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お母さん

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 目が開く。
 窓からの火の光が眩しかった。
 誰かの声がする。

 
 “ここは…医務室…?
 あぁ、私…倒れたのね。”

「やぁ。おはよう。」
 マルセルがベットの横の椅子に座っていた。
 優しく微笑むマルセルを見る。

「こうやって目を覚ますのは2度目ですね。」
 なぜこんな事を言ったのかはわからない。

「そうだね。大丈夫かい?」

「それが、身体中痛くて…」

「魔鉱石の使い過ぎだね。まぁ無理ないね。」
 ニコッと笑い、マルセルは後ろのカーテンを開ける。

 そこには、両陛下とカレルドが話していた。

「目を覚ましたよ。」
 マルセルが言うと、皆んな私のベットの周りを囲む。

「アルヤ!大丈夫!?」
 皇后が1番に言う。

「はい。身体中痛いですが大丈夫です。」

 マルセルが薬を準備する。
「アノルが鎮痛薬を置いて行ったから、コレを飲むと少しは楽になるよ。
 起き上がれるかい?」

「はい…」
 返事をし、身体に力を入れ起きあがろうとするが、なかなか起き上がれずマルセルに支えてもらいながら、何とか座る。

 薬を受け取り、プルプルする手で何とか口に薬を入れる。
 その様を見てマルセルは、コップにストローを刺し口元に持ってきてくれる。

 やっと薬を飲み込める。

「すみません…」

「いいんだよ。
 …その痛みは、魔鉱石の使い過ぎた時に起こるものだ。その様子じゃ、アルヤが剣を花に変えたって事で、間違えないんだろうね。」
 マルセルがチラッと陛下を見ながら言う。

「まず、無事でよかったよ。アルヤ…」
 安堵の表情を見せる陛下が続ける。

「マルセルから状況は聞いた。本当にキミだったとは。
 カレルドがまた変な事したのかと思ったぞ。」
 そう言い少し笑う。

「すみません、訓練を中止させてしまいましたよね…」

「大丈夫よ。いつでもできるからね。」

 私の足元の壁にもたれかかり、腕を組むカレルドを見ていう。

「殿下、すみません、あの、剣…」

「剣なんていくらでもある、気にするな。」
 思ったらより優しく返事が返ってきた。

「さて。さっき少し話していたのだが。
 アルヤ嬢がやった、剣を花びらに換えるのはアルヤ嬢の他に1人居たと、古い文献がある。」
 陛下が言う。

「1人ですか…」

「起きたばかりだが聞くかね?少し長いし、アルヤ嬢の話でもある。」

「お願いします!」

 私を見て微笑み
「わかった。お前らにも初めて話すものもある。」
 陛下はマルセルとカレルドを見て言う。


「アルヤ嬢のように物を違う物に換える、物質変化を使えたと記録が残っている者は、初代皇后だ。
 銀の髪を持つ異国からきた者。と書かれている。

 私達が持っている、この魔鉱石の原石を持ってきたのも、皇后だと言われている。
 その魔鉱石を使い、ドラゴンとの締結を手助けしたともな。
 ここまでは、先ほど話していた事だ。」

 皆頷く。
 陛下は私を見る。


「ここからの話は、私と記憶をなくす前のアルヤ嬢と話した内容だ。

『母の事を調べて欲しい。』と、
 2年くらい前に、アルヤ嬢にお願いされてね。

 私もアルヤ嬢の母上が失踪した事件に、多くの疑問があったんだ。
 出来るだけ調べる。と約束して、時間がある時に少しづつだが調べてはいた。

 が、前シャンドリ伯爵が数年、身を粉にしても何も手掛かりがなかったのだ。
 私も手掛かりは掴めなかった。

 諦めかけていた時に、ロザリアとアルヤ嬢の髪の話しになってね。
 そこで思い出したのが、
 今話した、初代皇后の事だった。」

 少し話す事を辞める陛下。

「銀髪だな。」
 カレルドが言う。

 頷く陛下。
「そう。髪を束ね、帽子などでよく隠していたが、アルヤ嬢の母上は銀髪だ。」

 ドクンっ。
 心臓が強く鼓動しだす。
「…はい。」

「君みたいな、ピンクの髪は見たことないから、そっちに目が行きがちだが、
 銀髪もかなり珍しい。
 初代皇后と同じ国の出身ではと、思った私はどうするか悩んだ。」

 ここで陛下は話をする止める。
「大丈夫かい?顔色がよくない。」
 皇后も気付き、私の背中をゆっくり撫でてくれる。

 心臓が痛いくらいに鼓動していた。
「大丈夫です。続けて下さい。お願いします…」
 どうしても聞きたかった。


「その国は、島国と言うこともあってか外部を嫌いで有名だ。
 内戦が長年続いていると言う噂も聞くし、直接行こうにも島国で難しかった、なんの関わりもないのだ、行けたとしても取り合ってもらえるとは思えなかったからな。」


「その国がどこにあるか、分かっている言い草だな。」
 カレルドが聞く。

「あぁ、それは偶然だが知っていた。
 唯一その国に行く船が出ていたのはロザリアの家がある街だったからな。」

陛下が黙ると皇后が話し出す。
「その国はイモルキ国と言ってね。
 私の街では、天使の国と呼ばれていたわ。
 たまーーーにその国から船が来てね、真っ白いローブを頭から深くかぶってくるの1回だけ、ローブからでた銀髪…と言うか白髪?を見た事あるわ。」

「何と言う偶然…」
 マルセルがつぶやく。

「それをアルヤ嬢に話、手紙に母上の情報を書いて送る事になった。
 だが、船便は出るのだが…
 たどり着けない事が多いらしく、同じ内容と、近況を少し書き月一で送る日々が続いたのが約一年半程前からだ。
 そして半年ほど前。返事がきたのだ。」

 ここで頭を殴られた様な頭痛が襲う。
 思い出せそうなのを頭痛が邪魔をする。
 前屈みでうずくまる。

「アルヤ!?やだ!凄い汗じゃない!」
 タオルで汗を拭いてくれる皇后。

「座ってなくていい!横になろう。」
 マルセルが軽く抱きかかえ、マルセルと陛下の方に体を向けベットに横になる。
「すみません…」
 マルセルと皇后に謝る。

 陛下が屈み私を見る。
「顔も真っ青じゃないか。ここまでにしよう。また話す場を設けるから。ね?」

 顔を横に振る。
「お願いします、続けて下さい…
 もう少しで何か思い出せそうなのです…」
 涙を流し、弱々しい声で言う。

 困った顔をする陛下に、カレルドが言う。
「続けてやれよ。中途半端で辞められる方が嫌だろう。」

 マルセルがカレルドを睨み何かを言おうとするのを陛下が止めた。

「来た手紙には、調査する。報告待て。の2行だった。
 この報告をアルヤ嬢にし行き、母上も魔鉱石を持っていたのではないかと話になってな。
 心当たりがあったのか、シャンドリ邸に行きたいと言い出し、カレルドと第二騎士団を連れて戻ったのさ。」

 かなり掻い摘んで陛下は話してくれた。

「ありがとう…ございます…」
 お礼を言い目を瞑る。

「アルヤ?」
 皇后が心配そうに覗き込む。

「大丈夫だ。眠ったようだからな。」
 陛下がそっと私の髪を撫でる。

「かわいそうにな。
 母上の失踪がなければ、前シャンドリ伯爵も狂う事なかっただろうし、金に困りアルヤを売る様な事は無かっただろうからな。」

「そうね。」
 皇后は持っているタオルで私の汗を拭く。





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