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記憶の夢
しおりを挟む黙って何かを考えるカレルドに向かい、マルセルが言う。
「お前、無理矢理聞かせる事なかっただろう。」
「おい、やめんか。」
陛下の静止を聞く事なく、カレルドは言い返す。
「話す判断をしたのは親父だろ。それより…ちょっと待ってろ。」
そう言うとカレルドは扉を開け、外で待機していたニーナとエマを呼び戻ってくる。
2人はサッとお辞儀をする。
「今朝話した、玄関に置かれていたと言う木の実はいつまで続いたか、覚えてるか?」
カレルドが2人に質問する。
「何言っているんだ?」
そう言うマルセルを陛下が止めた。
「ちょっと待ちなさい。それは…私も気になる。」
訳のわからないマルセルと皇后は顔を見合わせる。
「木の実がいつまで、ですか…」
思い出そうとしている2人に、カレルドが言う。
「アルヤの母上が失踪する直前や、してからなくなったんじゃないのか?」
その言葉にニーナがハッと顔を上げ言う。
「そ、そうです!奥様が失踪なさってから、ありませんでした!」
「推測も入るが、ほぼ間違いないだろうな。」
カレルドがいい。陛下は黙って考え込む。
「おい、何の話だ。」
マルセルが言う。
「アルヤと母上は初代皇后と同じ国の血を継いでるのは間違いないだろう。
アルヤは俺の剣を薔薇にもしたのが証拠だ。
次に、アルヤの母上が魔鉱石を持っていたかもしれない。についても、持っていたと仮定すると話が繋がる。
前にも報告したが、
ラドラインが近い時、魔鉱石は赤く光る。
そして、ラドラインも魔鉱石を感じる事が出来る様だ。」
「なんで魔鉱石を感じる事が出来るってわかるんだよ。」
マルセルが言う。
「…昨日ラドラインが言っていたからな。
魔鉱石を感じた、まだ子供だったラドラインは気になり、アルヤが遊ぶ庭に入ってしまっていた。
同時にアルヤの母上も強力な魔獣がいるのを、魔鉱石で感じたはずだ。
人の形の魔獣が、娘と遊ぶんだ。
さらに家の周りをうろつき、玄関の前に木の実まで置いていく。恐怖だろう。
この辺は推測だが。
魔鉱石を使えば国の奴らに居場所がバレ、連れ戻されたとしても。
アルヤを守るため使わなければいけない状況になった。
現に、木の実は置かれなくなり、最近家に戻るまでアルヤ自身も、ラドラインに全く会う事もなかったようだしな。」
考えつつ陛下が言う。
「アルヤ嬢はシャンドリ邸で何かをし、その守ってくれていた力がなくなりラドラインに見つかり執着されている…と言う事か。」
頷きカレルドは言う。
「そう考えると辻褄があうし、なぜ今頃になってアルヤに執着しだしたか、も説明がつく。」
陛下も頷く。
「強引だが、納得はできるな。」
皆んな黙る。
この沈黙を破ったのは皇后だった。
「居場所がわかったって、ここから天使の国までかなら距離あるのよ?
