52 / 191
カレルドと魔鉱石2
しおりを挟むカレルドは、私の後ろにきて小声で言う。
「大丈夫だ。指輪を光らせる時と同じだ。」
「そんな、簡単に言わないで下さい!」
「良いから、俺の言った通り思い浮かべれば良いんだ。やってみろ。」
「は、はい…」
観念してやってみる事にした。
「両手を前に出し、手で器を作れ。
目を瞑り、その手の中に水が溢れるところを想像しろ。さっき俺がした様にな。」
言われた通り目瞑り、想像する。
じわっとゆっくりだが冷たい水の感覚が手から伝わってくる。
「いいぞ。今度は、その溢れている水が玉になる所を想像しろ。1番近くで見たろ?」
昨日、カレルドと行った露店で、子供に披露していた光景を思い出す。
手から溢れていた水の感覚がなくなる。
いや、水にさえ触れていない気がする。
「いいぞ。ゆっくり目を開けろ。気を抜くなよ。」
目を開けると目の前に浮かんでいる水の玉があった。
おおおおー、と声がする。
「これ…」
ビックリしている私にカレルドは言う。
「出来たじゃないか。…よし。もう一度目瞑り想像してみろ。
下からゆっくり凍ってくるぞ。」
目を瞑り、想像する。
ゆっくり。氷の結晶が集まり固まっていく所を…
「いいぞ、目を開けてみろ。」
目の前には氷の塊が浮いていた。
ストンっと私の手のひらに落ちてきた。
「冷たい…」
「水に戻ることを想像すると戻るぞ。
濡れるから、やるなら気をつけろ。」
そう言われ、何となく腕を前に出し水に戻る事を想像する。
これも、昨日近くで見た。
するとパンっと音がし氷の塊が水になって私の手を濡らしている。
おおおー!と言う歓声と拍手が起こった。
「初めてでここまで出来るとはな。」
表情が一瞬、優しくなった。
「あ、ありがとうございます。」
自分がやっただなんて、理解できていない。
「アルヤ嬢すごいな!」
陛下が拍手しながら言ってきた。
「ありがとうございます。自分でも信じられません…」
困った顔で笑う。
「まずは先入観をなくす事だな。コイツにもできたんだ、出来ねぇとは言わせねぇからな」
騎士団長とロイヤルナイトを睨みつける。
「はい!」と返事をする騎士達。
「次!空を飛ぶのはどうしているの?
私もやりたーい!」
皇后が手を上げ言う。
黙るカレルド。
「ちょっと!なんで黙るのよ!!」
はぁーっと長いため息を吐きいった。
「力不足だ。」
「とにかく原理を言え。」
陛下が皇后を宥めながら言う
「原理ねぇ…」
そう言い周りを見渡す。
「エノワール!その侍女らをまだ下がられせ物陰で伏せていろ。」
カレルドがエノワールに指示をする。
すぐに私の侍女を連れて、遠くの物陰に隠れて手を振る。
「各自、自分の身は自分で守れよ。何が飛んでくるかわからんぞ。」
フッと笑うカレルド。
「お前は俺の横にいろ。」
グッと肩を抱かれたと思った瞬間とてつもない強風が皆を包む。
“竜巻!?”
思わずカレルドにしがみつく。
が、凄い音はしているのに風は一切当たらなかった。
風が私たちを避けて行くみたいに壁があった。
“コレもカレルドがやってるの?”
