上 下
66 / 191

しおりを挟む
 



カレルドの腕を枕にし、ぐったりベットに横になってる私を後ろから抱く。

「大丈夫か?」
 私の髪を撫でながら言う。

「…大丈夫じゃないです。」

 ははっと笑う。

 目の前にはカレルドの大きな手が見える。
 小指につけられている、私と同じ指輪にふれる。

「ん?なんだ?」

「…言わないんじゃなかったのですか?」

「あぁ。予定ではそうだったか…我慢できなくなった。なんの牽制にもならないだろうが、スッキリしたからいいさ。」

 クスッと笑ってしまう。

「なんだよ?」

「あ、いえ。その大きな手に細い指輪は似合わないなって思って。」
 思ったことを正直にいう。

「ああ。指につける気はなかったからな。」
 指輪を外し私の手に渡す。

「指輪する気ないの作ったのですか?」

「まぁな。お前の普段使いが出来るのもで考えたから指輪しか思いつかなかった。
 ネックレスやピアスはドレスに合わせてかえるだろ?」

「そんな事考えてくれてたのですか?!」
 思わず後ろのカレルドを見る。

「ああ。だが指輪はどうも好きになれん。違和感と剣持つときに邪魔だ。小指なら邪魔にならないと思ったが、ダメだな。」

 上を向き、カレルドの指輪を指にはめてみる。

「ふふ。大きすぎて私の親指とぴったりです。」

「お前が細すぎるんだろ。」

 そう言うとカレルドが起き上がり、首にかかっていたチェーンを取る。

「ほら、返せ。」

 指輪を渡し、チェーンを通すカレルドを後ろから見る。
 少し空いているカーテンからみえる外はもう暗い。

「元からネックレスにすればいいのに…」
 ボソッと言ったらチラッと私を見て言う。

「…お前と同じのがよかった。そんな事言わせるな。」

 顔が火照ってくる。

「あぁ。そういえば…」

 カレルドがサイドテーブルの引き出しを開け何かを取り出し、私の前に出す。

 それは金色の鍵だった。

 身体をシーツで隠しながら起き上がる。

「私の机の鍵…」

「どうせコレのことも思い出したんだろ?」

 コクリと頷く。

 シャンドリ邸に行く前にカレルドに私が渡した。

 もし。私がお母さんと同じように失踪したり、何かあったら、引き出しに入っているものを燃やしてほしい。と。
 何が起こるかわからなかったからそう言ったんだった。

「返してやってもいいが。約束しろ。」
 ニヤリと笑うカレルドにムッとする。

「な、何をですか?」

「今後、マルセルと2人になるような事があったらすぐに呼べ。」

 頷く。

「あと。俺の誕生パーティとお前の誕生パーティは俺と出ろ。」

「わかりました。」

 カレルドに鍵を返してもらう。

 “ずっと探していた鍵。やっと見つけた。”

「わ、私!部屋に戻ります!」

 鍵と小袋を握りしめカレルドに取られた服を取る。

「おい、待て。」
 腕を掴まれる。

「な、何ですか?」

「俺も行く。」

「え?!」

「どこかしらで、アイツが待ち伏せしてそうだからな。」

 ダルそうに服を着ていくカレルド。
 私もコソコソと服を着る。

「そんなコソコソ着なくても良いだろう?
 もう全部見た。」

 耳元で囁かれる。

「も、もう着たんですか!?」
 耳を抑えながら言う。

「ああ。女は大変だな。」






 2人でカレルドの部屋を出る。

 すっかり暗くなってしまった外を見ながらカレルドと廊下を歩く。

 “ニーナとエマは心配してるだろうな…”

 そんな事を思っていると、先に歩いていたカレルドが立ち止まる。

 廊下の曲がり角でマルセルの側近のドイムに会ったのだった。

「失礼しました。カレルド殿下。」
 ドイムが胸に手を当てお辞儀をする。

「…あぁ。お前か。」

 横を通り過ぎる時にカレルドが言う。

「あんまり調子乗ったこと言うなよ。」

 “ん?なんの事?”

「申し訳ございませんでした。」
 通りすぎたドイムの声が後ろから聞こえる。

 後ろを振り返って見ると、目が合ったがすぐにそらされた。

 “よくわからない人ね…”

 そう思いながら前を向くと、カレルドと目が合った。
 すぐに前を向き廊下を歩き続ける。
「お前は誰にでも愛想振りまきすぎるんだよ。大人しくしとけ。」

「え?愛想なんて振りまいてませんけど?」

「ったく。自覚がないのが余計に困るな。」

 意味の分からないまま、私の部屋の前についた。
「部屋の前で待ち伏せなんて、気色悪いやつだな。」
 私の部屋の前の壁に、もたれ掛かっているマルセルが居た。

「付きまとうって言っただろ?」
 笑顔なマルセルが不気味だった。

「…こわっ」
 小声だったが、思わず思った事が口から出た。

 “やば。”
 口を手で抑える。

 目の前のカレルドには聞こえたのだろうか、フッと笑う声がした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」 成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。 「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」 ********************************************        ATTENTION ******************************************** *世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。 *いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。 *R-15は保険です。

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

貴方の事なんて大嫌い!

柊 月
恋愛
ティリアーナには想い人がいる。 しかし彼が彼女に向けた言葉は残酷だった。 これは不器用で素直じゃない2人の物語。

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

処理中です...