66 / 220
鍵
しおりを挟むカレルドの腕を枕にし、ぐったりベットに横になってる私を後ろから抱く。
「大丈夫か?」
私の髪を撫でながら言う。
「…大丈夫じゃないです。」
ははっと笑う。
目の前にはカレルドの大きな手が見える。
小指につけられている、私と同じ指輪にふれる。
「ん?なんだ?」
「…言わないんじゃなかったのですか?」
「あぁ。予定ではそうだったか…我慢できなくなった。なんの牽制にもならないだろうが、スッキリしたからいいさ。」
クスッと笑ってしまう。
「なんだよ?」
「あ、いえ。その大きな手に細い指輪は似合わないなって思って。」
思ったことを正直にいう。
「ああ。指につける気はなかったからな。」
指輪を外し私の手に渡す。
「指輪する気ないの作ったのですか?」
「まぁな。お前の普段使いが出来るのもで考えたから指輪しか思いつかなかった。
ネックレスやピアスはドレスに合わせてかえるだろ?」
「そんな事考えてくれてたのですか?!」
思わず後ろのカレルドを見る。
「ああ。だが指輪はどうも好きになれん。違和感と剣持つときに邪魔だ。小指なら邪魔にならないと思ったが、ダメだな。」
上を向き、カレルドの指輪を指にはめてみる。
「ふふ。大きすぎて私の親指とぴったりです。」
「お前が細すぎるんだろ。」
そう言うとカレルドが起き上がり、首にかかっていたチェーンを取る。
「ほら、返せ。」
指輪を渡し、チェーンを通すカレルドを後ろから見る。
少し空いているカーテンからみえる外はもう暗い。
「元からネックレスにすればいいのに…」
ボソッと言ったらチラッと私を見て言う。
「…お前と同じのがよかった。そんな事言わせるな。」
顔が火照ってくる。
「あぁ。そういえば…」
カレルドがサイドテーブルの引き出しを開け何かを取り出し、私の前に出す。
それは金色の鍵だった。
身体をシーツで隠しながら起き上がる。
「私の机の鍵…」
「どうせコレのことも思い出したんだろ?」
コクリと頷く。
シャンドリ邸に行く前にカレルドに私が渡した。
もし。私がお母さんと同じように失踪したり、何かあったら、引き出しに入っているものを燃やしてほしい。と。
何が起こるかわからなかったからそう言ったんだった。
「返してやってもいいが。約束しろ。」
ニヤリと笑うカレルドにムッとする。
「な、何をですか?」
「今後、マルセルと2人になるような事があったらすぐに呼べ。」
頷く。
「あと。俺の誕生パーティとお前の誕生パーティは俺と出ろ。」
「わかりました。」
カレルドに鍵を返してもらう。
“ずっと探していた鍵。やっと見つけた。”
「わ、私!部屋に戻ります!」
鍵と小袋を握りしめカレルドに取られた服を取る。
「おい、待て。」
腕を掴まれる。
「な、何ですか?」
「俺も行く。」
「え?!」
「どこかしらで、アイツが待ち伏せしてそうだからな。」
ダルそうに服を着ていくカレルド。
私もコソコソと服を着る。
「そんなコソコソ着なくても良いだろう?
もう全部見た。」
耳元で囁かれる。
「も、もう着たんですか!?」
耳を抑えながら言う。
「ああ。女は大変だな。」
2人でカレルドの部屋を出る。
すっかり暗くなってしまった外を見ながらカレルドと廊下を歩く。
“ニーナとエマは心配してるだろうな…”
そんな事を思っていると、先に歩いていたカレルドが立ち止まる。
廊下の曲がり角でマルセルの側近のドイムに会ったのだった。
「失礼しました。カレルド殿下。」
ドイムが胸に手を当てお辞儀をする。
「…あぁ。お前か。」
横を通り過ぎる時にカレルドが言う。
「あんまり調子乗ったこと言うなよ。」
“ん?なんの事?”
「申し訳ございませんでした。」
通りすぎたドイムの声が後ろから聞こえる。
後ろを振り返って見ると、目が合ったがすぐにそらされた。
“よくわからない人ね…”
そう思いながら前を向くと、カレルドと目が合った。
すぐに前を向き廊下を歩き続ける。
「お前は誰にでも愛想振りまきすぎるんだよ。大人しくしとけ。」
「え?愛想なんて振りまいてませんけど?」
「ったく。自覚がないのが余計に困るな。」
意味の分からないまま、私の部屋の前についた。
「部屋の前で待ち伏せなんて、気色悪いやつだな。」
私の部屋の前の壁に、もたれ掛かっているマルセルが居た。
「付きまとうって言っただろ?」
笑顔なマルセルが不気味だった。
「…こわっ」
小声だったが、思わず思った事が口から出た。
“やば。”
口を手で抑える。
目の前のカレルドには聞こえたのだろうか、フッと笑う声がした。
11
お気に入りに追加
191
あなたにおすすめの小説
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)
青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。
だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。
けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。
「なぜですか?」
「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」
イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの?
これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない)
因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

女官になるはずだった妃
夜空 筒
恋愛
女官になる。
そう聞いていたはずなのに。
あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。
しかし、皇帝のお迎えもなく
「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」
そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。
秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。
朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。
そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。
皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。
縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。
誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。
更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。
多分…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

虐げられた皇女は父の愛人とその娘に復讐する
ましゅぺちーの
恋愛
大陸一の大国ライドーン帝国の皇帝が崩御した。
その皇帝の子供である第一皇女シャーロットはこの時をずっと待っていた。
シャーロットの母親は今は亡き皇后陛下で皇帝とは政略結婚だった。
皇帝は皇后を蔑ろにし身分の低い女を愛妾として囲った。
やがてその愛妾には子供が生まれた。それが第二皇女プリシラである。
愛妾は皇帝の寵愛を笠に着てやりたい放題でプリシラも両親に甘やかされて我儘に育った。
今までは皇帝の寵愛があったからこそ好きにさせていたが、これからはそうもいかない。
シャーロットは愛妾とプリシラに対する復讐を実行に移す―
一部タイトルを変更しました。
傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。
石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。
そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。
新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。
初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、別サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
(完結)「君を愛することはない」と言われて……
青空一夏
恋愛
ずっと憧れていた方に嫁げることになった私は、夫となった男性から「君を愛することはない」と言われてしまった。それでも、彼に尽くして温かい家庭をつくるように心がければ、きっと愛してくださるはずだろうと思っていたのよ。ところが、彼には好きな方がいて忘れることができないようだったわ。私は彼を諦めて実家に帰ったほうが良いのかしら?
この物語は憧れていた男性の妻になったけれど冷たくされたお嬢様を守る戦闘侍女たちの活躍と、お嬢様の恋を描いた作品です。
主人公はお嬢様と3人の侍女かも。ヒーローの存在感増すようにがんばります! という感じで、それぞれの視点もあります。
以前書いたもののリメイク版です。多分、かなりストーリーが変わっていくと思うので、新しい作品としてお読みください。
※カクヨム。なろうにも時差投稿します。
※作者独自の世界です。

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる