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侍女と騎士団事情
しおりを挟む部屋に戻ると、早速ドレスをみて興奮する3人を見ながらお茶を飲む。
ニーナがドレスについて熱く語っている。
「楽しそうね。」
横にいるエマに言う。
「テンション上がりますからね!」
“普段、二人の侍女だけが部屋に居るくらいだからこんな賑やかなのは珍しいわね。”
賑やかなのは嫌いではない。
でも、やはり1人の時間がないのは少し辛い。
まだ読み終えていない日記も気になる。
“堂々と読んじゃおうかしら…いや。何書いているか分からないからな…”
自分の机に座り、狩猟大会で貰った手紙を片付ける事にする。
私の体調を気遣うフリのもの。
お茶会への招待介。
娘を侍女にどうかというの。
息子と会ってみないかというもの。
告白やプロポーズじみた物まである。
無駄だと分かっていても、全て開けて軽く読む。
もしかしたら、有益なものがあるなもしれないからだ。
ぼちぼち、数日かけて見ていたからそんなに時間がかからず読みおえた。
フと顔を上げると、まだドレスの前で3人は話していると。
説明が終わったのかニーナはその輪の中には居なく、3人のお茶を入れていた。
「ねぇ、ニーナ。エマ?」
「どうされました?」
近くにいたエマが私に答える。
「…今更かもしれないけど。二人だけで私の侍女するの、大変じゃない?」
娘を侍女にどうか。と言う手紙を見ながら言う。
ニーナとエマが顔を見合わせる。
「大変だと思った事ございませんよ。
どうされました?」
ニーナが私の机の前にくる。
「娘を侍女にって手紙を見て思ったの。
…いずれは増やさないといけなくなるだろうしね。」
賑やかだった部屋が静かになる。
騎士3人も黙り私を見ていた。
「あなた達はドレスを見ててくれて構わないよの?」
ニコリと笑うとセナが言う。
「…すみません。うるさくしたらダメなような気がして。」
「ありがとう。ニーナがお茶を入れてくれてるわよ。座って休んだら?」
「あ!ありがとうございます!」
3人はソファに座る。
なんとも言えない表情をするニーナとエマ。
「いきなりだったわね。ごめんなさい。
二人が出来ていないとか、そう言うんじゃないの。一人でも増えれば楽になるんじゃないかと思っただけよ。キツかったら言って頂戴ね。」
二人に笑いかけると、笑顔が返ってきた。
「「ありがとうございます。」」
すると、イリスが言う。
「優しすぎて羨ましい…」
セナとハンナが頷くのが見える。
「ふふ。殿下の所は厳しいで有名だものね。」
「私はカレルド殿下の部隊を希望して入隊したけど、イリスとハンナは違うから尚更よね。」
セナがお茶を飲みながら言う。
「そうなの?」
「はい。私達は元々マルセル殿下の第一部隊に居ました。
でも、色々あって全員追い出された所をカレルド殿下に拾って頂きました。」
ハンナが説明する。
「…色々って?」
「マルセル殿下の部隊に、どこかの貴族のご子息が数人入隊し、親姉妹をよく連れてくるようになったのです。ご存じないですか?」
ハンナが不思議そうに言う。
「…騎士団系の話は私にはあまり届かないの。」
“うまく誤魔化せただろうか…”
「あ、そうなのですね。
訓練中だろうがお構いなしに殿下に付き纏い、親までもが出入りするようになり訓練にもなりませんでしたし、かなりお疲れのようでした。
噂によると、かなりの金額を払い入隊したとか…
数カ月だけでも剣術を教えてやってほしい。
とか理由をつけて入ってきたそうです。
本当かはわかりませんが…
マルセル殿下は、その貴族数人を追い出しましたが…
私達も付き纏う目的で入ったんじゃないか。と疑いが向けられました。
噂に尾ひれが付き
『貴族に雇われて部隊を壊しに来た』などと訳のわからない噂が沢山飛び交いました。
私達は、違う。と、訴えましたが…
