記憶喪失の令嬢は皇太子に激執着される

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 顔を上げると、皆が私を黙って見つめていた。

「あ…すみません。読み入ってしまいました。」
 そう言うと1筋だけ涙が流れてきた。

 難しい顔をする陛下が口を開く。
「母上も苦労人だね。」

「…その様ですね。」
 そう言いながら、魔鉱石のブレスレットと指輪を外しテーブルに置く。

「…お願いできますか?」

 まっすぐ陛下を見て言う。

「おい、何をするつもりだ。」
 横にいた、カレルドが言う。

「黙って見てろ。」
 陛下がカレルドを睨み黙らせた。

 目を閉じ、胸の前に両手で器を作る。

 ピンクと離れた色の炎を想像する。

「は?」っと誰かの声がする。

 ゆっくり目を開け、自分の手に青い炎がゆらゆらと揺れているのを確認し、陛下の目を見る。

 はぁ。とため息をつく陛下。
 口を手で抑える皇后。

 少し横を向き、マルセルとカレルドを見る。
 しっかり目が合う。驚き固まる二人。

 最後にセインを見る。
 やはり驚き固まっている。

 両手をパチン。と合わせ炎を消す。

「鮮やかなピンクだったよ。」
 陛下が言う。

「そうですか…ありがとうございました。」
 そう言い、外したブレスレットと指輪をつけ直す。

「は?」
 マルセルが言う。

 陛下と目が合う。
 ニコリと笑い言う。
「読んでいただくのが一番だと思います。
 うまく説明できる気がしません…」

 今呼んだ手紙をまた、テーブルに置く。

「いいのか?お前宛なんだろ?」
 カレルドが言う。

「はい。…手紙にも、信頼できる人になら見せて構わないとありますから。
 …殿下の推測。お見事でしたよ。」

 カレルドを見上げて笑う。

「そうだな。
 私の方にも、大体の事情は書かれている。
 お前が先に読ませてもらえ。」
 陛下がカレルドに言うと、手紙を取り読み始める。

「次に、マルセル殿下どうぞ。
 お兄様も、読まれますか?」
 マルセルを見て次にセインを見る。

 頷くだけのセインを見て笑う。

「さて。残りの手紙のだが。
 ヴェラスの手紙はセインに預けるとして。
 これは、どうする?」
 陛下が『伯爵様』と書かれた手紙を持つ。

「…お渡しするとこは、出来ますか?」
 陛下に聞く。

「出来なくないが、内容確認しなければならないが。良いか?」

「はい。お願いします。」

 陛下が封筒をあけ読み始めるの。

 少しの沈黙の後、カレルドが私を見て口を開く。
「はぁ。想像以上だな。」

 読んだ手紙をマルセルに渡す。
 すぐにマルセルも読み始めるの。

 手紙を読みつつ、陛下が答える。
「まぁ、驚きも大きいが、納得できた部分もあるだろ。」

 読み終えた陛下は手紙を封筒に戻す。
「問題ないだろう。私が確認したから他のヤツの確認は必要ない。渡しておいてやろう。」

「…私も、付いていくことは出来ますか?」
 お父様にはあの日以来会っていない。

 陛下は少し考えた。
「…良いだろう。君の手から渡してあげるといい。」

「ありがとうございます。」

「なら、俺が行こう。」
 カレルドが言う。

「わかった。」
 そう言い陛下は立ち上がり机で何かを書き、手紙と紙をカレルドに渡す。

 それを内ポケットに直しながらカレルドがセインに言う。
「お前も来るか?」

「…いえ。無理言って皇宮に来たので、すぐに帰らなくてはなりませんので。」

「そうか。」

 マルセルが手紙を読み終え、セインの手に渡るり読み始める。

 マルセルは何も言わずに私を見る。

「大丈夫ですか?」
 私の問に笑うマルセル。
「それは、俺のセリフだよ。こんな事知って、平気なのかい?」

「実は…現実味がなくて。物語を読んだあとに似たような感覚なんです。
 お母様が他国の皇女で、お父様であろう方は国に反乱を起こしている家の方だなんて…
 そして、私は…」

 ここで黙る私を皆が見る。

「まぁ、こんな話を急にいわれても理解できないのは仕方ないだろうな。」
 カレルドがまた私の頭に手を乗せる。

 セインから陛下に手紙が渡る。
 軽く読み皇后に手紙を渡すが、皇后は首を横に振り断った。

 手紙が私の元に帰ってきて封筒に戻す。

「君の母上の事は分かったな。失踪した理由も。生きている可能性が十分高いことも。」

 陛下が俯く私に言う。

「…はい。」

 私以外の皆が顔を見合わせる。

「初めに言った、君をコレからどうやって守っていくのかについてなのだがな。
 君の専属部隊を発足されようと思う。」

 顔上げて陛下を見る。
「え?」




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