記憶喪失の令嬢は皇太子に激執着される

文字の大きさ
上 下
54 / 220

お母さん

しおりを挟む




 目が開く。
 窓からの火の光が眩しかった。
 誰かの声がする。

 
 “ここは…医務室…?
 あぁ、私…倒れたのね。”

「やぁ。おはよう。」
 マルセルがベットの横の椅子に座っていた。
 優しく微笑むマルセルを見る。

「こうやって目を覚ますのは2度目ですね。」
 なぜこんな事を言ったのかはわからない。

「そうだね。大丈夫かい?」

「それが、身体中痛くて…」

「魔鉱石の使い過ぎだね。まぁ無理ないね。」
 ニコッと笑い、マルセルは後ろのカーテンを開ける。

 そこには、両陛下とカレルドが話していた。

「目を覚ましたよ。」
 マルセルが言うと、皆んな私のベットの周りを囲む。

「アルヤ!大丈夫!?」
 皇后が1番に言う。

「はい。身体中痛いですが大丈夫です。」

 マルセルが薬を準備する。
「アノルが鎮痛薬を置いて行ったから、コレを飲むと少しは楽になるよ。
 起き上がれるかい?」

「はい…」
 返事をし、身体に力を入れ起きあがろうとするが、なかなか起き上がれずマルセルに支えてもらいながら、何とか座る。

 薬を受け取り、プルプルする手で何とか口に薬を入れる。
 その様を見てマルセルは、コップにストローを刺し口元に持ってきてくれる。

 やっと薬を飲み込める。

「すみません…」

「いいんだよ。
 …その痛みは、魔鉱石の使い過ぎた時に起こるものだ。その様子じゃ、アルヤが剣を花に変えたって事で、間違えないんだろうね。」
 マルセルがチラッと陛下を見ながら言う。

「まず、無事でよかったよ。アルヤ…」
 安堵の表情を見せる陛下が続ける。

「マルセルから状況は聞いた。本当にキミだったとは。
 カレルドがまた変な事したのかと思ったぞ。」
 そう言い少し笑う。

「すみません、訓練を中止させてしまいましたよね…」

「大丈夫よ。いつでもできるからね。」

 私の足元の壁にもたれかかり、腕を組むカレルドを見ていう。

「殿下、すみません、あの、剣…」

「剣なんていくらでもある、気にするな。」
 思ったらより優しく返事が返ってきた。

「さて。さっき少し話していたのだが。
 アルヤ嬢がやった、剣を花びらに換えるのはアルヤ嬢の他に1人居たと、古い文献がある。」
 陛下が言う。

「1人ですか…」

「起きたばかりだが聞くかね?少し長いし、アルヤ嬢の話でもある。」

「お願いします!」

 私を見て微笑み
「わかった。お前らにも初めて話すものもある。」
 陛下はマルセルとカレルドを見て言う。


「アルヤ嬢のように物を違う物に換える、物質変化を使えたと記録が残っている者は、初代皇后だ。
 銀の髪を持つ異国からきた者。と書かれている。

 私達が持っている、この魔鉱石の原石を持ってきたのも、皇后だと言われている。
 その魔鉱石を使い、ドラゴンとの締結を手助けしたともな。
 ここまでは、先ほど話していた事だ。」

 皆頷く。
 陛下は私を見る。


「ここからの話は、私と記憶をなくす前のアルヤ嬢と話した内容だ。

『母の事を調べて欲しい。』と、
 2年くらい前に、アルヤ嬢にお願いされてね。

 私もアルヤ嬢の母上が失踪した事件に、多くの疑問があったんだ。
 出来るだけ調べる。と約束して、時間がある時に少しづつだが調べてはいた。

 が、前シャンドリ伯爵が数年、身を粉にしても何も手掛かりがなかったのだ。
 私も手掛かりは掴めなかった。

 諦めかけていた時に、ロザリアとアルヤ嬢の髪の話しになってね。
 そこで思い出したのが、
 今話した、初代皇后の事だった。」

 少し話す事を辞める陛下。

「銀髪だな。」
 カレルドが言う。

 頷く陛下。
「そう。髪を束ね、帽子などでよく隠していたが、アルヤ嬢の母上は銀髪だ。」

 ドクンっ。
 心臓が強く鼓動しだす。
「…はい。」

「君みたいな、ピンクの髪は見たことないから、そっちに目が行きがちだが、
 銀髪もかなり珍しい。
 初代皇后と同じ国の出身ではと、思った私はどうするか悩んだ。」

 ここで陛下は話をする止める。
「大丈夫かい?顔色がよくない。」
 皇后も気付き、私の背中をゆっくり撫でてくれる。

 心臓が痛いくらいに鼓動していた。
「大丈夫です。続けて下さい。お願いします…」
 どうしても聞きたかった。


「その国は、島国と言うこともあってか外部を嫌いで有名だ。
 内戦が長年続いていると言う噂も聞くし、直接行こうにも島国で難しかった、なんの関わりもないのだ、行けたとしても取り合ってもらえるとは思えなかったからな。」


