記憶喪失の令嬢は皇太子に激執着される

文字の大きさ
上 下
56 / 220

記憶の夢2

しおりを挟む








「わかったよ。」
 嫌な顔ひとつせず、了承してくれた。

「先程…陛下から聞いた、手紙の返事がきて、私がシャンドリ邸に戻りたいと騒いだ日からの…夢でした。」

 一呼吸置きまた、話し出す。

「陛下に…母も、もしかして魔鉱石を持っていたのではないか、と聞かれて思い出したんです。

 母は、真っ赤な雫型のネックレスを2つ持っていたのです。直感的にあれだと思いました。

 1つは母が付けていたとしても、もう1つは部屋にあると思うと、確かめたくなり
 その場で陛下に、シャンドリ邸に戻りたいとお願いしたのですが、ダメでした。
 
諦めきれず、皇后様。マルセル殿下。カレルド殿下の所に行き、お願いしましたが全員に断られました。
 みなさんに同じ事言われました。
「昔の事を思い出す様な事はしなくていい。」と。」

 ここで話を区切りマルセルを見た。

「…うん。確かに言ったね。」

 やはりただの夢ではなく、記憶なのだと再認識し続きを話す。

「皆さんに断られ、落ち込み涙を流す私にマルセル殿下は声をかけてくれて…
反対の理由を丁寧に教えてくれましたね。
 昔の事の心配。魔獣の心配。悪人が私を狙っている心配。
 どうしてもと言うなら、そのネックレスを取ってきて下さるとまで言ってもらって…
 嬉しくて。
 でも、母の部屋のどこにあるか分からなくて頼めませんでしたが、
 こんなに心配させていた事に気づき、諦めてきたんです。」

 ここからはマルセルの話ではなくなる為黙ってしまった。

「どこも間違ってないし、アルヤが良ければ話を続けて欲しい。」
 マルセルは優しく言ってくれる。

 頷き、話を続ける事にした。

「諦めかけていた時、カレルド殿下から言われました。
『今すぐは無理だが、どうしても行きたいなら2月くらいなら連れて行けるかもしれない。』と。
 でも、マルセル殿下の言って下さった心配もあり、直ぐには返事はできませんでした。
が…
『雪が残る寒い時期なら、魔獣も危ない奴等も少ない。第二騎士団で囲み俺もついていく。
 昔の事についてはお前次第だが。覚悟があるなら説得してやる。』
 そう言われ、お願いする事にしたんです。」

「なるほどねぇ。それで陛下に許可をもらえた訳か。」

 マルセルを見て頷く。

「だいぶ渋ってられましたけど、何とか許可を頂くことができました。
 その時ですよね。私に魔鉱石の訓練をせよう。って話が出たのは…」

「そうそう。俺とカレルドが反対したんだ。
 特にカレルドが大反対してね。
『俺が力不足だと言いたいのか!』ってね」
 笑うマルセル。

「それは知りませんでした…
 そんな事が…」

「そう。まぁ結果は言わなくてもわかるよね。
 イレギュラーがあったとしても、アイツの失態なのは間違いないからね。」

「失態だなんてそんな…思ったことないですよ…」

「…。
 で、どうなったんだ?ネックレスは見つかったのかい?」

「…はい。
 数時間、母の部屋に1人で入らせてもらい、隠されてあったアクセサリー用の、小さな布袋を見つけました。
 袋を開け確認したところ。
 真っ赤だったネックレスは、真っ黒に変色し割れていました。
 その奥に、小さい紙を更に小さく折ってあった物があったこですが…
 ここまでで、後は白い世界が広がっていき、目が覚めました。」