そう思った瞬間パッと風が止む。
「おい!何なんだ一体!」
陛下がカレルドに怒鳴る。
あたりを見ると木の枝や石、葉っぱが散乱していた。
「最低このくらいの風を操らなくては飛べない。」
ビックリしている私を見て、カレルドが笑う。
「俺はこのままでも構わないが、もう何も起こらないぞ?」
意味を一瞬で理解し、カレルドにしがみついていた手を離す。
「す、すみません!」
フッと笑いエノワールを呼ぶ。
「エノワール!もういいぞ!」
さっきの物陰から、ニーナとエマを連れ出して戻ってきた。
「あれだけの風が本当にいるのか!?」
陛下が言ってきた。
「あぁ、あの風を威力はそのまま凝縮させ、上に乗りコントロールできるなら空は飛べる。」
「そんな事毎回してたのですか!?」
驚きのあまりカレルドに聞く。
「いや、俺がやってるのはまた少し原理が違うが…今のを極めているから、出来ることだ。
コントロールが段違いに難しくなるからな。」
そんな事してたのか…
すげぇ…
などの騎士団長の声がする。
「やりたいなら教えなくもないが…」
そう言った瞬間、騎士団長とロイヤルナイトに囲まれ質問攻めに合うカレルド。
私は囲まれる前に、マルセルに腕を引っ張られて回避する。
「大丈夫かい?」
ニコリと、笑うマルセルに肩を掴まれる。
「は、はい。ありがとうございます」
そんな私を横目で見てイラついたのか、カレルドの回りにぶわっと一瞬強い風が吹いた。
「寄るな。」
騎士らがたじろぐ。
「まぁ、待て。」
陛下と、皇后も近づいてきた。
「先ほどの風が出来るのが条件なのだな?」
「あぁ。」
「出来る者。挙手せよ。」
騎士団長から2人。ロイヤルナイトからは全員。マルセルと陛下も手を上げる。
「挙手した者はコチラへ。後の者は戻るなり、自主練するなり見学もゆるす。
いいな?」
陛下はカレルドに聞く。
「あぁ。」
ぞろぞろと移動するロイヤルナイトを見て思った事を口にする
「ロイヤルナイト様達は全員なのね…」
「そりゃ、精鋭部隊だからね。力はあるさ。」
私の言葉にマルセルが言う。
12
お気に入りに追加
191
あなたにおすすめの小説
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
別れてくれない夫は、私を愛していない
abang
恋愛
「私と別れて下さい」
「嫌だ、君と別れる気はない」
誕生パーティー、結婚記念日、大切な約束の日まで……
彼の大切な幼馴染の「セレン」はいつも彼を連れ去ってしまう。
「ごめん、セレンが怪我をしたらしい」
「セレンが熱が出たと……」
そんなに大切ならば、彼女を妻にすれば良かったのでは?
ふと過ぎったその考えに私の妻としての限界に気付いた。
その日から始まる、私を愛さない夫と愛してるからこそ限界な妻の離婚攻防戦。
「あなた、お願いだから別れて頂戴」
「絶対に、別れない」
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか?
曽根原ツタ
恋愛
「クラウス様、あなたのことがお嫌いなんですって」
エルヴィアナと婚約者クラウスの仲はうまくいっていない。
最近、王女が一緒にいるのをよく見かけるようになったと思えば、とあるパーティーで王女から婚約者の本音を告げ口され、別れを決意する。更に、彼女とクラウスは想い合っているとか。
(王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは身を引くとしましょう。クラウス様)
しかし。破局寸前で想定外の事件が起き、エルヴィアナのことが嫌いなはずの彼の態度が豹変して……?
小説家になろう様でも更新中
貴方の愛人を屋敷に連れて来られても困ります。それより大事なお話がありますわ。
もふっとしたクリームパン
恋愛
「早速だけど、カレンに子供が出来たんだ」
隣に居る座ったままの栗色の髪と青い眼の女性を示し、ジャンは笑顔で勝手に話しだす。
「離れには子供部屋がないから、こっちの屋敷に移りたいんだ。部屋はたくさん空いてるんだろ? どうせだから、僕もカレンもこれからこの屋敷で暮らすよ」
三年間通った学園を無事に卒業して、辺境に帰ってきたディアナ・モンド。モンド辺境伯の娘である彼女の元に辺境伯の敷地内にある離れに住んでいたジャン・ボクスがやって来る。
ドレスは淑女の鎧、扇子は盾、言葉を剣にして。正々堂々と迎え入れて差し上げましょう。
妊娠した愛人を連れて私に会いに来た、無法者をね。
本編九話+オマケで完結します。*2021/06/30一部内容変更あり。カクヨム様でも投稿しています。
随時、誤字修正と読みやすさを求めて試行錯誤してますので行間など変更する場合があります。
拙い作品ですが、どうぞよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる