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記憶の夢2

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「わかったよ。」
 嫌な顔ひとつせず、了承してくれた。

「先程…陛下から聞いた、手紙の返事がきて、私がシャンドリ邸に戻りたいと騒いだ日からの…夢でした。」

 一呼吸置きまた、話し出す。

「陛下に…母も、もしかして魔鉱石を持っていたのではないか、と聞かれて思い出したんです。

 母は、真っ赤な雫型のネックレスを2つ持っていたのです。直感的にあれだと思いました。

 1つは母が付けていたとしても、もう1つは部屋にあると思うと、確かめたくなり
 その場で陛下に、シャンドリ邸に戻りたいとお願いしたのですが、ダメでした。
 
諦めきれず、皇后様。マルセル殿下。カレルド殿下の所に行き、お願いしましたが全員に断られました。
 みなさんに同じ事言われました。
「昔の事を思い出す様な事はしなくていい。」と。」

 ここで話を区切りマルセルを見た。

「…うん。確かに言ったね。」

 やはりただの夢ではなく、記憶なのだと再認識し続きを話す。

「皆さんに断られ、落ち込んでいる私にマルセル殿下は声をかけてくれて…
反対の理由を丁寧に教えてくれましたね。
 昔の事の心配。魔獣の心配。悪人が私を狙っている心配。
 どうしてもと言うなら、そのネックレスを取ってきて下さるとまで言ってもらって…
 嬉しくて。
 でも、母の部屋のどこにあるか分からなくて頼めませんでしたが、
 こんなに心配させていた事に気づき、諦めてきたんです。」

 ここからはマルセルの話ではなくなる為黙ってしまった。

「どこも間違ってないし、アルヤが良ければ話を続けて欲しい。」
 マルセルは優しく言ってくれる。

 頷き、話を続ける事にした。

「諦めかけていた時、カレルド殿下から言われました。
『今すぐは無理だが、どうしても行きたいなら2月くらいなら連れて行けるかもしれない。』と。
 でも、マルセル殿下の言って下さった心配もあり、直ぐには返事はできませんでした。
が…
『雪が残る寒い時期なら、魔獣も危ない奴等も少ない。第二騎士団で囲み俺もついていく。
 昔の事についてはお前次第だが。覚悟があるなら説得してやる。』
 そう言われ、お願いする事にしたんです。」

「なるほどねぇ。それで陛下に許可をもらえた訳か。」

 マルセルを見て頷く。

「だいぶ渋ってられましたけど、何とか許可を頂くことができました。
 その時ですよね。私に魔鉱石の訓練をせよう。って話が出たのは…」

「そうそう。俺とカレルドが反対したんだ。
 特にカレルドが大反対してね。
『俺が力不足だと言いたいのか!』ってね」
 笑うマルセル。

「それは知りませんでした…
 そんな事が…」

「そう。まぁ結果は言わなくてもわかるよね。
 イレギュラーがあったとしても、アイツの失態なのは間違いないからね。」

「失態だなんてそんな…思ったことないですよ…」

「…。
 で、どうなったんだ?ネックレスは見つかったのかい?」

「…はい。
 数時間、母の部屋に1人で入らせてもらい、隠されてあったアクセサリー用の、小さな布袋を見つけました。
 袋を開け確認したところ。
 真っ赤だったネックレスは、真っ黒に変色し割れていました。
 その奥に、小さい紙を更に小さく折ってあった物があったこですが…
 ここまでで、後は白い世界が広がっていき、目が覚めました。」

「真っ黒になってたの?そしてその小さな紙、気になるね。」

「はい…」

「その布袋は…?」

「わかりません。お兄様とカレルド殿下が扉の前にいてくれて居たので、もしかしたらどちらかが持っているかもしれませんが…」

「それに関してはお兄さんかカレルドに聞くしかないね。
 …連れてこようか?カレルド。」

「え?!い、いえ、忙しそうですし!
 話す機会があれば聞きますから…」

「気になるでしょ?と、言うか俺が気になる。」
 そう言い立ち上がるマルセル

「え!?」

「直ぐ戻ってくるからね!」
 そう言い部屋を出て行った…

「なんか…双子って実感する行動ね…」
 思わず口にし、笑ってしまった。


 コンコン。
「お嬢様、ニーナです。」

「どうぞ。」

 ニーナがそっと入ってきた。
「大丈夫…ですか?」

「大丈夫よ。話してただけだから。
 今、マルセル殿下がカレルド殿下を呼びに行ったわ。もしかしたら来られるかもしれないわ。」

「え!?大丈夫なんですか!?」
 珍しく大きな声をだすニーナ。

 昨日のあの2人を見るとそう言う反応になるのは仕方ない。

「わからないけど、来たらお通しするしかないわ。暴れ出したら陛下を呼んできて頂戴。」

「もちろんです!」
 ふふっと笑う。

「お茶とかご用意した方がいいですか?」

「いえ、いいわ。必要になったら呼ぶわね。」
 “喧嘩になって投げられたら困るものね…”

「わかりました。廊下にいるので何かあったらすぐ呼んで下さいね!」

「ありがとう。」

 ニーナは部屋を出ていく。

 窓から外をみる。
 灰色の分厚い雲が広がっている。
 “雨でも降るのかしら。”

 そう思いながら待つ。




 数十分後。

 コンコン。
「お、お嬢様。マルセル殿下とカレルド殿下がお見えになりました。」
 ニーナの声が聞こえた。

 “本当に連れてきたのね…”
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