記憶喪失の令嬢は皇太子に激執着される

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日記4

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 “裁判の為に持ってこられたこの日記帳。
 また読むなんて思ってもなかったわね…”

 最後の、5冊目を取りページを捲る。
 ここからは、皇宮にきて回復してきた時から何となく書き始めた物。

 治療についてや、お茶会をしたなど。他愛のない事。
 妃教育が始まってからは、
 何を勉強はしたか。と、貴族の名前の横に✗、たまに△が記されている。
 日記ではなく、日誌になっていっていた。

 パラパラっと見て閉じる。
 ”こっちより、もう1冊を先に見たほうがよさそう…”

 エマが言っていた。
『2冊の日記』あの意味も思い出していた。

 日記の入っていた引き出しの前で屈み、引き出しの上を手で触る。

 “ここをの角を押すと…”

 左手前の角をグッと押すと板が外れる。
 板と一緒に新たな日記帳が落ちてくる。

 その日記帳を取り、椅子に座る。
 “人には言えない、私の本音と愚痴を書いた物…”

 日記帳を開く。

 
 母の祖国の文字を教わったことがある。覚えている限り使っている為、暗号のようになっている。


 ページを触りながら読む。
 “大丈夫…読める…”

 1ページ目から、早速書かれているものに驚愕する。

 
 マルセルとカレルドの文字。
 そして、マルセルに◯がつけられ、カレルドに✖️が付けられている。

 私が、時期皇帝を選べと、両陛下に言われた。
 私を娘にしたいかららしい。すごい理由。
 史上最悪の暴君だと言われていた陛下は、何を言い出すかほんとにわからない。
 怖いと思った事はないけど、独特な雰囲気に緊張はする。
 助けてくれた恩がある。言われた事はする。



 皇帝を選ぶのだから。慎重にならないといけない…




 心臓の鼓動が身体に響く。

 ページを巡る。

『双子だろうが、第一、第二と順位が決まってしまっている以上、第一皇太子のマルセル殿下が皇帝になるのが自然だろうし、貴族の反発も少なく円満に即位するだろう。
 性格も、穏やかで物怖じしなく向いていそう。
 カレルド殿下は、傲慢で強引で、自分だけがいいならそれで良くて、何も考えてない!』


 思わず笑ってしまう。

 “ふふ。何かあったのね…”

 だが、確かにそうだと思った。
 どちらか迷っているなら、帝国の事を考えマルセルと婚姻関係を結んだ方がスムーズなのは間違いない。


『カレルドが、私を妃候補にあげたと聞いた。
 その後に。マルセルも私の名を出したとも聞いた。面識があったから?意味わからない』


『私が、時期皇帝を選ぶことは、大々的に発表された。
 これは、両陛下からの寵愛を受け、私が次の皇后になる発表でもあった。

 この事により事件以降、変な噂が耐えなかったシャンドリ領は、両陛下の寵愛を受ける時期皇后の出身地として有名になる。

 お兄様たちは、その娘を公爵から守った英雄となった。
 出ていった人々は戻り、元々兵、騎士団育成で有名だったが、更に名を轟かせ前伯爵の頃より志願者は3倍になり栄えてきていると聞く。

 これを狙ったかはわからない。

 ただ、『例え息子二人でなくても』との発表もあった。
 これは聞いていない。
 言っておいてほしかった…

 毎日、我が家の息子はどうだ?野心家達が私との元にくる。
 ただでさえ、娘を侍女にとほぼ毎日来ていたのに訪問が増えて頭爆発しそう。
 熱心な訪問を続ける所はメモをとった。
 この人達とは、取り敢えず関わらないようにする。
 私を利用しようと考えてる人たちの相手をしている余裕はない。

 これも、作戦だと受け取ることにした。
 領からほぼ出たことない私は、勉強はしたが貴族関係は直に触れていない。
 敵と味方を選ぶ材料になる。』


 ここで頭を抱える。
 “14歳…よね?
 今の私より大人なんだけど…”

 しっかりしないと。そう思い直しページを捲っていく。


『毎日毎日、マルセルとカレルドが部屋に来る。
 鬱陶しい。勉強の邪魔しないでほしい。
 何が好きだよ。皇帝になりたいならハッキリそう言ってくればいいのに。回りくどい。』

 “今とやってる事はかわらないのね。”

『マルセルとカレルドが殺し合いをしたらしい。騒がしいとは思っていたけどそんな事になっているのは知らなかった。

 並べられたベットに横たわり、目を開けない二人を見た。
 傷だらけだった。あちこちの包帯から血がにじみ出てもいた。
 死にはしないから大丈夫だと言われたけど、あんなにボロボロな人初めて見た。
 兄弟でなにしてるの?私の取り合いだと聞き胸が痛くなった。
 カレルドが先に倒れ、その後すぐにマルセルも倒れたらしい。勝者はマルセルだと聞いた。』

 “これ…この前マルセル殿下が言ってたやつ…よね。”

 引き分けだと言っていたマルセルが勝っていた。

 “勝者はマルセルだと本人も聞いているはず…どうして…”

 ページを捲り読み続ける。

『毎日お見舞いに行き、傷口に薬を塗り、腕や足の包帯を変える手伝いをしに行った。
 5日目の今日、行くとマルセルが先に目を覚まし陛下と話していた。
 側によると、私を見て笑いゴメンネ。と1言言い目を閉じた。
 陛下からも、ばか息子がすまないね。と言われた。
 ホントばか。
 早くどちらか決めないと次は本当に死んでしまうかもしれない。
 恋愛なんてわからない。好きだなんて考えたことない。そんな事は考えたらいけないのかもしれない。』


『今日も行くと、マルセルが起きていた。
 まだカレルドは起きていないらしい。
 やりすぎた。と笑うマルセルに怒り泣いた。
 なぜこんな事をしたか聞いたら、
「どちらかが居なくなれば悩む必要なくなるだろ?」と言われた。
 本気なのかは分からないけど、双子だけあってこの人もカレルドと同じような思考なのね。
 そんな事望んでない。どれだけ心配したか心苦しかったか泣きなが責めた。
 貴方と婚約するからもうしないでとも伝えた。
「そんな惰性ではなく、真剣に選んでほしかった。」と言われてしまった。』

 “これって…
 断られた…って事?それとも…”
 思い出せない。

 婚約ってこの事言ってたって事?
 嘘じゃなくて本当?
 カレルドが知らないだけで本当だとしたら…

 手で顔を覆う。
 “…私最低だ。”



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