行き来するだけでも難しいのに、そんな一瞬でアルヤの母上を連れて行ったのは無理があるんじゃ…」
これに説明したのもカレルドだった
「…普通の人間なら不可能だ。
だが、魔鉱石が絡むとそうじゃない。
魔鉱石の研究が進み、想像もできない事が出来たとしても不思議じゃない。
そうだとしたら
何の痕跡もなく、一瞬でいなくなったアルヤの母上の事も説明がつく。」
「魔鉱石で居場所がわかるってやつは!?私達だってつかってるじゃない!」
「まぁ、落ち着け。
あくまで推測だ。考えても仕方ないだろう。
とりあえず、ロイヤルナイトも騎士団も力を入れ直さないといけないな。」
陛下がため息をつく。
そしてニーナとエマを見て言う。
「今の話は他言無用だぞ?アルヤ嬢にもだ。この話は我々がしよう。」
「かしこまりました。」
2人はお辞儀をする。
目を開けると、横でマルセルが難しい顔をし本を読んでいた。
「…殿下?」
すぐに本を閉じ私に言う。
「おはよう。体調はどうだい?」
「まだ、身体が痛いですね…」
苦笑いする
「薬も飲んだし、もう耐えるしかないね。
アルヤを部屋まで送るように言われてるんだけど、歩けそうかい?」
そう言われ、身体を起こそうとするが激痛で止まる。
「ははっ無理なら無理って言えば良いのにぃ」
マルセルに笑われながら、助けてもらいやっと座れた。
「すみません…」
情けないし、恥ずかしいしで俯く。
「その様子じゃ歩くのは無理そうだね。
ちょっと待ってて。」
扉を開けニーナとエマを呼ぶ。
「お嬢様!よかった!」
エマが、私に飛びついて来そうな勢いで近づいてくる。
それをマルセルが止めてくれた。
「おっと。今アルヤは身体中激痛が走ってるから、飛びついたりすると可哀想だよ。」
エマの肩を持ちニコリと笑うマルセル。
「え!も、申し訳ございません!」
謝るエマにニコリと笑う。
「身体中激痛って…大丈夫なのでしょうか…」
心配するニーナに、マルセルが答える。
「大丈夫だよ。魔鉱石を使い過ぎた時になるやつだから。
でも、歩くのは難しいみたいだから俺が抱えるよ。部屋まで移動しようか。」
「「はい」」
2人は素早く部屋に戻る準備をし、医務室の扉を開けて待つ。
「よし、いくよー。」
そう言いヒョイっと軽々抱きかかえられ、医務室を出て廊下を歩く。
すれ違う皇宮の侍女らに、
きゃー!っと見られるのが凄く恥ずかしくて、思わず顔を手で覆う。
「はははっ顔真っ赤だよ?
なんだか遠回りしたくなるね」
「やめてくださいぃ~…」
笑うマルセルは、真っ直ぐ私の部屋までの廊下を歩く。
「で、さっきは最後まで聞いてたけど。
何か思い出せたかな?」
小声で聞いてくる。
「……はぃ。全て戻った訳ではありませんが。」
「凄いじゃないか!」
黙ってしまう私にマルセルは言う。
「大丈夫かい?俺でよければ話きくけど。」
「…お願い、出来ますか?」
チラッとマルセルの顔をみる。
予想外の答えだったのか。少し驚いた表情をしたが笑顔に戻る。
「もちろん。」
私の部屋の前に着き、ニーナが扉を開けてくれる。
ベットに座らせて貰う。
エマが背中にクッションを入れてくれた。
「ありがとう。…ちょっと殿下と2人にしてくれるかしら?」
2人に言う。
エマは少し驚いた表情を見せるが、ニーナがすぐに隠し言う。
「かしこまりました。」
そう言い部屋を出ていく。
「全く、カレルドだろ?俺と2人にするなっとか言ってるんだろ。昨日の護衛もそうだったし。」
ため息を吐くマルセル
「私は何も聞いてませんよ?やりそうですけど。」
ふふっと笑う。
「本当かい?
まぁ、良いさ。あまりにも酷くなったら、配置変えしてキミの護衛を全員俺の部下に変えてやるだけだ。」
椅子をベット横に置き座り、悪そうな笑顔をみせる。
「倍になって、やり返しされそうですね。」
「間違いないね!」
2人で笑い合う。
「よかった。聞いて欲しいなんて言うから、嫌なことでも思い出したのかと思ったよ。」
笑い終わるとマルセルがいつもの笑顔で言う。
「良い事でもないですが…
お忙しいのにすみません。」
「大丈夫だよ。今日は何もする気なかったからね。」
本当なのか、気を使ってくれたのか分からないがありがたかった。
「ありがとうございます。
…思い出したと言うかさっき夢をみたんです。」
「夢?」
「はい。お話するので、違ったら言ってください。」
「わかったよ。」
嫌な顔ひとつせず了承してくれた。
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