84 / 217
侍女と騎士団事情
しおりを挟む部屋に戻ると、早速ドレスをみて興奮する3人を見ながらお茶を飲む。
ニーナがドレスについて熱く語っている。
「楽しそうね。」
横にいるエマに言う。
「テンション上がりますからね!」
“普段、二人の侍女だけが部屋に居るくらいだからこんな賑やかなのは珍しいわね。”
賑やかなのは嫌いではない。
でも、やはり1人の時間がないのは少し辛い。
まだ読み終えていない日記も気になる。
“堂々と読んじゃおうかしら…いや。何書いているか分からないからな…”
自分の机に座り、狩猟大会で貰った手紙を片付ける事にする。
私の体調を気遣うフリのもの。
お茶会への招待介。
娘を侍女にどうかというの。
息子と会ってみないかというもの。
告白やプロポーズじみた物まである。
無駄だと分かっていても、全て開けて軽く読む。
もしかしたら、有益なものがあるなもしれないからだ。
ぼちぼち、数日かけて見ていたからそんなに時間がかからず読みおえた。
フと顔を上げると、まだドレスの前で3人は話していると。
説明が終わったのかニーナはその輪の中には居なく、3人のお茶を入れていた。
「ねぇ、ニーナ。エマ?」
「どうされました?」
近くにいたエマが私に答える。
「…今更かもしれないけど。二人だけで私の侍女するの、大変じゃない?」
娘を侍女にどうか。と言う手紙を見ながら言う。
ニーナとエマが顔を見合わせる。
「大変だと思った事ございませんよ。
どうされました?」
ニーナが私の机の前にくる。
「娘を侍女にって手紙を見て思ったの。
…いずれは増やさないといけなくなるだろうしね。」
賑やかだった部屋が静かになる。
騎士3人も黙り私を見ていた。
「あなた達はドレスを見ててくれて構わないよの?」
ニコリと笑うとセナが言う。
「…すみません。うるさくしたらダメなような気がして。」
「ありがとう。ニーナがお茶を入れてくれてるわよ。座って休んだら?」
「あ!ありがとうございます!」
3人はソファに座る。
なんとも言えない表情をするニーナとエマ。
「いきなりだったわね。ごめんなさい。
二人が出来ていないとか、そう言うんじゃないの。一人でも増えれば楽になるんじゃないかと思っただけよ。キツかったら言って頂戴ね。」
二人に笑いかけると、笑顔が返ってきた。
「「ありがとうございます。」」
すると、イリスが言う。
「優しすぎて羨ましい…」
セナとハンナが頷くのが見える。
「ふふ。殿下の所は厳しいで有名だものね。」
「私はカレルド殿下の部隊を希望して入隊したけど、イリスとハンナは違うから尚更よね。」
セナがお茶を飲みながら言う。
「そうなの?」
「はい。私達は元々マルセル殿下の第一部隊に居ました。
でも、色々あって全員追い出された所をカレルド殿下に拾って頂きました。」
ハンナが説明する。
「…色々って?」
「マルセル殿下の部隊に、どこかの貴族のご子息が数人入隊し、親姉妹をよく連れてくるようになったのです。ご存じないですか?」
ハンナが不思議そうに言う。
「…騎士団系の話は私にはあまり届かないの。」
“うまく誤魔化せただろうか…”
「あ、そうなのですね。
訓練中だろうがお構いなしに殿下に付き纏い、親までもが出入りするようになり訓練にもなりませんでしたし、かなりお疲れのようでした。
噂によると、かなりの金額を払い入隊したとか…
数カ月だけでも剣術を教えてやってほしい。
とか理由をつけて入ってきたそうです。
本当かはわかりませんが…
マルセル殿下は、その貴族数人を追い出しましたが…
私達も付き纏う目的で入ったんじゃないか。と疑いが向けられました。
噂に尾ひれが付き
『貴族に雇われて部隊を壊しに来た』などと訳のわからない噂が沢山飛び交いました。
私達は、違う。と、訴えましたが…
入隊したばかりの私達には信用もなく、その噂で既に部隊を惑わせている。と言われ追い出されそうになっていた時、
エノワール様に、第二部隊はどうかと言って頂き、カレルド殿下にお目通りし許可が貰え第二部隊に入れていただきました。」
「そんな事があったのね。」
「はい。それきり、第一部隊は女性の入隊していませんし、親族の出入りが禁止されました。」
「…それ、どれくらい前?」
「2年ほど前です。」
“私がどちらかの皇太子を選ぶ事になって焦った貴族がそんな事したのかしら…”
「マルセル殿下の所だけ?」
この問に答えるのはセナだった。
「いえ、かなり大勢の方が入隊されました。
同じ様に、親族が頻繁に出入りしていましたが…
全て無視し、執拗い方には睨みつけ、
それでも執拗い方には、剣を突き付け殺されたいのか?っと脅してましたよ。
親族の出入りは段々減っていき、訓練に付いてこれるわけないご子息達は、追い出さなくても全員辞めていきました。
なので、第一部隊とは違い、親族の出入りは自由ですね。
まぁ、邪魔すると殺す。と言っとけとは言われてますから来る親族はいないですけどね。」
“あぁ…マルセル派の貴族はカレルドを抑えようとし、
カレルド派の貴族はマルセルの事を抑えようとしたのね。
だからマルセルの所は数人で、カレルドの所は大勢って事かしらね…”
思わず笑ってしまう。
「ふふ。そんなにキツイの?」
黙っていたセナとハンナが声を上げる。
「そりゃーもう!男女区別せずビシバシと!!」
アレがキツかった。コレもキツかった!とまくし立てる二人を見ていると
エマがお茶を持ってきてくれた。
「ありがとう。」
エマに笑いかけると、セナが言い出す。
「でも!殿下がお嬢様に笑いかけているのは衝撃でした!!」
「殿下も人間だもの。笑いくらいするわ。
ねぇ?」
ニーナと、エマに言う。
「はい。…怖いですけど。」
エマが呟く。
「そう!何だかお嬢様と話している殿下は雰囲気が柔らかくなる様な気がします!!」
セナがエマの言った言葉に反応する。
「クス。それはわかる気がします。」
ニーナが笑う。
「狩猟大会の時、殿下がお嬢様を抱きかかえてる時とか、露店に行かれる時とか!雰囲気全然違いましたよ!
はっ!お付き合いされているのですか!!?」
ハンナがいうと皆が私を見る。
「え?!なんで?!」
「女の勘です!」
ふふっと笑い言うハンナ。
「でも、どちらかの皇太子殿下とご結婚されるのでしょ?
どちらで、お考えなのですか?」
セナが首を傾げる。
「み、皆はどちらがいいと思う?次期皇帝よ?関係なくないでしょ?」
んーっと考える3人。
はぁ。とため息をつくと、ニーナと目があい笑われる。
「やはり、第一皇太子のマルセル殿下でしょうか…
人当たりもいいし、優しそうだし、貴族もマルセル殿下推し多いですし!」
セナはマルセル派。
「え!カレルド殿下の方が実力を見せつけたし、国を守るって意味ではカレルド殿下なのでは?!」
ハンナはカレルド派。
「私はマルセル殿下かな…
カレルド殿下が皇帝だなんて想像できない」
イリスはマルセル派。
「でも、カレルド殿下が皇帝になると、あなた達ロイヤルナイトになれるチャンスとかじゃないの?副団長のセナとか特に。
どう決まるか知らないけど…
魔鉱石貰えるチャンスでしょ?」
そう言うと3人私を見る。
「確かに!!!
ぜひ、カレルド殿下と!よろしくお願いします!!」
セナが立ち上がりお辞儀をする。
「でも、セナはマルセル殿下派なのでしょー?」
からかい笑う。
「今のは無かったことにー!」
焦るセナを、みんなで笑う。
上司の愚痴に、恋愛話。
女が集まると会話が途絶えない。
嫌な事を忘れ、楽しいひと時だった。
皇后の部屋に通い、その後訓練所にも通う。
そんな毎日。
すぐに1週間が経ち、陛下が帰ってきたと報告を受けた。
その数時間後、陛下の執務室に呼ばれた。
、
0
お気に入りに追加
192
あなたにおすすめの小説

