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それぞれの後悔
しおりを挟む泣いてスッキリし、段々と恥ずかしくなる。
「すみません…」
起き上がろうとするが、離してくれなかった。
そのまま、カレルドの胸にもたれかかる。
「少しはスッキリしたか?」
「…はい。
…もっと早くに、お母様の手紙に気づいてたらまた違ったのかもしれませんね」
「…俺らの手紙にはな、お前の性格が書かれてた。
我慢強く、一人でなんでも抱え込む。
甘え方も知らず頼ることをしない。
大丈夫だと言い、平気なように振る舞う。
だから、無理矢理にでも引っ張りだし息抜きをさせてやってほしいと。
あぁ後、泣かすと許さない。だそうだ。」
「え!?」
ガバッと起き上がり、カレルドを見る。
窓際の縁に肘を付き、外を見ながら言う。
「丁度、前公爵が出入りが頻繁になる頃、俺らは魔鉱石を貰い、その訓練に夢中になりお前のところに行ってなかった。
行きづらいのもあったしな。
まぁ、その間を狙ったんだろうが
妃候補の話があがり、お前の名を出した。
オヤジがお前の所に行くとき、俺らも行くかと聞かれたんだ。
だが、行かなかった。そんな状況だとは知らなかったし、マルセルと差がつくのが嫌だった。
…その時行っておけば、何か変わったんじゃないかと今でも思う。
無理矢理にでも聞き出し、連れ出せただろう。
ある程度行っていただけでも、牽制にはなっていただろうな
オヤジだって、お前の様子がおかしかった事には気づいていらしい。
お前が皇宮に来たばかりの頃、よく言ってた。
あの時、母上の事だと決めつけずに話を聞くべきだった。とな。
使用人たちだって、お前の兄さんたちだってもっとこうしていたら。と口々に言っていた。
誰だってお前の様に、『こうしていたら。』
と思ってるんだ。」
いつの間にか止まっていた馬車を降りるカレルド。
「え…」
“慰めてくれたのよね…”
「ほら、部屋であいつら待ってるぞ。」
「は…はい」
私に差し出された手をとり降りる。
廊下を歩いていると、前から陛下とマルセルが歩いてきた。
「おお、行ってきたのか?お帰り。」
陛下に言われ、立ち止まりドレスの裾を持ちお辞儀をする。
「ただいま戻りました。」
顔をあげるとマルセルと目が合い、近づいてくる。
すぐにカレルドが前に立ち塞ぐ。
「寄るな。」
「お前じゃなくて、俺はアルヤと話したいのだが?」
目の前で二人が睨み合う。
そんな二人を無視し、少し横にずれ陛下を見て言う。
「陛下。お話があります。」
「だいぶいい顔してるね。いいよ。でも明日でいいかな?
その腫れた目はしっかり冷やすんだよ」
ハッとし、手で顔を覆う。
「は、はい…」
「おい、いつまでやってる。」
陛下が言うが辞めない二人を見て言う。
「…仲良くしようと思った事ないのですか?」
バッと私の方を向き言う。
「ない。」
「ないね。」
「そ、そうなのですね…」
“そんな、即答しなくても…”
私達を見て陛下が笑う。
「ははは。息ぴったりだがな。」
陛下がきてカレルドに紙を渡す。
その隙に、マルセルは私の手を掴む。
「おい!」
カレルドも反応するが、マルセルの方が早かった。
「俺が送ろう。たまにはいいだろ?」
そう言い手を引きその場を離れる。
「え、ちょ、マルセル殿下!?」
後ろを振り返るとカレルドはこっちを見ていた。
掴まれた手は離されることなく、小走りでついていく。
「待ってください!」
そう言うと、ピタっと止まり廊下の壁に押し付けられる。
真剣な顔を向けられ言われる。
「俺は…前伯爵を許していない。行ってほしくなかった。」
「え…」
ニコリといつものマルセルの笑顔に戻る。
「も。もしかして、聞いていたのですか…?」
「…偶然ね。君を止めに部屋に行ったらその話をしているのが聞こえた。
立ち聞きになって悪かったよ。」
そう言いながら離れる。
コツコツと、歩いてきた廊下の方から足音が聞こえてくる。
「うわ。もう来た。いくよ!」
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