記憶喪失の令嬢は皇太子に激執着される

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カレルドの腕を枕にし、ぐったりベットに横になってる私を後ろから抱く。

「大丈夫か?」
 私の髪を撫でながら言う。

「…大丈夫じゃないです。」

 ははっと笑う。

 目の前にはカレルドの大きな手が見える。
 小指につけられている、私と同じ指輪にふれる。

「ん?なんだ?」

「…言わないんじゃなかったのですか?」

「あぁ。予定ではそうだったか…我慢できなくなった。なんの牽制にもならないだろうが、スッキリしたからいいさ。」

 クスッと笑ってしまう。

「なんだよ?」

「あ、いえ。その大きな手に細い指輪は似合わないなって思って。」
 思ったことを正直にいう。

「ああ。指につける気はなかったからな。」
 指輪を外し私の手に渡す。

「指輪する気ないの作ったのですか?」

「まぁな。お前の普段使いが出来るのもで考えたから指輪しか思いつかなかった。
 ネックレスやピアスはドレスに合わせてかえるだろ?」

「そんな事考えてくれてたのですか?!」
 思わず後ろのカレルドを見る。

「ああ。だが指輪はどうも好きになれん。違和感と剣持つときに邪魔だ。小指なら邪魔にならないと思ったが、ダメだな。」

 上を向き、カレルドの指輪を指にはめてみる。

「ふふ。大きすぎて私の親指とぴったりです。」

「お前が細すぎるんだろ。」

 そう言うとカレルドが起き上がり、首にかかっていたチェーンを取る。

「ほら、返せ。」

 指輪を渡し、チェーンを通すカレルドを後ろから見る。
 少し空いているカーテンからみえる外はもう暗い。

「元からネックレスにすればいいのに…」
 ボソッと言ったらチラッと私を見て言う。

「…お前と同じのがよかった。そんな事言わせるな。」

 顔が火照ってくる。

「あぁ。そういえば…」

 カレルドがサイドテーブルの引き出しを開け何かを取り出し、私の前に出す。

 それは金色の鍵だった。

 身体をシーツで隠しながら起き上がる。

「私の机の鍵…」

「どうせコレのことも思い出したんだろ?」

 コクリと頷く。

 シャンドリ邸に行く前にカレルドに私が渡した。

 もし。私がお母さんと同じように失踪したり、何かあったら、引き出しに入っているものを燃やしてほしい。と。
 何が起こるかわからなかったからそう言ったんだった。

「返してやってもいいが。約束しろ。」
 ニヤリと笑うカレルドにムッとする。

「な、何をですか?」

「今後、マルセルと2人になるような事があったらすぐに呼べ。」

 頷く。

「あと。俺の誕生パーティとお前の誕生パーティは俺と出ろ。」

「わかりました。」

 カレルドに鍵を返してもらう。

 “ずっと探していた鍵。やっと見つけた。”

「わ、私!部屋に戻ります!」

 鍵と小袋を握りしめカレルドに取られた服を取る。

「おい、待て。」
 腕を掴まれる。

「な、何ですか?」

「俺も行く。」

「え?!」

「どこかしらで、アイツが待ち伏せしてそうだからな。」

 ダルそうに服を着ていくカレルド。
 私もコソコソと服を着る。

「そんなコソコソ着なくても良いだろう?
 もう全部見た。」

 耳元で囁かれる。

「も、もう着たんですか!?」
 耳を抑えながら言う。

「ああ。女は大変だな。」






 2人でカレルドの部屋を出る。

 すっかり暗くなってしまった外を見ながらカレルドと廊下を歩く。

 “ニーナとエマは心配してるだろうな…”

 そんな事を思っていると、先に歩いていたカレルドが立ち止まる。

 廊下の曲がり角でマルセルの側近のドイムに会ったのだった。

「失礼しました。カレルド殿下。」
 ドイムが胸に手を当てお辞儀をする。

「…あぁ。お前か。」

 横を通り過ぎる時にカレルドが言う。

「あんまり調子乗ったこと言うなよ。」

 “ん?なんの事?”

「申し訳ございませんでした。」
 通りすぎたドイムの声が後ろから聞こえる。

 後ろを振り返って見ると、目が合ったがすぐにそらされた。

 “よくわからない人ね…”

 そう思いながら前を向くと、カレルドと目が合った。
 すぐに前を向き廊下を歩き続ける。
「お前は誰にでも愛想振りまきすぎるんだよ。大人しくしとけ。」

「え?愛想なんて振りまいてませんけど?」

「ったく。自覚がないのが余計に困るな。」

 意味の分からないまま、私の部屋の前についた。
「部屋の前で待ち伏せなんて、気色悪いやつだな。」
 私の部屋の前の壁に、もたれ掛かっているマルセルが居た。

「付きまとうって言っただろ?」
 笑顔なマルセルが不気味だった。

「…こわっ」
 小声だったが、思わず思った事が口から出た。

 “やば。”
 口を手で抑える。

 目の前のカレルドには聞こえたのだろうか、フッと笑う声がした。
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