記憶喪失の令嬢は皇太子に激執着される

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「話しはわかった。
 だが、話して分かってもらえる相手ではないのだろ?」
 陛下はカレルドを見る。

「無理だろうな。」

「そうか…
 よし、アルヤ嬢。魔鉱石の訓練を受けないかい?」

 突然の提案にびっくりする。
「わ、私がですか?」

「多少使えれば、アルヤ嬢の身に何かあっても多少の抵抗にもなるだろう。
 ドラゴンだろうが、人間だろうがね。」

 陛下はチラッと皇后をみた。
「あら、私はずっと賛成だったわ。
 危ないとか言って反対したのはマルセルとカレルドよ?」

 陛下はマルセルとカレルドを見る。

「賛成だ。」
 カレルドがすぐに口を開く。

 はぁ。とため息をつきマルセルも言う。
「そう言う事なら賛成せざるを得ないな。」

 不安気な私を見て陛下は言う。
「そう不安がらなくていいよ。
 このバカ息子どもみたいな使い方しなくて良い、ちょっと相手の服でも燃やしてやるくらいでいいさ」
 そう言い笑う。

「そーよー!
 自分身を守るために皇后にも持たされるのだもの!側室にも持たせた前例もあるし、問題ないわ!」
 嬉しそうな皇后。

 断れる雰囲気でも、断る理由もなかった。

「よろしくお願いします。」
 頭を下げる。

 やったー!
 皇后が両手を上げて喜ぶ。

「早速だが今日の午後から、カレルドを問い詰める会を開くから、アルヤ嬢もおいで。
 代用の魔鉱石も準備するから少し使ってみるといい。」
 陛下がカレルドを見ながら言う。

「と、問い詰める会?ですか?」

「そう!氷を使える者は歴代の皇帝でも居たそうだが、空を飛ぶなんて者は居なかった。
 他にも何か隠してないか、やり方を言うまで問い詰める!」

 カレルドは舌打ちをする。

 ははははっと豪快に笑い立ち上がる陛下。

「よし!とりあえず解散だ。
 また後でな!」

 カレルドとエノワールが初めに出ていき次にマルセル、ドイム、第一騎士団長が出ていく。

「急に来たのにも関わらず、話を聞いていただき、ありがとうございました」
 お辞儀をし感謝を述べる。

「いや、良いんだ。
 それより良く思い出したな。かなり幼い頃の話しだろう?」
 陛下が言う。

「はい。6歳頃の話しですね」
 ニコリと笑い言う。
 すると扉が開き陛下を呼ぶ声がする。

「陛下、そろそろ。」

「はいはい。じゃ、アルヤ嬢また午後な。
 カレルドを迎えにやろう。逃げない様に捕まえといてくれ!」

 はははっと笑う陛下と皇后と一緒に執務室を出た。

 廊下でお辞儀をし見送る。


 顔をあげ後ろを振り返り2人に言う。
「戻りましょうか。」







 部屋に戻り2人に謝る。
「ごめんなさい。少しでも話して行くべきだったわね。」

「あ、いえ!びっくりはしましたけど大丈夫です!」
 エマが言う。
 ニーナも頷く。

「…聞きたいことがあるの。いいかしら?」

 ニーナが返事をする
「なんでしょうか?」

「…倒れる前の私ってどこにいたの?シャンドリ邸?」

 私の質問にニーナとエマが顔を見合わせる。

「その通りです。お嬢様はシャンドリ邸滞在中でした。」
 ニーナが答える。

「どうして行ったかわかる?」

 それに関してはニーナとエマは首を横に振った。
「用事があるとだけお聞きしておりました。
 カレルド殿下と、ご相談をされていましたし、第二騎士団が護衛で付き行かれたので…
 殿下なら…なにか知っているのかもしれません。」
 ニーナが引き続き説明する。


「そう…最後に一つ。
 皇宮この部屋で寝かされてたって何で?」

「シャンドリ邸から姿を消したお嬢様を、殿下が見つけて帰ってきました。
 が…もう意識はなく…
 そのまま殿下が馬で皇宮に帰られました。
 飛ばして近道をすれば半日だからと…」
 この質問にはエマが答える。

「半日!?馬車で3.4日はかかるのよ!?」

「私が体調を崩して皇宮に残っていたのですが…
 エマが殿下を送り出した時間が夕方の6時頃みたいで、私が殿下がお嬢様を連れて戻ってきたと、聞いたのが朝8時頃だったので本当に半日で到着されてます…日にちも間違いありません。」
 ニーナが言う。

「そ、そう…
 でも、殿下なら出来そうな気がするわね。」
 笑って見せると、2人も笑う。

 “カレルドと話さなきゃいけない事ができてしまった…”

 考えていると心配そうに2人が近づいてくる。

「大丈夫ですか?体調悪くなったりしてませんか?」
 ニーナが言う後ろでエマも困った顔をしている。

「ええ。大丈夫よ。
 午後まで時間があるわ。ゆっくりしてましょ。」






 昼食を終えて、執務室でカレルドを待つ。

 椅子に座り1番下の引き出しを眺める。

 鍵がかかっていて開かない引き出し。

 鍵のありかは全く見当もつかない…

 “壊してみようか…”とも思ったが流石にできなかった。

 “鍵ねぇ…一体どこに隠してあるのかしら…”

 引き出しの中は日記だ、1日1回。
 最低でも数日に1回は開けているだろうから、遠くに隠したり取りに行けないほどの難解な場所でもないだろう。

 “簡単に見つからずさらに、難解すぎない場所…”


 コンコン。
 扉がなり声がした。

「俺だ。」
 カレルドだ。
 すぐに扉が開けられる。

 明らかに不機嫌そうなカレルドの後ろにはエノワールもいた。

 挨拶をしようとすると断られる。
「しなくていい、さっさと行くぞ。」

「は、はい!」
 スタスタ歩くカレルドの後ろをついていく。

 “だいぶ機嫌が悪いようね…”
 そう思っているとエノワールが近づいてきて小声で教えてくれる。

「狩猟大会で引き取った、例の問題児が早速暴れて不機嫌なんです。
気にしないで下さいね。」

 聞こえたのだろうカレルドがチラッとこっちを見てエノワールを睨みすぐ前を向く。

「ったく、どいつもこいつも俺の邪魔しやがって…」
 悪態をつくカレルド。

 “それだけが原因じゃなさそうだけど、私にはどうする事もできないわね…”
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