記憶喪失の令嬢は皇太子に激執着される

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母からの手紙3

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 意を決して開ける。



『そりゃ。知りたいわねよ。』

 こんな書き始めだった。



『私の昔話から、書いていくわね。

 私は、イモルキ国と言う長年内戦の続き、魔獣もいる閉鎖的な島国の皇女だったわ。
 陛下たちが持っている、魔鉱石と呼ばれる石の主産地でもあるの。
 皇女と言っても、皇族の特徴を受け継げなかった無能な女とされてきたわ。
 16になり、勝手に婚約を決められ18で嫁ぐ事が決まってしまっていたの。

『皇族の特徴をつけ継ぐ者が生まれるまで産め』と言われたわ。
 私に特徴はなくても皇族の血は流れているから、子供に現れる可能性はあったから。
 でも、私には想いを寄せている方が居たの。

 それは、皇族に反発していた反乱軍の指導者をしていた家の方だった。
 出会いは偶然でお互い、身分を知らずに惹かれ合いお付き合いをしていたわ。
 私の嫁ぐ日まで決まってしまい、正直に彼に話したわ。
 そこで私も彼の事を知ったの。
 あってはならない恋だったけど、止められなかった。
 二人でこんな国から出よう。と話になるのは必然だった。

 一度帰り荷物を持ち寄ろうなんて話しにならず、すぐに国を出ようとしたの。
 計画なんてなく、彼と一緒なら別に死んでも構わなかった。
 小さなボードに二人で乗り込んでいると普段見ないような魔獣が襲ってきたの。
 彼は振り落とされながらも、ボードを押したわ。
「すぐ追いつくから。必ず見つけるから待っててほしい。」と。
 魔鉱石を使い、魔獣を倒そうとする彼の後ろ姿を見たわ
 私たち皇族の魔鉱石は、強い力を使うと皇族全員に分かるようになっていたの。
 誰かが戦っていたら分かるようにね。
 皇族を守るために、特別に付けられていた機能だったけど、私には鎖でかなかった。
 魔鉱石を使うと居場所がバレてしまう。それが頭によぎり、「すぐに追いつく。」
 その彼の言葉を信じることしかできなかったの。
 私最低よね。

 彼が追いついて来る事はなかったわ。

 色々と道中あったけど、何とか国を出る事に成功しアナタも知るあの港町に着き、パン屋のご主人の計らいで住み込みで働かせて貰えることになったの。
 でも、その1ヶ月ほどで私の妊娠が分かったの。アルヤ。あなたよ。
 パン屋のご主人も、婦人も驚いてはいたけど、喜んでくれたわ。
 あのお二人が居なかったら、今の私達はないわね。
 そして願った。
 産まれてくる子に、皇族の特徴がでないことを。
 でも。それは叶わなった。
 ピンクの髪が濃ゆいほど力の強い皇族だと言われてきたわ。
 アナタは薄いけれどピンクの髪を持って産まれてしまった。
 あと一つ。皇族の特徴があるのだけど確認出来ていないわ。
 イモルキ国の人は皆、魔鉱石がなくても力の差はあるけれど力を使えるわ。
 魔鉱石とは、力を引き出す役目がほとんどだけど、強い力を抑える役目もあるの。
 皇族では希に力が強すぎて魔鉱石で力を抑えなければならない人が出るわ。
 それは初代皇帝のご加護と言われ、髪色なんかよりも貴重で高貴な方になるわ。
 確かめ方は簡単よ。
 魔鉱石を持たずに力を使えばいいの。
 すると、瞳がピンクに変わるわ。濃ゆいほど自身の力が強いという証拠よ。
 使い方は、陛下や殿下に教えてもらってね。
 魔鉱石を使うときと同じだから。
 これは、陛下のお手紙にも書いたわ。
 確認してみてほしいの。もし、目の色が変わるようなら、魔鉱石を貰いなさい。力を抑えてくれるわ。
 私のネックレスでもいいのだけど、何かの弾みで大きな力を使ってしまうとダメだからね。違うものがいいわ。


 アナタが産めれ数年が経ち、シャンドリ伯爵とお会いすることが多くなったわ。
 彼に似たところがあり、段々惹かれていき年の差もあったりして、悩みに悩んだけれどお付き合いする様になったわ。
 でも、浅はかだった。
 この国の地理なんて知らなかった私は、初めてシャンドリ邸に行ったときに気づいたわ。
 魔獣がいる森のすぐ横の領だったなんて知らなかったの。
 しかも、ドラゴンが奥に住み着いているという昔話があると聞いた。
 ただの昔話じゃない事はすぐにわかったわ。
 私の魔鉱石に反応するのか、魔獣がよってきた。
 いとも簡単に魔獣を剣で倒していく伯爵にびっくりしたわ。
 それに言うの。
「魔獣が出ると、兵が早く育つから嬉しい。」とね。
 おかしな人だったけど、この人なら。とも思ったわ。
 それから1年ほどで結婚し、シャンドリ邸に越したわ。
 そして、3ヶ月ほど前に彼に出会ってしまったの。
 ドラゴンと人間の間に産まれたと言う。ラドラインという男に。
 人間の姿をしているのに、最悪なオーラを纏っていたわ。
 私の魔鉱石が気になるのか問うと、首を横に振ってアルヤの部屋に指差して言うの。
 あの娘はなんだ。と聞かれたわ。
 直感的にアナタは力が強いんだと思ったわ。
 私の娘に近づかないでと言ったけどすぐに消えてどこかに行ったわ。
 そして2ヶ月ほど前にアナタとラドラインが庭で遊んでいるの見たわ。
 下手に刺激すると、アナタを連れて行かれそうで怖かくて何もできなかった。
 
 その日から私の力でシャンドリ邸に結界を張って見たものの、まだ家の周りをうろつき、玄関にアナタがいつもおままごとで使う木ノ実まで置いていくようになったの。

 私の弱い力じゃ守りきれないと思ったわ。
 でも、魔鉱石を使えばラドラインから離せると思ったの。

 アナタが生まれてきて私の魔鉱石を半分に割って2つのネックレスにしたの。
 アナタが大きくなりお守りとして、1つ渡そうと思っていた物よ。


 今から、そのお守り代わりを本当のお守りにするわ。
 アナタに結界を張るの。
 ラドラインは近づけなくなるわ。
 アナタとラドラインは決して会うべきではないわ。
 アナタが初代皇帝のご加護を受けるほどの力があるなら、尚更ね。


 何年持つかわからないけわ。
 前の手紙にも書いたけれど、黒く変色したり、割れたりすると結界はなくなってしまうわ。
 お父様や、陛下たちを頼りなさい。

 両陛下もアナタを気に入って下さっているわ。
 皇宮なら結界もしっかりしているから。
 もし、何かあれば色んな人に助けを求めなさい。きっと助けてくれるわ。
 その為に手紙をたくさん書いたもの。
 アナタなら大丈夫。
 私が居なくたって、色んな人に愛されている事を忘れては駄目よ。

 魔鉱石を使うと、居場所はバレるわ。
 今、国がどうなっているか分からかいけれど、きっと連れ戻されると思うの。
 アナタの事は誰も知らないから、アナタも連れて行かれることはないわ。
 もう半分の魔鉱石で出来るだけ逃げれば私だけ追ってくるでしょうし。
 殺されはしないと思う。だから大丈夫。
 また逃げ出して、アナタに会いに来るわ。


 信頼できる人になら、この手紙を見せても構わないわ。
 陛下の手紙に、私が知る限りのイモルキ国の情勢なんかを詳しく書いたの
 興味があるなら見せてもらうといいわ。


 また逢う日まで。
 愛しているわ。アルヤ。』

 手紙が終わった。
 なんだか、小説でも読んでいる気分だった。

 顔を上げると皆が私を黙って見つめていた。



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