55 / 191
記憶の夢
しおりを挟む黙って何かを考えるカレルドに向かい、マルセルが言う。
「お前、無理矢理聞かせる事なかっただろう。」
「おい、やめんか。」
陛下の静止を聞く事なく、カレルドは言い返す。
「話す判断をしたのは親父だろ。それより…ちょっと待ってろ。」
そう言うとカレルドは扉を開け、外で待機していたニーナとエマを呼び戻ってくる。
2人はサッとお辞儀をする。
「今朝話した、玄関に置かれていたと言う木の実はいつまで続いたか、覚えてるか?」
カレルドが2人に質問する。
「何言っているんだ?」
そう言うマルセルを陛下が止めた。
「ちょっと待ちなさい。それは…私も気になる。」
訳のわからないマルセルと皇后は顔を見合わせる。
「木の実がいつまで、ですか…」
思い出そうとしている2人に、カレルドが言う。
「アルヤの母上が失踪する直前や、してからなくなったんじゃないのか?」
その言葉にニーナがハッと顔を上げ言う。
「そ、そうです!奥様が失踪なさってから、ありませんでした!」
「推測も入るが、ほぼ間違いないだろうな。」
カレルドがいい。陛下は黙って考え込む。
「おい、何の話だ。」
マルセルが言う。
「アルヤと母上は初代皇后と同じ国の血を継いでるのは間違いないだろう。
アルヤは俺の剣を薔薇にもしたのが証拠だ。
次に、アルヤの母上が魔鉱石を持っていたかもしれない。についても、持っていたと仮定すると話が繋がる。
前にも報告したが、
ラドラインが近い時、魔鉱石は赤く光る。
そして、ラドラインも魔鉱石を感じる事が出来る様だ。」
「なんで魔鉱石を感じる事が出来るってわかるんだよ。」
マルセルが言う。
「…昨日ラドラインが言っていたからな。
魔鉱石を感じた、まだ子供だったラドラインは気になり、アルヤが遊ぶ庭に入ってしまっていた。
同時にアルヤの母上も強力な魔獣がいるのを、魔鉱石で感じたはずだ。
人の形の魔獣が、娘と遊ぶんだ。
さらに家の周りをうろつき、玄関の前に木の実まで置いていく。恐怖だろう。
この辺は推測だが。
魔鉱石を使えば国の奴らに居場所がバレ、連れ戻されたとしても。
アルヤを守るため使わなければいけない状況になった。
現に、木の実は置かれなくなり、最近家に戻るまでアルヤ自身も、ラドラインに全く会う事もなかったようだしな。」
考えつつ陛下が言う。
「アルヤ嬢はシャンドリ邸で何かをし、その守ってくれていた力がなくなりラドラインに見つかり執着されている…と言う事か。」
頷きカレルドは言う。
「そう考えると辻褄があうし、なぜ今頃になってアルヤに執着しだしたか、も説明がつく。」
陛下も頷く。
「強引だが、納得はできるな。」
皆んな黙る。
この沈黙を破ったのは皇后だった。
「居場所がわかったって、ここから天使の国までかなら距離あるのよ?
行き来するだけでも難しいのに、そんな一瞬でアルヤの母上を連れて行ったのは無理があるんじゃ…」
これに説明したのもカレルドだった
「…普通の人間なら不可能だ。
だが、魔鉱石が絡むとそうじゃない。
魔鉱石の研究が進み、想像もできない事が出来たとしても不思議じゃない。
そうだとしたら
何の痕跡もなく、一瞬でいなくなったアルヤの母上の事も説明がつく。」
「魔鉱石で居場所がわかるってやつは!?私達だってつかってるじゃない!」
「まぁ、落ち着け。
あくまで推測だ。考えても仕方ないだろう。
とりあえず、ロイヤルナイトも騎士団も力を入れ直さないといけないな。」
陛下がため息をつく。
そしてニーナとエマを見て言う。
「今の話は他言無用だぞ?アルヤ嬢にもだ。この話は我々がしよう。」
「かしこまりました。」
2人はお辞儀をする。
目を開けると、横でマルセルが難しい顔をし本を読んでいた。
「…殿下?」
すぐに本を閉じ私に言う。
「おはよう。体調はどうだい?」
「まだ、身体が痛いですね…」
苦笑いする
「薬も飲んだし、もう耐えるしかないね。
アルヤを部屋まで送るように言われてるんだけど、歩けそうかい?」
そう言われ、身体を起こそうとするが激痛で止まる。
「ははっ無理なら無理って言えば良いのにぃ」
マルセルに笑われながら、助けてもらいやっと座れた。
「すみません…」
情けないし、恥ずかしいしで俯く。
「その様子じゃ歩くのは無理そうだね。
ちょっと待ってて。」
扉を開けニーナとエマを呼ぶ。
「お嬢様!よかった!」
エマが、私に飛びついて来そうな勢いで近づいてくる。
それをマルセルが止めてくれた。
「おっと。今アルヤは身体中激痛が走ってるから、飛びついたりすると可哀想だよ。」
エマの肩を持ちニコリと笑うマルセル。
「え!も、申し訳ございません!」
謝るエマにニコリと笑う。
「身体中激痛って…大丈夫なのでしょうか…」
心配するニーナに、マルセルが答える。
「大丈夫だよ。魔鉱石を使い過ぎた時になるやつだから。
でも、歩くのは難しいみたいだから俺が抱えるよ。部屋まで移動しようか。」
「「はい」」
2人は素早く部屋に戻る準備をし、医務室の扉を開けて待つ。
「よし、いくよー。」
そう言いヒョイっと軽々抱きかかえられ、医務室を出て廊下を歩く。
すれ違う皇宮の侍女らに、
きゃー!っと見られるのが凄く恥ずかしくて、思わず顔を手で覆う。
「はははっ顔真っ赤だよ?