「真っ黒になってたの?そしてその小さな紙、気になるね。」

「はい…」

「その布袋は…?」

「わかりません。お兄様とカレルド殿下が扉の前にいてくれて居たので、もしかしたらどちらかが持っているかもしれませんが…」

「それに関してはお兄さんかカレルドに聞くしかないね。
 …連れてこようか?カレルド。」

「え?!い、いえ、忙しそうですし!
 話す機会があれば聞きますから…」

「気になるでしょ?と、言うか俺が気になる。」
 そう言い立ち上がるマルセル

「え!?」

「直ぐ戻ってくるからね!」
 そう言い部屋を出て行った…

「なんか…双子って実感する行動ね…」
 思わず口にし、笑ってしまった。


 コンコン。
「お嬢様、ニーナです。」

「どうぞ。」

 ニーナがそっと入ってきた。
「大丈夫…ですか?」

「大丈夫よ。話してただけだから。
 今、マルセル殿下がカレルド殿下を呼びに行ったわ。もしかしたら来られるかもしれないわ。」

「え!?大丈夫なんですか!?」
 珍しく大きな声をだすニーナ。

 昨日のあの2人を見るとそう言う反応になるのは仕方ない。

「わからないけど、来たらお通しするしかないわ。暴れ出したら陛下を呼んできて頂戴。」

「もちろんです!」
 ふふっと笑う。

「お茶とかご用意した方がいいですか?」

「いえ、いいわ。必要になったら呼ぶわね。」
 “喧嘩になって投げられたら困るものね…”

「わかりました。廊下にいるので何かあったらすぐ呼んで下さいね!」

「ありがとう。」

 ニーナは部屋を出ていく。

 窓から外をみる。
 灰色の分厚い雲が広がっている。
 “雨でも降るのかしら。”

 そう思いながら待つ。




 数十分後。

 コンコン。
「お、お嬢様。マルセル殿下とカレルド殿下がお見えになりました。」
 ニーナの声が聞こえた。

 “本当に連れてきたのね…”
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

貴方にはもう何も期待しません〜夫は唯の同居人〜

きんのたまご
恋愛
夫に何かを期待するから裏切られた気持ちになるの。 もう期待しなければ裏切られる事も無い。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)

青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。 だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。 けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。 「なぜですか?」 「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」 イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの? これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない) 因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

女官になるはずだった妃

夜空 筒
恋愛
女官になる。 そう聞いていたはずなのに。 あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。 しかし、皇帝のお迎えもなく 「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」 そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。 秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。 朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。 そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。 皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。 縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。 誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。 更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。 多分…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

虐げられた皇女は父の愛人とその娘に復讐する

ましゅぺちーの
恋愛
大陸一の大国ライドーン帝国の皇帝が崩御した。 その皇帝の子供である第一皇女シャーロットはこの時をずっと待っていた。 シャーロットの母親は今は亡き皇后陛下で皇帝とは政略結婚だった。 皇帝は皇后を蔑ろにし身分の低い女を愛妾として囲った。 やがてその愛妾には子供が生まれた。それが第二皇女プリシラである。 愛妾は皇帝の寵愛を笠に着てやりたい放題でプリシラも両親に甘やかされて我儘に育った。 今までは皇帝の寵愛があったからこそ好きにさせていたが、これからはそうもいかない。 シャーロットは愛妾とプリシラに対する復讐を実行に移す― 一部タイトルを変更しました。

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

(完結)「君を愛することはない」と言われて……

青空一夏
恋愛
ずっと憧れていた方に嫁げることになった私は、夫となった男性から「君を愛することはない」と言われてしまった。それでも、彼に尽くして温かい家庭をつくるように心がければ、きっと愛してくださるはずだろうと思っていたのよ。ところが、彼には好きな方がいて忘れることができないようだったわ。私は彼を諦めて実家に帰ったほうが良いのかしら? この物語は憧れていた男性の妻になったけれど冷たくされたお嬢様を守る戦闘侍女たちの活躍と、お嬢様の恋を描いた作品です。 主人公はお嬢様と3人の侍女かも。ヒーローの存在感増すようにがんばります! という感じで、それぞれの視点もあります。 以前書いたもののリメイク版です。多分、かなりストーリーが変わっていくと思うので、新しい作品としてお読みください。 ※カクヨム。なろうにも時差投稿します。 ※作者独自の世界です。

処理中です...