「その国がどこにあるか、分かっている言い草だな。」
 カレルドが聞く。

「あぁ、それは偶然だが知っていた。
 唯一その国に行く船が出ていたのはロザリアの家がある街だったからな。」

陛下が黙ると皇后が話し出す。
「その国はイモルキ国と言ってね。
 私の街では、天使の国と呼ばれていたわ。
 たまーーーにその国から船が来てね、真っ白いローブを頭から深くかぶってくるの1回だけ、ローブからでた銀髪…と言うか白髪?を見た事あるわ。」

「何と言う偶然…」
 マルセルがつぶやく。

「それをアルヤ嬢に話、手紙に母上の情報を書いて送る事になった。
 だが、船便は出るのだが…
 たどり着けない事が多いらしく、同じ内容と、近況を少し書き月一で送る日々が続いたのが約一年半程前からだ。
 そして半年ほど前。返事がきたのだ。」

 ここで頭を殴られた様な頭痛が襲う。
 思い出せそうなのを頭痛が邪魔をする。
 前屈みでうずくまる。

「アルヤ!?やだ!凄い汗じゃない!」
 タオルで汗を拭いてくれる皇后。

「座ってなくていい!横になろう。」
 マルセルが軽く抱きかかえ、マルセルと陛下の方に体を向けベットに横になる。
「すみません…」
 マルセルと皇后に謝る。

 陛下が屈み私を見る。
「顔も真っ青じゃないか。ここまでにしよう。また話す場を設けるから。ね?」

 顔を横に振る。
「お願いします、続けて下さい…
 もう少しで何か思い出せそうなのです…」
 涙を流し、弱々しい声で言う。

 困った顔をする陛下に、カレルドが言う。
「続けてやれよ。中途半端で辞められる方が嫌だろう。」

 マルセルがカレルドを睨み何かを言おうとするのを陛下が止めた。

「来た手紙には、調査する。報告待て。の2行だった。
 この報告をアルヤ嬢にし行き、母上も魔鉱石を持っていたのではないかと話になってな。
 心当たりがあったのか、シャンドリ邸に行きたいと言い出し、カレルドと第二騎士団を連れて戻ったのさ。」

 かなり掻い摘んで陛下は話してくれた。

「ありがとう…ございます…」
 お礼を言い目を瞑る。

「アルヤ?」
 皇后が心配そうに覗き込む。

「大丈夫だ。眠ったようだからな。」
 陛下がそっと私の髪を撫でる。

「かわいそうにな。
 母上の失踪がなければ、前シャンドリ伯爵も狂う事なかっただろうし、金に困りアルヤを売る様な事は無かっただろうからな。」

「そうね。」
 皇后は持っているタオルで私の汗を拭く。





しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)

青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。 だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。 けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。 「なぜですか?」 「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」 イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの? これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない) 因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

女官になるはずだった妃

夜空 筒
恋愛
女官になる。 そう聞いていたはずなのに。 あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。 しかし、皇帝のお迎えもなく 「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」 そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。 秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。 朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。 そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。 皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。 縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。 誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。 更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。 多分…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

虐げられた皇女は父の愛人とその娘に復讐する

ましゅぺちーの
恋愛
大陸一の大国ライドーン帝国の皇帝が崩御した。 その皇帝の子供である第一皇女シャーロットはこの時をずっと待っていた。 シャーロットの母親は今は亡き皇后陛下で皇帝とは政略結婚だった。 皇帝は皇后を蔑ろにし身分の低い女を愛妾として囲った。 やがてその愛妾には子供が生まれた。それが第二皇女プリシラである。 愛妾は皇帝の寵愛を笠に着てやりたい放題でプリシラも両親に甘やかされて我儘に育った。 今までは皇帝の寵愛があったからこそ好きにさせていたが、これからはそうもいかない。 シャーロットは愛妾とプリシラに対する復讐を実行に移す― 一部タイトルを変更しました。

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

(完結)「君を愛することはない」と言われて……

青空一夏
恋愛
ずっと憧れていた方に嫁げることになった私は、夫となった男性から「君を愛することはない」と言われてしまった。それでも、彼に尽くして温かい家庭をつくるように心がければ、きっと愛してくださるはずだろうと思っていたのよ。ところが、彼には好きな方がいて忘れることができないようだったわ。私は彼を諦めて実家に帰ったほうが良いのかしら? この物語は憧れていた男性の妻になったけれど冷たくされたお嬢様を守る戦闘侍女たちの活躍と、お嬢様の恋を描いた作品です。 主人公はお嬢様と3人の侍女かも。ヒーローの存在感増すようにがんばります! という感じで、それぞれの視点もあります。 以前書いたもののリメイク版です。多分、かなりストーリーが変わっていくと思うので、新しい作品としてお読みください。 ※カクヨム。なろうにも時差投稿します。 ※作者独自の世界です。

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

処理中です...