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誘いと阻止
しおりを挟む「うわ。もう来た。いくよ!」
また手を掴まれるがその瞬間、足が地面から少し離れた。
「ふぇ!?」
マルセルが私を抱きかかえ歩き出す。
「は、離してください!」
「いーやーだ。」
ニコニコと早足で廊下を進み、あっという間に私の部屋つく。
「お嬢様のお帰りだよー。」
部屋の扉の前のでマルセルが声をかけるとすぐに扉が少し開き、ニーナが顔を覗かせる。
すぐにニーナと目が合う。
「お嬢様と…マルセル殿下!?」
マルセルに降ろしてもらいにニーナに言う。
「た、ただいま。」
困ったように笑う私に、マルセルが後ろからフワッと抱きついてくる。
「へ!?」
「今夜迎えにくる。満開なんだ。」
耳元で囁かれる。
「こ、困ります!」
驚き言うと、低い声が聞こえた。
「おい。」
「もう来たか、ゆっくり話すら出来ないな。」
すっと私から離れ、手を振る。
「じゃ、またね。」
呆気にとられている私にカレルドが近付く。
「クソ野郎が。」
「えっと…今夜迎えにくると…満開だと仰ってましたけど。」
「俺が今夜出るのどっかで知りやがったな。
断ったんだろうな?」
「困りますとは、言いましたけど…」
チッと舌打ちが聞こえた。
扉が開けられ、セナが顔を出した。
「お、おかえりなさいませ…」
機嫌の悪いカレルドに睨まれ、ひぃっと言いながら部屋に入って行った。
そんな、セナを追いかけるように部屋入っていくカレルド。
ふふ。
部屋入りエマに抱きつく。
「エマーぁ…」
「お、お嬢様!?お帰りなさい。
…何だか、甘い香りがしますよ?」
「ん?甘い香り?」
セナを捕まえ話していたカレルドが中断してこっちに来た。
「どこからだ」
「お嬢様の後ろの方から…」
エマが言うと、カレルドは私の髪を取り顔に近づける。
「な、何ですか?」
苦い顔をし、セナに言う。
「まだマルセルがそのへん彷徨いてるはずだ。
すぐに着替えろと言ってこい。
ついでに団長をここにつれて来い。」
何かを察したように、セナが機敏に動く。
「かしこまりました。」
走って部屋をでる。
「お前は今すぐ風呂に入ってこい。お前もだ。」
私とエマを見て言うカレルドに、何がなんだかわからない私達は動けなかった。
「後で説明してやる。早く行ってこい。」
そう言われ、ニーナとエマ、一緒に執務室から寝室への扉へ向かう。
言われた通り、お風呂に入り着替えて執務室に戻る。
カレルドとセナ。第二騎士団長も来ていた。
私に気づいたカレルドが近づいてくる。
まだ湿っている髪を一つに纏めていたが、ピンを取られ髪が降ろされる。
「香りは取れたようだな。」
そう言いカレルドが、振り返ると同時に湿っていた髪が乾かされる。
「わぁ!!」
声を出したのはエマだった。
エマの髪も乾いていた。
「ありがとうございます。」
お礼を言いながらカレルドの後ろを歩く。
「俺は今から出てくる。詳しい事はセナから聞け。
後、コレもだ。」
そう言われ紙を渡される。
受け取りながら言う。
「今から出掛けられるのですか?」
「あぁ。アイツが来るまでに戻ってくる。
何したってどうせ来るだろうからからな。」
「え。もう日が傾いてるんですよ?!」
「だから急いでるんだ。来たら呼べ。ホイホイ付いていくなよ?じゃーな。」
そう言い、第二騎士団長と部屋を出ていった。
「いつもながら、急ね…」
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