78 / 191
女性騎士
しおりを挟む薄暗い部屋で目が覚める。
“寝ちゃったわね…”
でも、スッキリした。
身体を起すとニーナの声がした。
「おはようございます。お嬢様。」
「おはよう…」
髪をかき上げながら言う。
「明かりつけますね。騎士の方もいらっしゃってますよ。」
ニーナが明かりをつける。
「お嬢様。お久しぶりでございます。
第二騎士団副団長のセナでございます。」
ベットの前で膝をつき挨拶をする。
“セナ…あ、何度かあった事あるわね…”
「久しぶり。忙しいのにごめんなさいね。」
「いえ!事情は聞いております。大変でしたね。体調もよろしくないとお聞きしまさしたが大丈夫ですか?」
「ええ。眠ったらスッキリしたわ。」
後ろで聞いていたニーナが、安心したような表情をみせる。
「よかったです。今日は私が居ますね。」
「ありがとう。」
「あ、起きたら俺を呼べってカレルド殿下が仰ってしたよ?
お嬢様に言えば分かると言われましたが分かりますか?」
「そうなの…
分かるけど、先にシャワー浴びたいわ。汗かいちゃった。」
チラっとニーナを見る。
「かしこまりました。すぐ準備しますね!」
じーっとセナが私を見る。
「…お二方だけの暗号みたいなのが、あるのですか?あの殿下と?」
思わず笑ってしまう。
「ふふ。あの殿下とって…魔鉱石は便利ねってだけよ。」
「なるほど…。でも団長とそんな会話聞いたことないですけど…」
「それは私にはわからないわね。そんなに気になる?」
「はい!絶対初の女騎士団長になって、魔鉱石をゲットするんです!」
両手で拳をつくり、胸元で強く握る。
「ふふ。頑張って。応援してるわ。」
ニーナが浴室から出てくるのを見て立ち上がる。
ふと、左腰を触る。
「まだ痛みますか?」
ニーナが心配そうに駆け寄る。
「少しね。でも問題ないわ。」
そう言い、シャワーを浴びる。
すぐ近くでニーナが待機する。
“1人の時間はもう持てないわね…
まだ日記も全部読めてないのに。”
シャワーで汗を流し、浴室の鏡で左腰に付けられた印を見る。
赤みがだいぶ引いて黒くなってきている。
”ラドラインが何がしたいのか分からないわね…”
そう思いながら浴室を出て着替えて寝室に戻り髪を拭く。
「そういえばエマは?」
髪をとかしてくれているニーナに聞く。
「食堂に行ってますよ。」
ふっと時計を見ると19時だった。
“そこそこ眠ってたのね…”
目を瞑り心の中でカレルドを呼ぶ。
「お嬢様?」
目を瞑る私にニーナが不思議に思う。
「大丈夫よ。今、殿下を呼んだから。来ると思うわ。」
「え?今ですか!?」
「え。」
セナとニーナが反応する。
「ええ。」
「どうやってですか!?どれくらいで来られるのでしょうか!?」
セナが興味津々で聞いてくる。
「ふふ。殿下に聞いてちょうだい。
どれくらいで来るのかは…どこにいて、何をなさっているかわからないから殿下次第ね。」
目の前の水を飲みながら言う。
「髪を乾かしてからの方がよかったのでは…?」
ニーナが言う。
「乾かしてる時間があるなら呼べ。とか言われそうじゃない?」
「うわ、言いそうですね…」
セナが苦い顔をして言うので笑ってしまう。
すると、コンコン。
扉がなる。
“随分早かったわね…”
そう思っているとニーナが扉を開け言う。
「あら、エマ。もう帰ってきたの?」
エマが部屋入ってきて言う。
「そうですか?ゆっくりしてきたつもりですけど?」
「おかえり、エマ。」
ニコリとエマを迎える。
「お嬢様!起きられたんですね!もう体調はいいのですか?」
「ええ。心配かけてごめんなさいね。」
胸をなでおろすセナ。
「もう殿下が来られたのかと驚きました…」
「俺が来ると驚くのか?」
まだ閉めてなかった扉から低い声が聞こえる。
「ひゃ!?殿下!」
セナがお辞儀をし、ニーナと、エマもお辞儀をする。
部屋に入ってくるカレルドに言う。
「おはようございます。」
「ああ。大分顔色がよくなったな。」
「はい。眠れましたし、シャワーも浴びてスッキリしました。」
ニコリと笑う私にカレルドがパチンと指を鳴らす。
まだ湿っている髪がフワッと舞ったかと思うと、サラッと乾いた髪が落ちてきた。
「わっ。あ、ありがとうございます。」
一瞬で乾かされた髪を触る。
“この前、皇后様が言ってたのはコレね…”
「便利!」
エマが思わず口に出す。
「それも魔鉱石ですか!?」
セナが目を輝かせる。
、
0
お気に入りに追加
191
あなたにおすすめの小説
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
別れてくれない夫は、私を愛していない
abang
恋愛
「私と別れて下さい」
「嫌だ、君と別れる気はない」
誕生パーティー、結婚記念日、大切な約束の日まで……
彼の大切な幼馴染の「セレン」はいつも彼を連れ去ってしまう。
「ごめん、セレンが怪我をしたらしい」
「セレンが熱が出たと……」
そんなに大切ならば、彼女を妻にすれば良かったのでは?
ふと過ぎったその考えに私の妻としての限界に気付いた。
その日から始まる、私を愛さない夫と愛してるからこそ限界な妻の離婚攻防戦。
「あなた、お願いだから別れて頂戴」
「絶対に、別れない」
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか?
曽根原ツタ
恋愛
「クラウス様、あなたのことがお嫌いなんですって」
エルヴィアナと婚約者クラウスの仲はうまくいっていない。
最近、王女が一緒にいるのをよく見かけるようになったと思えば、とあるパーティーで王女から婚約者の本音を告げ口され、別れを決意する。更に、彼女とクラウスは想い合っているとか。
(王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは身を引くとしましょう。クラウス様)
しかし。破局寸前で想定外の事件が起き、エルヴィアナのことが嫌いなはずの彼の態度が豹変して……?
小説家になろう様でも更新中
貴方の愛人を屋敷に連れて来られても困ります。それより大事なお話がありますわ。
もふっとしたクリームパン
恋愛
「早速だけど、カレンに子供が出来たんだ」
隣に居る座ったままの栗色の髪と青い眼の女性を示し、ジャンは笑顔で勝手に話しだす。
「離れには子供部屋がないから、こっちの屋敷に移りたいんだ。部屋はたくさん空いてるんだろ? どうせだから、僕もカレンもこれからこの屋敷で暮らすよ」
三年間通った学園を無事に卒業して、辺境に帰ってきたディアナ・モンド。モンド辺境伯の娘である彼女の元に辺境伯の敷地内にある離れに住んでいたジャン・ボクスがやって来る。
ドレスは淑女の鎧、扇子は盾、言葉を剣にして。正々堂々と迎え入れて差し上げましょう。
妊娠した愛人を連れて私に会いに来た、無法者をね。
本編九話+オマケで完結します。*2021/06/30一部内容変更あり。カクヨム様でも投稿しています。
随時、誤字修正と読みやすさを求めて試行錯誤してますので行間など変更する場合があります。
拙い作品ですが、どうぞよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる