上 下
70 / 195

日記3 ※胸糞注意

しおりを挟む







「手を上げ、立て。」
 低く冷たい声が聞こえた。

 公爵に剣を突きつける、陛下が1人立っていた。

「皇帝!?」
 うわずった声を上げ私から離れる。

 陛下の後ろの開いたままの扉から、大勢が見ている。

「いいぞ。」
 陛下の声に、お兄様二人が私に駆け寄ってきた。

 真っ青な顔をした私を、抱きかかえ部屋から出る。
「もう大丈夫だ!」
「遅くなってすまなかった。」
 お兄様たちから声をかけられる。
 初めて涙を流すお兄様たちを見た。

 お父様は既に騎士により捕らえられ、数分後には公爵も捕らえられ部屋から出てきた。

 喚き散らす公爵を無視し、陛下が近づいてきた。

「よく頑張った。」
 大きな手で頭を撫でられた。

 張り詰めていたものが一気に決壊し、大粒の涙が取り留めもなく流れた。

 お父様と、公爵は騎士により連れて行かれ
 た。

 公爵と関わるようになり、金回りの異変に気づいたお兄様たちは自分らで調べていたらしい。

 支援金にしては大金すぎる額に、何か見返りを与えているのではないかと思っていた所に、私の姿を見て感づいたらしい。

 遠征先で陛下と偶然会い、陛下の手助けもあり予定より早く切り上げ、途中まで同じ道のりを帰ってきたらしいお兄様たち。

 金銭問題も既に陛下に相談していたお兄様たちは、すぐに陛下を呼びに直ぐに出たらしい。
 セインお兄様は残り一人にしないようにしていたと後で聞いた。

 少し落ち着いた私に、陛下は尋ねた。

「キミにとって、ここで暮らし続けるのは辛いだろう。
 治療と療養を名目に、皇宮に来る気はないかい?」

 もう、一人で自分の部屋にも入れなくなっていた私。
 母が失踪し、公爵との日々が思い出されるシャンドリ邸に未練はなかった。
 お兄様たちも行っておいで。との、後押しもあり直ぐに返事をした。

「よろしくお願いします。」

 最低限の荷物を持ちセインお兄様と馬車にのり、その日にシャンドリ邸を出た。

 こうして11歳で皇宮に迎え入れられた。
 12歳の誕生日の2ヶ月前だった。

 皇宮に着くと、知らせが既に届いていたらしく皇后、マルセル、カレルド、アノルが出迎えてくれ、アノルの治療を受けていった。

 数日後ニーナとエマが来てくれた。

 その日から、シャンドリ邸にはあの日まで帰らなかった。




 公爵は、未成年買春
 お父様は、未成年売春。幇助(ほうじょ)で裁判に掛けられた。

 裁判は皇帝が関わっていようと、公平に行われ判断される。

 お父様は全て自供し、罪を認めた。
 母の捜索でほぼ全ての財産を費やし無くし、困っている所を公爵にお金の支援の話をされた。
 私と話したい。だけだった要求がエスカレートして行ったという。
 12歳の誕生日。2人で夜を明かす約束が交わされ、前金まで払済みだったらしい。


 公爵は認めなかった。
 お兄様たちが集め調べた帳簿・私の日記・私に贈ったアクセサリーの一部から、意識の混濁が引き起こされる薬品が染み込ませてあったのが発見され・陛下自らあの日の事を目撃したと、証拠は十分だった。

 が、公爵はコレらを全て認めず、伯爵にハメられたなど言い出した。
 確かに支援はしたがそれだけだと言い張る。
 帳簿はお兄様たちの改ざん、偽装、思い込み。
 私の日記は子供のざわ語と
 アクセサリーの薬品は、私は贈っただけで作ったわけではないから知らない。
 陛下の目撃は、体調不良だった私がよろけ、助けようとしたが自分も転けてしまい誤解されるような体制になったと話した。


 長引いた裁判の結果。
 長年の売春。金額も異常なほど多く、頻繁だった為、素直に自供したももの
 お父様は禁錮15年


 公爵は
 帳簿の改ざん。

 アクセサリーは公爵が所有している工場で作られた物。故意に薬品を使った証拠も、公爵がやったと言う証拠もないが、混入してはおかしい物だった為厳罰になった。

 私の日記は、性交した記述もなく確認されず。ただ公爵が会いに来ていた。とされる。
 が、異常な公爵の訪問と、私の様子から精神的負担がかかっていたとは認められ、証拠と認められた。

 陛下の目撃も、私が悲鳴など声を上げていなく、性交中ではなかった為事故だとなりそうな所を、アノルが『抵抗する事も、悲鳴を上げることさえ出来る状態でなかった。』と証言し、他の医師らも口を揃えて言うため認められた。

 性行の有無は確認できなかったが、他の悪事もみつかり、
 禁錮5年。罰金。国外追放が言い渡された。


 お父様の12歳の誕生日に、2人で夜を明かすと言う証言は、証拠がないためお咎めなしだった。

 公爵家に没落されては困る貴族等が、援護に周り納得いかない裁判の結果になった。

 今はどうなっているかは知らない。

 その後は、ヴェラスお兄様が伯爵を継ぎ、公爵も息子が公爵を継いだと聞く。


 目を開け、日記帳を手に取る。

 “裁判の為に持ってこられたこの日記帳。
 また読むなんて思ってもなかったわね…”



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】側妃は愛されるのをやめました

なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」  私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。  なのに……彼は。 「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」  私のため。  そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。    このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?  否。  そのような恥を晒す気は無い。 「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」  側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。  今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。 「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」  これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。  華々しく、私の人生を謳歌しよう。  全ては、廃妃となるために。    ◇◇◇  設定はゆるめです。  読んでくださると嬉しいです!

大嫌いな幼馴染の皇太子殿下と婚姻させられたので、白い結婚をお願いいたしました

柴野
恋愛
「これは白い結婚ということにいたしましょう」  結婚初夜、そうお願いしたジェシカに、夫となる人は眉を顰めて答えた。 「……ああ、お前の好きにしろ」  婚約者だった隣国の王弟に別れを切り出され嫁ぎ先を失った公爵令嬢ジェシカ・スタンナードは、幼馴染でありながら、たいへん仲の悪かった皇太子ヒューパートと王命で婚姻させられた。  ヒューパート皇太子には陰ながら想っていた令嬢がいたのに、彼女は第二王子の婚約者になってしまったので長年婚約者を作っていなかったという噂がある。それだというのに王命で大嫌いなジェシカを娶ることになったのだ。  いくら政略結婚とはいえ、ヒューパートに抱かれるのは嫌だ。子供ができないという理由があれば離縁できると考えたジェシカは白い結婚を望み、ヒューパートもそれを受け入れた。  そのはず、だったのだが……?  離縁を望みながらも徐々に絆されていく公爵令嬢と、実は彼女のことが大好きで仕方ないツンデレ皇太子によるじれじれラブストーリー。 ※こちらの作品は小説家になろうにも重複投稿しています。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……

希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。 幼馴染に婚約者を奪われたのだ。 レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。 「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」 「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」 誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。 けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。 レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。 心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。 強く気高く冷酷に。 裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。 ☆完結しました。ありがとうございました!☆ (ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在)) (ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9)) (ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在)) (ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))

あなたなんて大嫌い

みおな
恋愛
 私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。  そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。  そうですか。 私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。  私はあなたのお財布ではありません。 あなたなんて大嫌い。

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

処理中です...