記憶喪失の令嬢は皇太子に激執着される

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日記2 ※胸糞注意

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『陛下がいらっしゃった。
 皇太子殿下の妃候補としての参加と、14歳から始められる皇宮での妃教育の話をされた。
 妃なんてどうでもいい。この家から出られると思うと嬉しかった。
 お父様は止めようとしていけど、先に陛下にお願いしますと、言ってやった。
 もう少し。我慢すればいいだけ。』



『アイツがまた来た。公爵ってそんなに暇なのかしら。
 妃候補になった事を知っていた。お父様から聞いたのかしら。
『私の妻になればいいのに。』気持ち悪い冗談でお父様と笑っている。なんなの…』


『アイツがネックレスを持ってきた。
 お父様が私を見てたから断るのすら面倒になった。付けられたと思ったら、私の胸に手が触れた。本当に気持ち悪かった。偶然だ、過剰に反応し過ぎだ。と笑われた。もう本当に無理。』


 結末が分かっているが、心臓が強く鼓動してくる。


『嫌な夢をみた。最悪。』


 この日からだ…
 夢だと思っていたものは、現実だと知ったのは先の事。

 ネックレスをかけられ数時間後、気分が悪くなり寝室で休んでいた。
 公爵も帰ったのを見送っていた為に気も抜けていた。

 後の調べでネックレスには、薬剤が仕込まれていたと聞いた。

 私の上に馬乗りなっている公爵の夢を見た私は、眠るのが怖くなった…


『夜がくると気分が悪くなる。もうあんな夢は見たくない。』


 この頃から毎日書いていた日記が2、3日空いたり1週間書かなかった事もある。

 やつれていく私を、皆心配してくれていた。
 お父様以外…

 追い打ちをかけるように公爵の訪問がある。

 ニヤニヤと笑う公爵のあの顔は忘れられない。一瞬あの顔が頭によぎる。

 苦しいほどの心臓の締め付けが襲う。
 落ち着き、ゆっくり深呼吸する。

「はぁ…」

 日記から目を離し天井を見つめる。

 ”真相を知っている今でもキツイわね…”
 覚悟して読んでいたつもりでも、つらい過去には間違いなかった。

 辛かったページは流し読む。

 アレから何度か同じ夢を見ている。
 既に自分の部屋で寝れなくなり、ニーナとエマと一緒に寝たり、昼に皆がいる中でうたた寝をし、何とか動けていた。
 公爵の訪問は相変わらずの頻繁だった。


『お兄様達が予定より2日早く帰ってきた。
 私の姿をみて驚かれていた。
 お父様と言い争い、ヴェラスお兄様は着替えもせずまた出掛けられた。
 嫌われたかもしれない。』
 初めてあの夢を見てから2ヶ月後の事だった。

 4冊目の日記帳はまだ空白のページが残っているにも関わらずここで終わっている。



 日記帳を閉じ椅子の背もたれに、もたれ掛かかり、目を閉じ思い出す。

 家に残ったセインお兄様は、ずっと私の側を離れなかった。

 次の日、いつものように公爵が来た。
 いつものようにお父様と公爵の相手をしていると、セインお兄様がお父様を呼び出す。

 公爵と二人となり、いつものように持ってきたプレゼントを出し、語りだすのを黙って聞く。
 なんのプレゼントだったかすら覚えていない。だが、見た瞬間気分が悪くなったのは覚えている。

 席を外そうと立ったつと、床に押さえつけられ馬乗りにされた。
 夢でみたものと同じ、ニヤニヤ気持ち悪く笑う公爵の顔と、ジャラジャラと大きな指輪を付けた手が私の胸を鷲掴みにされる。

 夢と現実の区別すら付かず、現実でも抵抗する力もなかった。



「手を上げ、立て。」
 低く冷たい声が聞こえた。




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