記憶喪失の令嬢は皇太子に激執着される

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問題児ロベルト2

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 地面に突っ伏していたロベルトは肩で息をしながら顔上げ、キッと私を睨む。

 皇后が近づいてきた。
「アルヤすごーい!一瞬だったわね!」
 知らずに、追い討ちをかける。

「ありがとうございます。」

「あら、だいぶ疲れてるのねー。」
 はぁはぁと、激しく息をするロベルトを見る。

「…それが弱点なのですね。」
 見下ろし言う。

「そうなの?」
 皇后がカレルドをみる。

「あぁ。持久力がない。だから考える事を止めてしまい、突っ込んで行き返り討ちに合う。」

「ふぅーん。」
 皇后が興味のなさそうな返事を返す。

 他の騎士団員たちも集まってきた。
 皆、皇后と私に挨拶をする。

 数少ない女性騎士2人が話しかけてくる。

「お怪我はありませんか!?」
「すごいです!ドレスなのに!サッと動かれてピシッと一瞬で剣を突きつけて!」

 一気に言われる。
「大丈夫よ。ありがとう。」

 他の男性騎士に抱えられるロベルト。

「負けたら俺の言う事を聞く約束だったな?」
 項垂れるロベルトの髪を掴み、無理矢理顔を上げさせカレルドが睨む。

「くそっ。」

「今言った通り、お前には持久力がない。
 明日から二週間。皇宮の敷地内を5周走れ。
 訓練参加はそれからだ。」

 “5周って…それで一日終わりそうだけど…”
 私には関係ないので黙っておく。

 カレルドは第二騎士団長と副団長を見る。

「「かしこまりました。」」
 2人から返事が聞こえた。

「あぁ。後、3週間後、新人騎士の遠征訓練が決まった。
 アルヤを馬車に乗せ本格的に護衛をしながらの遠征になる。
 コイツを乗せると言う事はわんさか盗賊やらが出てくるぞ。予測し訓練しろ。」
 カレルド言う事に団全員が答える。

「はい!」

「あら、アルヤも行くの?」
 皇后が聞いてくる。

「わ、私も初耳です。」
 苦笑いしてると、カレルドが来た。

「この前言っていた場所がわかった。確認も取れたし、許可も出た。連れて行ってやる。」

「え…もう?」

「あらー!お出掛け?良いわねー!
 お土産よろしくねっ」

 なぜか皇后がはしゃぐ。

 カレルドを見てお礼を言う。
「ありがとうございます…!」

「あぁ。その代わり訓練に付き合ってもらう。少し遠回りするがいいな?」

「は、はい!」
 少し汗ばみ、髪を手で払う。

「そんな首元まで隠すから暑いんだろ。」
 ニヤッと笑うカレルド。

「だ!誰のせいで!…もう嫌い!」
 顔を赤くし、プイっと顔をそむける。
 笑うカレルドが印象的だった。

「あら、何言ったのよ?」
 皇后が言うと横から声がした。

「ははは!コイツに嫌いだなんで言えるのはアルヤ嬢くらいだな!!」
 陛下だった。その少し後ろにはマルセルもいる。

「へ、陛下!?マルセル殿下まで!」

「アルヤ嬢見てたぞ!衰えておらぬな!」
 陛下に言われる。

 騎士たちは陛下達に気づくと一斉に膝をつく。
 私も挨拶をする。

 カレルドは舌打ちをする。

 陛下は軽く手をあげる。

 マルセルが私の前にきて持っていたままだった木剣を取り、カレルドに投げる。

「嫌いって事は俺のほうが好きって事で良いのかな?」
 私を引き寄せ腰に手を回して言う。

「へ!?」
 赤かった顔がさらに火照る。

「またやり合いたいのか?」
 カレルドが足元の木剣を拾う。

 マルセルを見て全力で首を横に振る。

「ははは。俺のアルヤが嫌がってるから辞めとくよ。」
 煽るマルセル。

「まぁ!良いわねぇ!昔を思い出すわねぇ、ロレンツォ?」
 皇后が陛下に言う。

「あぁ。あの時はホントに大変だったなぁ…
 次から次へとロザリア目当ての男が来てその度に小突いてたなぁ」

「やってたわね!」

 陛下と皇后の話を聞いてるといきなり手が引かれる。
「きゃ?!」

 マルセルから離れ次は、カレルドに抱き寄せられる。
「やらん。」
 顔がこれ以上になく赤くなる。

 マルセルとカレルドの間に火花が散る。

 すると誰かがボソッと言う。
「猛獣が主人を取り合ってる…」

 それを聞き、陛下と皇后が笑う。

 マルセルとカレルドは声のした方を睨みつけている。

「一生喋れないようにしてやろうか。」
 そうカレルドが言った先にはエノワールとドイムも居た。

 いつから居たのか分からない。
 “エノワールに言ったのかしら…?”

 マルセルも、同じ所を睨みつけている。

 チラッとドイムを見ると目が合い、すぐに逸らされた。

「あら、私は的確な表現だと思うわよ!」
 皇后が笑いながら庇う。

 聞いている騎士団の中から、笑いを誤魔化すような咳払いが聞こえる。

 フッと怖い顔をしていたマルセルが笑う。
「さぁ、アルヤはコレから俺と魔鉱石の訓練だ。こっちおいで。」
 マルセルが私に手を差し出す。

 “そうだったわね…”
 チラッとカレルドを見る。

 チっと舌打ちして手を離される。

「ほら、訓練に戻るぞ。おい、ロベルト。5周走ってこい。」

「はぁ!?明日からじゃねぇのかよ!!」

「うるせぇ。」

 カレルドとロベルト以外の騎士団は私達にお辞儀をし、訓練に戻っていく。

「あーあ。無茶振りが始まったね。」
 私の後ろに来てマルセルが言う。

「そうですね。」
 マルセルを見て笑う。

 すると陛下が近づいてきた。

「アルヤ嬢。終わったら例のモノを持って私の執務室においで。」

「かしこまりました。」
 “例のモノ…お母さんの小袋の事ね…”

「では、また。」
 陛下と、皇后は手を振り振り返り帰っていく。

 そんな両陛下の後ろ姿にお辞儀する。

「さぁ、俺達も行こうか。」
 もう一度差し出される手に、手を重ねる。
「はい。でもどちらに?」

「まぁ、ココでも良いんだけど…どこか違う所で座ってやろうか。」

「はい。」
 もう、見なくてもわかる。
 カレルドが睨んでいるのだろう。
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