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嫉妬と我慢の限界

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 腰に手を回され、顎を持たれる。
 両手でマルセルの胸辺りを抑えるが意味はない。
 後には机があり逃げることは出来なかった。

「で、殿下…?」

「さすがに嫉妬するんだけど?」
 笑うが、真剣な眼差しはそのままだった。
 心臓が少しづつ鼓動を早まってくる。

「…もしかして、カレルドと付き合ってるの?」

 ドクン。心臓が跳ね上がる。
 黙っている私にキスをする。

 グッと腕に力を入れるがびくともしない。

 ゆっくりと唇が離れ言う。

「言っとくけど。
誰と付き合おうが、婚約しようが、結婚しようが…キミだけを愛しているし、付きまとうからね?」
 頬を赤く染めている私にいつもの笑顔を見せる。

 固まったままの私と、少し離れ手を引く。

「さぁ、陛下が待ってるよー!」
 いつものマルセルに戻る。

「え、ちょっと待って…」

 顔が赤いまま廊下に出て手を繋がれたまま歩く。

 その後ろからニーナと、エマがパタパタとついてくる。

 すると、カレルドが目の前に現れた。

「急いでるんだけど?」
 マルセルがカレルドを睨んだ。

 “な、何でこんな所にカレルドが!?”

 まだ火照る顔を上げると、カレルドと目が合う。

「なんで、お前はそんなに顔が赤いんだ?」
 私を睨んむ。

「関係ないだろ。」
 マルセルが私の目の前に立ち、カレルドからの目線を遮り私の手を引き横切り立ち去る。

 が。

 後ろから付いてくる…

「着いてくるなよ。」
 後ろを振り向きマルセルがまた睨むが、黙ったままだった。

 たくさんの皇宮の侍女らに目撃される。

 “また変な噂が…増えそうね…”

 手を引かれたまま、陛下の執務室についた。

 扉の前の護衛騎士を無視し、マルセルが扉をあけた。

「おお?なんだお前らまで揃って、私が呼んだのはアルヤ嬢だけだが?」

 机に向かい、仕事をしてたであろう陛下が言う。
 カレルドが扉を閉める音もする。

「すみません!陛下!私、勝手に…」
 私が、焦り陛下に謝罪しようとしたのをマルセルが遮る。
「聞かれて困るような話なのですか?」

「魔鉱石だったかもしれない物を見せてもらうだけだが、お前らはもう見たのだろ?」

 険悪な雰囲気が私達の間に流れるのを察したのか陛下は続ける。

「程々にしとかないと、本気で嫌われても知らんぞ。」

 カレルドはため息を付きながらまだマルセルに掴まれている私の手を奪い取る。

「いつまで持っている。俺のだ。」

 そこで一瞬でカレルドの手がキラッと光って見えた。
 “光った…?”

 手を奪い、私の後ろから抱きつく形になる。
「へ!?」

「まるで、アルヤを物のように言うな。」
 マルセルがカレルドを睨む。

 私の胸辺りで交差されているカレルドの腕を触れる。
「あ、あの、離してください…」

はははっと陛下が笑う。
「ほぉ、お前が1歩リードか。」

 “リード?”

 上を見上げカレルドに言うが、違う方向を向いて睨んでいる。
 その目線の先にはマルセルだ。

「勝手にやってろ。
 さぁ、アルヤ嬢。例のモノを見せてくれるかな?」
 陛下が椅子から立ち上がり、私達の前に立つ。

「は、はい。」
 前にいる陛下に、持ってきた小袋をカレルドの腕で制限されている腕を出来るだけ伸ばし渡す。

「開けても?」

「どうぞ。」

 そんな私と陛下との会話を無視し、カレルドとマルセルは睨み合ったままだった。

「え、えっと…?」
 何を言っても聞こえなさそうだった。

 “離してほしいんだけどな…”
 そう思い少し下を向く。
 すると、カレルドの指に光るものを見つける。

 “これ…!”

 バッとカレルドを見上げ直す。

 先に口を開いたのはマルセルだった。
「さっきアルヤにも言ったけど。
 誰と付き合おうが、婚約しようが、結婚しようが…アルヤだけを愛しているし、付きまとうからね」

 陛下がそれを聞き、黒く変色している石を眺めながら笑う。

「ははは。俺もロザリアに同じような事言ったな。」

 陛下の方を見て思う。
 “あの性格はあなた譲りですか!!?”

「陰険野郎どもめ。」

 ボソッとカレルドがつぶやく。

 すると扉がなる。
 と、同時に扉が開く。

「これでどうかしら!」
 皇后だった。

「あら!何で皆居る…の…」
 陛下の前に持ってきた紙を置く、皇后と目が合う。
 どんどん顔が熱くなる。

「中々、面白いことになっている様だよ。」
 陛下が笑う。

「あらぁ!だから最近アルヤ指輪してたのね!婚約までするの?」

 身体が火照りカレルドの腕の中で縮こまる。

「まだだ。」
 カレルドが淡白に言う。

「あら、婚約するから報告で来たのかと思ったけど違うの?」

「アイツがあまりにもコイツにちょっかいかけるから、我慢の限界だっただけだ。」
 カレルドはマルセルを見ながら言う。

「でもマルセルは、アルヤ嬢が誰と付き合おうが、婚約しようが、結婚しようが付きまとうらしいぞ。」
 眺めていた石を片付け言う陛下。

 マルセルと皇后が目を合わせる。

「あら、可愛いものじゃない。
 あなたは、『近づく男全てぶった斬る』だったじゃない!」

 “もっと上だった!カレルドタイプだった!
 …いや、逆か…”

「そうだったかー?」
 笑いながら私の前にきて小袋を返してくれる。
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