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エマの思い
しおりを挟む顔上げ、陛下を見る。
「え?」
「今いる全騎士から募集し、少数精鋭部隊を君に付ける。」
「ま、待ってください!私に部隊を維持する力なんてありません!」
「問題ないよ。日々の訓練は元部隊で引き続き行う。
10人程の少人数で、1日交代で君の護衛をしてもらう。
後は、パーティや式典の時などの大勢の人前に出るときなどの君の護衛、警備をする。
いつまでも、カレルドの隊の子らに任せるわけにも行かないからね。」
「そ、それはそうですが…」
「詳しいことは後日知らせよう。
そう、難しく考えることはない。
母上の手紙にもあっただろ?助けを求めなさいと。
私達の手紙には、
助けてやってほしい。と書かれている。
遠慮はいらないよ。」
「…そう言われると何も言えませんね…よろしくお願いします。」
立ち上がり、頭を下げる。
「よし。」
陛下も立ち上がった。
手紙はそれぞれが持つことになった。
両皇太子殿下と書かれた手紙は、マルセルが持つことになった。
「いつでも見せてあげるから。訪ねておいで。」
そう陛下に言われる。
「ありがとうございます。」
解散の雰囲気に私は絵本と手紙を抱える。
「2時間ほどで迎えに行く。部屋で待ってろ。」
カレルドに言われて頷く。
「はい。」
カレルドが一番先に部屋から出ていった。
両陛下にお礼を言い、私はセインと部屋を出る。
すぐにニーナと目があった。
「お茶でもして行かれますか?」
セインに聞くが首を横に振られた。
「いや、無理言って来たし、すぐ持ち帰り渡すとするよ。」
「わかりました…お気をつけて。」
「少しでも顔が見れて良かった。会える機会は少ないからな。
次は、皇太子のパーティかアルヤのパーティかのどれかだろうな。」
「ええ。お待ちしております。」
「無理しすぎるなよ。またな。」
そう言いセインは私の後ろに来ていた侍女にも声をかける。
「お前達も久しぶり。またな。」
ニーナとエマはサッとお辞儀をする。
軽く手を振り、帰っていくセインの背中を眺める。
ニーナが横に来る。
「…目赤いですよ。」
「やっぱり?」
ニコリと笑うが心配そうな顔のニーナの顔は晴れなかった。
「大丈夫よ。とりあえず、部屋に戻りましょう。」
無言のまま部屋に戻ってきた。
「お嬢様…?」
ニーナの声がした。
「お母様の手紙が見つかったの。」
私の突然な言葉に3人の動きは止まる。
机の引き出しに絵本と手紙を入れる。
「お父様への手紙も見つかったわ。
渡しに行く事になったの。2時間後にカレルド殿下が迎えに来てくださるそうよ。」
椅子に座りニコリと笑う。
「だ、大丈夫なのですか!?」
エマが机の前に来て顔を赤くし、声を荒らげる。
「大丈夫よ。私が行くって決めたの。」
エマが俯き、自分の手を強く握りしめるのが見えた。
「お嬢様のお父様って…」
セナが口を開いた。
「牢獄塔にいるわ。」
そう言いながら立ち上がり、エマの手を取る。
「そんなに強く握ると痛いでしょ?」
手は緩んだが震えていた。
「…エマ?」
「私は…行ってほしくありません…」
手に涙が溢れてきた。
「エマ!お嬢様がお決めになった事よ!そんな事言ってはいけないわ!」
ニーナがエマに言うのを止める。
「いいのよ。」
「…もう、思い出してほしくないんです!
あの時の様な、辛そうなお嬢様を見たくありません!
辛いのを隠して、大丈夫だと笑うお嬢様を見るのが辛いんです!
また、眠れなくなったりしたらどーするんですか!
何もできない自分に腹が立ちます!
辛い時に辛いと言ってほしいんです!
大好きなお嬢様にこれ以上辛い思いしてほしくないんです!!」
わんわんと泣きはじめるエマを、強く抱きしめる。
「ありがとう。私も大好きよ。」
「ずみまぜんー!もう何言ってるかわがんなくなりましたぁ…」
「私こそ、ごめんなさいね。」
エマの背中を擦る。
少しづつ落ち着いてきたエマの抱きしめる手を緩める。
「少しは落ち着いた?」
「はぃ…すみませんでした。」
「私はね。あの過去を乗り越えないといけないと思っているの。」
「え…」
俯いていたエマは顔をあげ涙でボロボロな顔を見せる。
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