悪役令嬢カテリーナでございます。
くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ……
気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。
どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。
40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。
ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。
40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

戦いに行ったはずの騎士様は、女騎士を連れて帰ってきました。
新野乃花(大舟)
恋愛
健気にカサルの帰りを待ち続けていた、彼の婚約者のルミア。しかし帰還の日にカサルの隣にいたのは、同じ騎士であるミーナだった。親し気な様子をアピールしてくるミーナに加え、カサルもまた満更でもないような様子を見せ、ついにカサルはルミアに婚約破棄を告げてしまう。これで騎士としての真実の愛を手にすることができたと豪語するカサルであったものの、彼はその後すぐにあるきっかけから今夜破棄を大きく後悔することとなり…。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

愛人をつくればと夫に言われたので。
まめまめ
恋愛
"氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。
初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。
仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。
傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。
「君も愛人をつくればいい。」
…ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!
あなたのことなんてちっとも愛しておりません!
横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。
※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします…

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
【完結】夫は私に精霊の泉に身を投げろと言った
冬馬亮
恋愛
クロイセフ王国の王ジョーセフは、妻である正妃アリアドネに「精霊の泉に身を投げろ」と言った。
「そこまで頑なに無実を主張するのなら、精霊王の裁きに身を委ね、己の無実を証明してみせよ」と。
※精霊の泉での罪の判定方法は、魔女狩りで行われていた水審『水に沈めて生きていたら魔女として処刑、死んだら普通の人間とみなす』という逸話をモチーフにしています。


【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる