうだよ。
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