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ワガママ2
しおりを挟む「ですが…その話によっては、私は皇宮を出ます。」
「「は?」」
二人の声が重なる。
「今、皇后になるって…」
マルセルが途中で黙る。
「私の覚悟はできた。と、言うだけなのです。」
「オヤジ達はお前を皇后にする気満々だぞ。と、言うか既に決定している。」
「…そうですね。
可能性があると言う話です。深刻に捉えないでください。」
ニコリと笑顔を見せ言う。
くるりと2人に背を向け背伸びをする。
「スッキリしました!ありがとうございます。」
「俺はスッキリしないんだが?」
「同じく。」
カレルドの言葉に賛同するマルセル。
「ですよね!すみません!」
軽く後ろを向き笑顔で言う。
また二人に背を向け、一番光り輝く月に手を掲げる。
もう、指輪のない手。
ずっとつけていただけあって、少し寂しい。
「カレルド殿下…私も。空飛べますかね?」
なんの脈絡のない唐突な質問だったが、答えてくれる。
「出来るんじゃないか?」
“皇后様には否定したのに、私にはしないのね。”
「あれ、出来ないんだけど。」
マルセルの声がした。
「当たり前だ。俺だって1年以上かかったんだ、すぐ出来てたまるか…」
段々と声に覇気がなくなるのがわかった。
「じゃぁ。マルセル殿下と私。どちらが先に出来るか競争ですね!」
掲げていた手をおろしながら振り向く。
「…そうだね。」
苦い顔をする二人に不釣り合いな満面の笑みで返す。
「ふふ。そんなに時間をかけてまで飛びたかったのですか?」
苦い顔だったカレルドが笑う。
「お前に煽られたんだ。
『あなたなら、空くらい飛べますよね?』
だと。」
「私!?そんなこと言ったんですか!?」
「あぁ、まぁ、便利だから重宝してるがな。時間の短縮になる。」
納得するようにマルセルは言う。
「だから異常に速く帰ってくるのか。」
そこで、私がシャンドリ邸から連れて帰ってこられた時の話を思い出す。
「だから、半日でシャンドリ邸から私を運べたのですね…」
フッと笑うだけで、カレルドはこれ以上は答えなかった。
「ところで、俺。そんな事いわれてないんだけど?」
マルセルの顔が急に私の前に現れる。
「え!?」
「俺には出来ないって意味かな?」
そんなマルセルと離れながら言う。
「知りません!」
ニコッと笑い降りてきた階段に向かう。
「さぁ、帰りましょ!続きは明日。」
私の後に着いてくる2人。
「そう言えば!セナ!大丈夫なんですか?」
歩きながらマルセルに言う。
「ああー。大丈夫だよ。今頃すっごく元気なんじゃない?」
「元気?痛そうでしたけど?」
「言っただろ?筋肉をほぐしただけだって。」
首を傾げるだけの私。
「余計な事しやがって。」
カレルドも意味がわかるのかそう言い捨てる。
“まぁ…大丈夫ならいいのだけど…”
皇宮内に入ると、私を真ん中にし歩いていたのを2人は一歩下がってついてきた。
「あの…どうして下がるのですか…?
視線が痛いのですけど…」
「次期皇后陛下の護衛として、居るまでですから。」
ニコリとマルセルが言う。
カレルドも少し笑っていた。
「もー!ならこうです!」
立ち止まり2人の手を掴み走り出す。
「おい、引っ張るな。走るな。」
カレルドの声が聞こえる。
「お二人がよく私にするじゃないですか!仕返しです!」
そう言い私の部屋の前まで引っ張り続けた。
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