なんだか遠回りしたくなるね」
「やめてくださいぃ~…」
笑うマルセルは、真っ直ぐ私の部屋までの廊下を歩く。
「で、さっきは最後まで聞いてたけど。
何か思い出せたかな?」
小声で聞いてくる。
「……はぃ。全て戻った訳ではありませんが。」
「凄いじゃないか!」
黙ってしまう私にマルセルは言う。
「大丈夫かい?俺でよければ話きくけど。」
「…お願い、出来ますか?」
チラッとマルセルの顔をみる。
予想外の答えだったのか。少し驚いた表情をしたが笑顔に戻る。
「もちろん。」
私の部屋の前に着き、ニーナが扉を開けてくれる。
ベットに座らせて貰う。
エマが背中にクッションを入れてくれた。
「ありがとう。…ちょっと殿下と2人にしてくれるかしら?」
2人に言う。
エマは少し驚いた表情を見せるが、ニーナがすぐに隠し言う。
「かしこまりました。」
そう言い部屋を出ていく。
「全く、カレルドだろ?俺と2人にするなっとか言ってるんだろ。昨日の護衛もそうだったし。」
ため息を吐くマルセル
「私は何も聞いてませんよ?やりそうですけど。」
ふふっと笑う。
「本当かい?
まぁ、良いさ。あまりにも酷くなったら、配置変えしてキミの護衛を全員俺の部下に変えてやるだけだ。」
椅子をベット横に置き座り、悪そうな笑顔をみせる。
「倍になって、やり返しされそうですね。」
「間違いないね!」
2人で笑い合う。
「よかった。聞いて欲しいなんて言うから、嫌なことでも思い出したのかと思ったよ。」
笑い終わるとマルセルがいつもの笑顔で言う。
「良い事でもないですが…
お忙しいのにすみません。」
「大丈夫だよ。今日は何もする気なかったからね。」
本当なのか、気を使ってくれたのか分からないがありがたかった。
「ありがとうございます。
…思い出したと言うかさっき夢をみたんです。」
「夢?」
「はい。お話するので、違ったら言ってください。」
「わかったよ。」
嫌な顔ひとつせず了承してくれた。
11
お気に入りに追加
191
あなたにおすすめの小説
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
あなたの嫉妬なんて知らない
abang
恋愛
「あなたが尻軽だとは知らなかったな」
「あ、そう。誰を信じるかは自由よ。じゃあ、終わりって事でいいのね」
「は……終わりだなんて、」
「こんな所にいらしたのね!お二人とも……皆探していましたよ……
"今日の主役が二人も抜けては"」
婚約パーティーの夜だった。
愛おしい恋人に「尻軽」だと身に覚えのない事で罵られたのは。
長年の恋人の言葉よりもあざとい秘書官の言葉を信頼する近頃の彼にどれほど傷ついただろう。
「はー、もういいわ」
皇帝という立場の恋人は、仕事仲間である優秀な秘書官を信頼していた。
彼女の言葉を信じて私に婚約パーティーの日に「尻軽」だと言った彼。
「公女様は、退屈な方ですね」そういって耳元で嘲笑った秘書官。
だから私は悪女になった。
「しつこいわね、見て分かんないの?貴方とは終わったの」
洗練された公女の所作に、恵まれた女性の魅力に、高貴な家門の名に、男女問わず皆が魅了される。
「貴女は、俺の婚約者だろう!」
「これを見ても?貴方の言ったとおり"尻軽"に振る舞ったのだけど、思いの他皆にモテているの。感謝するわ」
「ダリア!いい加減に……」
嫉妬に燃える皇帝はダリアの新しい恋を次々と邪魔して……?
【完結】捨てられ正妃は思い出す。
なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」
そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。
人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。
正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。
人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。
再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。
デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。
確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。
––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––
他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。
前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。
彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる