上 下
97 / 191

ワガママ2

しおりを挟む






「ですが…その話によっては、私は皇宮を出ます。」

「「は?」」

 二人の声が重なる。

「今、皇后になるって…」
 マルセルが途中で黙る。

「私の覚悟はできた。と、言うだけなのです。」

「オヤジ達はお前を皇后にする気満々だぞ。と、言うか既に決定している。」

「…そうですね。
 可能性があると言う話です。深刻に捉えないでください。」
 ニコリと笑顔を見せ言う。


 くるりと2人に背を向け背伸びをする。
「スッキリしました!ありがとうございます。」

「俺はスッキリしないんだが?」
「同じく。」
 カレルドの言葉に賛同するマルセル。

「ですよね!すみません!」

 軽く後ろを向き笑顔で言う。

 また二人に背を向け、一番光り輝く月に手を掲げる。
 もう、指輪のない手。
 ずっとつけていただけあって、少し寂しい。

「カレルド殿下…私も。空飛べますかね?」

 なんの脈絡のない唐突な質問だったが、答えてくれる。
「出来るんじゃないか?」

 “皇后様には否定したのに、私にはしないのね。”

「あれ、出来ないんだけど。」
 マルセルの声がした。

「当たり前だ。俺だって1年以上かかったんだ、すぐ出来てたまるか…」
 段々と声に覇気がなくなるのがわかった。

「じゃぁ。マルセル殿下と私。どちらが先に出来るか競争ですね!」
 掲げていた手をおろしながら振り向く。

「…そうだね。」

 苦い顔をする二人に不釣り合いな満面の笑みで返す。
「ふふ。そんなに時間をかけてまで飛びたかったのですか?」

 苦い顔だったカレルドが笑う。
「お前に煽られたんだ。
『あなたなら、空くらい飛べますよね?』
 だと。」

「私!?そんなこと言ったんですか!?」

「あぁ、まぁ、便利だから重宝してるがな。時間の短縮になる。」

 納得するようにマルセルは言う。
「だから異常に速く帰ってくるのか。」

 そこで、私がシャンドリ邸から連れて帰ってこられた時の話を思い出す。

「だから、半日でシャンドリ邸から私を運べたのですね…」

 フッと笑うだけで、カレルドはこれ以上は答えなかった。

「ところで、俺。そんな事いわれてないんだけど?」
 マルセルの顔が急に私の前に現れる。

「え!?」

「俺には出来ないって意味かな?」
 そんなマルセルと離れながら言う。

「知りません!」

 ニコッと笑い降りてきた階段に向かう。
「さぁ、帰りましょ!続きは明日。」

 私の後に着いてくる2人。

「そう言えば!セナ!大丈夫なんですか?」
 歩きながらマルセルに言う。

「ああー。大丈夫だよ。今頃すっごく元気なんじゃない?」

「元気?痛そうでしたけど?」

「言っただろ?筋肉をほぐしただけだって。」

 首を傾げるだけの私。

「余計な事しやがって。」
 カレルドも意味がわかるのかそう言い捨てる。

 “まぁ…大丈夫ならいいのだけど…”


 皇宮内に入ると、私を真ん中にし歩いていたのを2人は一歩下がってついてきた。

「あの…どうして下がるのですか…?
 視線が痛いのですけど…」

「次期皇后陛下の護衛として、居るまでですから。」
 ニコリとマルセルが言う。
 カレルドも少し笑っていた。

「もー!ならこうです!」
 立ち止まり2人の手を掴み走り出す。

「おい、引っ張るな。走るな。」
 カレルドの声が聞こえる。

「お二人がよく私にするじゃないですか!仕返しです!」

 そう言い私の部屋の前まで引っ張り続けた。





 、
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」 成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。 「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」 ********************************************        ATTENTION ******************************************** *世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。 *いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。 *R-15は保険です。

別れてくれない夫は、私を愛していない

abang
恋愛
「私と別れて下さい」 「嫌だ、君と別れる気はない」 誕生パーティー、結婚記念日、大切な約束の日まで…… 彼の大切な幼馴染の「セレン」はいつも彼を連れ去ってしまう。 「ごめん、セレンが怪我をしたらしい」 「セレンが熱が出たと……」 そんなに大切ならば、彼女を妻にすれば良かったのでは? ふと過ぎったその考えに私の妻としての限界に気付いた。 その日から始まる、私を愛さない夫と愛してるからこそ限界な妻の離婚攻防戦。 「あなた、お願いだから別れて頂戴」 「絶対に、別れない」

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

十年目の離婚

杉本凪咲
恋愛
結婚十年目。 夫は離婚を切り出しました。 愛人と、その子供と、一緒に暮らしたいからと。

貴方の愛人を屋敷に連れて来られても困ります。それより大事なお話がありますわ。

もふっとしたクリームパン
恋愛
「早速だけど、カレンに子供が出来たんだ」 隣に居る座ったままの栗色の髪と青い眼の女性を示し、ジャンは笑顔で勝手に話しだす。 「離れには子供部屋がないから、こっちの屋敷に移りたいんだ。部屋はたくさん空いてるんだろ? どうせだから、僕もカレンもこれからこの屋敷で暮らすよ」 三年間通った学園を無事に卒業して、辺境に帰ってきたディアナ・モンド。モンド辺境伯の娘である彼女の元に辺境伯の敷地内にある離れに住んでいたジャン・ボクスがやって来る。 ドレスは淑女の鎧、扇子は盾、言葉を剣にして。正々堂々と迎え入れて差し上げましょう。 妊娠した愛人を連れて私に会いに来た、無法者をね。 本編九話+オマケで完結します。*2021/06/30一部内容変更あり。カクヨム様でも投稿しています。 随時、誤字修正と読みやすさを求めて試行錯誤してますので行間など変更する場合があります。 拙い作品ですが、どうぞよろしくお願いします。

貴方の事なんて大嫌い!

柊 月
恋愛
ティリアーナには想い人がいる。 しかし彼が彼女に向けた言葉は残酷だった。 これは不器用で素直じゃない2人の物語。

処理中です...