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“カレルドだけ来るかと思ったけど…”
そう思いながら扉を見ると、かなり不機嫌なカレルドが先に入ってきてマルセルが続いて入ってきた。
さらに、その後ろから氷と水、タオルを台車に乗せ持ったエマ、ニーナが最後に入り扉を閉める。
カレルドと目が合う。
「そんな顔しないで下さい。」
困った顔をする。
ニーナに目配せし、出来るだけ模様だけを見せるように捲ってもらう。
刻まれた模様を見て、二人は眉間にシワを寄せる。
マルセルがアノルに聞く。
「何これ。」
アノルは首を横に振るだけだった。
カレルドは屈んでジッと見つめる。
「文字ではないな。何かの絵か?
…触っていいか?」
「はい…」
カレルドの指がゆっくりと触れる。
「少し膨れ上がって、大分熱いな。」
そう言い、すぐ触るのをやめ立ち上がる。
ニーナがそっと捲っていたのを下ろし、タオルを取る。
そのタオルでエマが持ってきた氷袋を包む。
「私が当てても大丈夫ですか?、」
「お願い。」
「失礼しますね。」
そう言いニーナは熱をもつ部分にゆっくりと氷袋を当てる。
痛みで身体がピクリと反応する。
「大丈夫ですか?」
「ええ。大丈夫よ。持ってて…」
痛みはあるが熱が引いていき気持ちが良かった。
冷やしている間、アノルが来る。
「取り敢えず、冷やして患部の熱を取りましょう。
痛みはどうですか?」
「痛みはありますが、治まってきているように思います。」
乱れた髪を耳にかけ荒い息遣いで答える。
顎を触り考えて、なんとも言えない表情で言うアノル。
「…鎮痛薬を飲めばある程度緩和されるかも知れません。塗り薬は効果はないでしょう…
私の知識では、これぐらいしか申しあげられません。」
「鎮痛薬はいいわ。初めて見た物に対処が分からないのは当然です…」
少し身体を起こして言う。
氷袋を持っていたニーナが離れた。
「…もう氷が溶けてしましました」
エマが持ってきた氷を新たに袋に入れ。
その光景を見ているとカレルドがよって来る。
「立てるか?」
手が目の前の差し出された。
その手を取り、ゆっくり立ち上がりベットに座る。
エマが水で濡らしたタオルを持ってきた。
「すごい汗ですよ…」
「ありがとう。」
受け取り額から首筋まで流れた汗を拭く。
カレルドがアノルから何かを受け取り私に持ってきた。
「コレは?」
「風邪薬です。」
私の問にアノルが応えた。
“あぁ…すっかり忘れてた…
悪寒なんて痛みでどっかいっちゃった。”
風邪薬の言葉で考え込んでいたマルセルが私を見る。
エマから水を受け取り薬を飲む。
「横になっとけ。」
カレルドに言われ、まだ痛む左を上に向けみんなの方を向き横になる。
カレルドがベットに座り、ニーナから氷袋を受け取り私の左腰に当てながら聞く。
「寝る前に、さっきの状況を教えろ。なぜコイツまで居たんだよ。」
マルセルを睨む。
「俺は悲鳴が聞こえたから来ただけだ。」
カレルドをにらみ返す。
私はカレルドが部屋を出た後の事を話す。
「今回も、狩猟大会の時のように幻影でしょう…
『まだ触れられるほど戻ってない』て言ってました。」
「本来なら幻影でも物に触れられるって事か。」
マルセルが呟く。
「それも問題だが、この皇宮内のコイツの部屋にまで来たのも問題だ。
幻影だろうが短時間だろうがココまで入るなんて前代未聞だ。」
「陛下が…お出かけになられたからですか…?」
カレルドの横顔見ながら言う。
カレルドとマルセル。アノルまでも私を見て黙る。
“変なこと言ったかしら…”
二人は顔を見合わせる。
「お前が行けよ。」
カレルドがマルセルに言う。
「ったく。」
マルセルは急いで部屋を出ていった。
「私も言って参ります。」
アノルもそう言い出ていった。
状況を飲み込めない私にカレルドか説明する。
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