入隊したばかりの私達には信用もなく、その噂で既に部隊を惑わせている。と言われ追い出されそうになっていた時、
エノワール様に、第二部隊はどうかと言って頂き、カレルド殿下にお目通りし許可が貰え第二部隊に入れていただきました。」
「そんな事があったのね。」
「はい。それきり、第一部隊は女性の入隊していませんし、親族の出入りが禁止されました。」
「…それ、どれくらい前?」
「2年ほど前です。」
“私がどちらかの皇太子を選ぶ事になって焦った貴族がそんな事したのかしら…”
「マルセル殿下の所だけ?」
この問に答えるのはセナだった。
「いえ、かなり大勢の方が入隊されました。
同じ様に、親族が頻繁に出入りしていましたが…
全て無視し、執拗い方には睨みつけ、
それでも執拗い方には、剣を突き付け殺されたいのか?っと脅してましたよ。
親族の出入りは段々減っていき、訓練に付いてこれるわけないご子息達は、追い出さなくても全員辞めていきました。
なので、第一部隊とは違い、親族の出入りは自由ですね。
まぁ、邪魔すると殺す。と言っとけとは言われてますから来る親族はいないですけどね。」
“あぁ…マルセル派の貴族はカレルドを抑えようとし、
カレルド派の貴族はマルセルの事を抑えようとしたのね。
だからマルセルの所は数人で、カレルドの所は大勢って事かしらね…”
思わず笑ってしまう。
「ふふ。そんなにキツイの?」
黙っていたセナとハンナが声を上げる。
「そりゃーもう!男女区別せずビシバシと!!」
アレがキツかった。コレもキツかった!とまくし立てる二人を見ていると
エマがお茶を持ってきてくれた。
「ありがとう。」
エマに笑いかけると、セナが言い出す。
「でも!殿下がお嬢様に笑いかけているのは衝撃でした!!」
「殿下も人間だもの。笑いくらいするわ。
ねぇ?」
ニーナと、エマに言う。
「はい。…怖いですけど。」
エマが呟く。
「そう!何だかお嬢様と話している殿下は雰囲気が柔らかくなる様な気がします!!」
セナがエマの言った言葉に反応する。
「クス。それはわかる気がします。」
ニーナが笑う。
「狩猟大会の時、殿下がお嬢様を抱きかかえてる時とか、露店に行かれる時とか!雰囲気全然違いましたよ!
はっ!お付き合いされているのですか!!?」
ハンナがいうと皆が私を見る。
「え?!なんで?!」
「女の勘です!」
ふふっと笑い言うハンナ。
「でも、どちらかの皇太子殿下とご結婚されるのでしょ?
どちらで、お考えなのですか?」
セナが首を傾げる。
「み、皆はどちらがいいと思う?次期皇帝よ?関係なくないでしょ?」
んーっと考える3人。
はぁ。とため息をつくと、ニーナと目があい笑われる。
「やはり、第一皇太子のマルセル殿下でしょうか…
人当たりもいいし、優しそうだし、貴族もマルセル殿下推し多いですし!」
セナはマルセル派。
「え!カレルド殿下の方が実力を見せつけたし、国を守るって意味ではカレルド殿下なのでは?!」
ハンナはカレルド派。
「私はマルセル殿下かな…
カレルド殿下が皇帝だなんて想像できない」
イリスはマルセル派。
「でも、カレルド殿下が皇帝になると、あなた達ロイヤルナイトになれるチャンスとかじゃないの?副団長のセナとか特に。
どう決まるか知らないけど…
魔鉱石貰えるチャンスでしょ?」
そう言うと3人私を見る。
「確かに!!!
ぜひ、カレルド殿下と!よろしくお願いします!!」
セナが立ち上がりお辞儀をする。
「でも、セナはマルセル殿下派なのでしょー?」
からかい笑う。
「今のは無かったことにー!」
焦るセナを、みんなで笑う。
上司の愚痴に、恋愛話。
女が集まると会話が途絶えない。
嫌な事を忘れ、楽しいひと時だった。
皇后の部屋に通い、その後訓練所にも通う。
そんな毎日。
すぐに1週間が経ち、陛下が帰ってきたと報告を受けた。
その数時間後、陛下の執務室に呼ばれた。
、
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