上 下
98 / 192

覚悟と不安と問題点

しおりを挟む







 部屋につき、扉を開けるとそわそわと心配そうな三人が見えた。

「お嬢様!だいじょ…」
 ニーナが駆け寄ってくるが、後ろの二人を見て驚き言葉をつまらせた。

 エマとセナも私に気づくが動きが止まる。
 三人は直ぐにお辞儀をする。

「ただいま。」
 そう言い部屋に入る。

 すぐ振り返り2人に言う。
「また、明日。」

「あぁ。じゃぁな。」
「明日ね。」
 そう言い、2人はすんなり帰っていった。

 扉を閉め、ニーナが再度言う。
「だ、大丈夫でしたか…?」

「えぇ。大丈夫よ。セナは?」
 セナを見ると本当に元気そうだった。

「大丈夫です!電気が走りましたが、めちゃくちゃ身体が軽くて今すぐ訓練したいくらいです!」

「そう…明日にして頂戴ね…」
 “ほぐしたってそういう事…確かに元気ね”

 元気そうでホッとしていると、エマが駆け寄ってくる。

「お嬢様…指輪…」

「もう気が付いたの?…お返ししたの。」
 ニコリと笑う私に驚く侍女2人
「え!?」

「詳しくは明日話すわね。」

「え…お返ししたって…あのお二方のどちらかの贈り物で!?それを返して…え!?」
 セナが1人で狼狽えている。

 それを見てクスクス笑う。







 次の日の午後。
 ロイヤルナイトの一人が私を迎えに来た。

 “わざわざロイヤルナイトを使ったと言うことは、昨日の時点で私の覚悟がわかったのだろうか…”

 陛下執務室の前で、侍女2人と今日の護衛騎士のハンナを廊下で待たせる。

 ふぅーっと長い息を履いて扉をノックすると直ぐに扉が開いて出てきたのはマルセルだった。

「え!?マルセル殿下!?」

「やぁ、待ってたよ。」

 部屋に通されると、陛下と話すカレルドも居たが取り敢えず挨拶する。

「皇帝陛下、お時間頂きありがとうございます。」

「アルヤ嬢。待ってたよ。
 コイツらも聞きたいらしいが、いいかね?」

 “まぁ…昨日のあの話をすれば気になるわよね。”

「構いませんが…途中でご退出をお願いするかもしれません。」

「ほぉー。だ、そうだが?」
 陛下が2人を見ると頷き返事をする。

「良いそうだ。まぁ、座りなさい。」

 陛下にいわれ二人で向き合うように座る
「失礼致します。」

 マルセルと、カレルドは座らずに立っている。

「全く。朝からいつから話すんだ?って2人して執拗くてね。参ったよ。」
 足を組み換えながら笑う陛下。

「申し訳ございません。昨日少しお二人と話したもので…
 気になってしまったようですね。」

 私の言葉で何かを察した陛下は短く返事をする。
「…ほぉ。」

「なんの話か、検討はつきますか?」
 マルセルを見て言う

「まずは初代皇后の話からかな。」
 ニコリと私をみて笑うだけマルセルに私も笑顔で返す。

 カレルドを見るが表情は変わらなかった。

「合ってるかい?」
 陛下が私に言う。

「はい。
 あの、凄く失礼なのですが…
 もうすぐこの帝国は300年になりますよね。その間。皇族の血がなくなった事はありますか?…」

 恐る恐る言う私に、陛下は表情を変えず言う。

「そんな記録はないよ。」

「…これは私の推測です。気を悪くしてしまったらすみません。
 …初代皇后陛下は子を成されなかったのではないですか?」

「なぜそう思った?」

「陛下は、私が偶然使ってしまった物質を変える事をしたのは、初代皇后陛下だけだとおっしゃいました。

 初代皇后陛下の血が受け継がれているなら、どこかの子孫が銀髪になったりそれに近かったり、物質の変化が使える方がいてもおかしくない。
 なのに、そんな人は初代皇后陛下しか居ないのはおかしいのです。
 それに…
 初代皇后陛下はイモルキ国のご出身で間違いないでしょう。
 ならば、魔鉱石なしでも力が使えたはずです。それも受け継がれているはずです。
 昨日、私が魔鉱石なしで火を灯した時の
 皇后様と殿下達の反応を見て確信しました。
 知らなかったのだと。
 陛下だけ、知っている可能性も考えましたが…それもないでしょう…」

「なぜだい?」

「…もし、陛下が急死され、次の皇帝が決まっていなければその情報は失われるからです。
 ならば、継承権1位のマルセル殿下にだけにでも伝えていたはずですが、その様子はありませんでした。
 …陛下なら、お二人に伝えそうですしね。」

「こいつらの演技だったのかもよ?」

「ふふ。それはありえませんね。」

「その理由も、一応聞こうか?」

 マルセルとカレルドを見て言う。

「カレルド殿下が大人しく魔鉱石を常に身につけてるのがおかしいからです。
 きっと、「こんな邪魔くさいものいらない。」って言って、魔鉱石を使わず訓練をするでしょう。
 マルセル殿下も、それに触発され魔鉱石を使わず訓練するはずです。
 なんなら、あの後試したのではないですか?」

 マルセルとカレルドはふいっと顔を背けた。

「ははは。完璧だよ。益々君を手放すことは出来ないな。」

「…ありがとうございます」

 “『手放すことが出来ない。』と言うことは既に何が言いたいかわかってるのね…”

「それで?初代皇后と同じ国の血が流れるキミの血を、混ぜていいものか。と考えた訳か?」

「その通りです…
 何か考えがあり、子を成さなかったのであれば、私がその考えを壊すわけには行きません。
 …私がイモルキ国の皇女の娘だと分かった以上。国と国との話にもなってくるはずです。」

「…その通りだと思うよ。」





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

別れてくれない夫は、私を愛していない

abang
恋愛
「私と別れて下さい」 「嫌だ、君と別れる気はない」 誕生パーティー、結婚記念日、大切な約束の日まで…… 彼の大切な幼馴染の「セレン」はいつも彼を連れ去ってしまう。 「ごめん、セレンが怪我をしたらしい」 「セレンが熱が出たと……」 そんなに大切ならば、彼女を妻にすれば良かったのでは? ふと過ぎったその考えに私の妻としての限界に気付いた。 その日から始まる、私を愛さない夫と愛してるからこそ限界な妻の離婚攻防戦。 「あなた、お願いだから別れて頂戴」 「絶対に、別れない」

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜

平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。 だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。 流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!? 魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。 そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…? 完結済全6話

貴方の事なんて大嫌い!

柊 月
恋愛
ティリアーナには想い人がいる。 しかし彼が彼女に向けた言葉は残酷だった。 これは不器用で素直じゃない2人の物語。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢

alunam
恋愛
 婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。 既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……  愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……  そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……    これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。 ※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定 それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!

処理中です...