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ミラとランス
しおりを挟む“それだ!!!”
そう思った瞬間、ラドラインのあの黄緑色に光る目を思い出す。
“会った事ある…1回。ニーナとエマがまだいない時に…”
立ち上がりニーナとエマに言う。
「急いで着替えて陛下に会いにいくわよ!」
事情を知っているニーナはすぐに動くが、何も知らせていないエマがは戸惑いながら着替えの準備をする。
“陛下の仕事が始まる前に行かないと。”
仕事中に割り込んでこの話をするのは陛下に失礼だと思った。
支度し、部屋を出て陛下達がいる部屋に向かう。
陛下の執務室が見えてきた。
扉の両脇に騎士2人にエノワールとドイムの姿も見えた。
4人が私に気づきお辞儀をする。
「そんなにお急ぎでどうされましたか?」
エノワールが聞いてきた。
「お約束はしていないのですが、陛下にお話がありまして…
既にお仕事中ですか?」
エノワールとドイムもいると言う事はカレルドとマルセルも執務室にいるのだろう、都合は良かった。
「あー…お仕事と言うか家族会議みたいな感じでして…」
歯切れの悪いエノワール。
すると。
『あの変態オヤジ!まだそんな事やっとるのか!!!!』
陛下の怒鳴り声が聞こえてくる。
ビクっとする私達に困った顔をするエノワール。
「えっと…出直した方が良さそうです…ね?」
苦笑いする私。
「いえ、急用でしょう?ご用件をお伺いしても?」
エノワールは昨日の事をある程度見ている、察する事ができる言葉を選ぶ。
「…昨日の応接室での事で。」
用件を聞き眉がピクリと動く。
「…それは急用ですね。わかりました。少しお待ちください。」
そう言いうと、扉の前に立ちノックをする。
「エノワールです。少しよろしいですか?」
「あぁ。」
カレルドの声だろうか、低い声が聞こえる。
執務室に入ったエノワールがすぐカレルドを連れて出てきた。
サッとお辞儀をする。
「何か思い出したか?」
「はい。ミラとランスが何なのか、エマのおかげで思い出しました。」
「いいだろう。来い。お前らも入れ。」
ニーナもエマも連れて執務室に入る。
お辞儀をし挨拶をする。
「ご挨拶申し上げます。朝早くに申し訳ございません。」
その後ろでニーナとエマもお辞儀をする。
「おー、アルヤ嬢。何も問題ないが、どうしたかな?」
自席に座っている陛下は、笑顔だが怖い顔をしている。
皇后、マルセル、第一騎士団長も部屋にいた様だ。
「ラドラインの言っていた『ミラとランス』について思い出したそうだ。」
カレルドが簡単に説明する。
皆動きをピタっと止める。
「おお、その話か。
ならば、第二騎士団長も連れてくるか?」
陛下がカレルドに言う。
「いや、早速問題児が暴れてるからな、後で話しとく。どちらかと言うとエノワールを入れたい。」
「じゃぁ、俺もドイムを。」
マルセルも手を上げて言う。
「良いだろう。」
第一騎士団長が扉を開けエノワールとドイムが部屋に入ってくる。
2人はサッとお辞儀をし、主人の横につく。
「アルヤ嬢の後ろの2人の1人は当事者だったな。」
陛下が私を見る。
それに関しては私が答える。
「はい。こちらの侍女が当事者になります。ニーナです。」
ニーナを陛下に見せる様に身体を寄せる。
深深とお辞儀をするニーナ。
「そして、こちらの侍女が思い出すきっかけを作ってくれた者のエマです。」
次はエマを陛下に見せる。
エマも深深とお辞儀をする。
「この2人にも聞いてほいしと考えておりますが、よろしいでしょうか?」
「キミがいいなら問題ないよ。」
陛下の許しを貰う。
まず、カレルドが簡単にラドラインの事を簡単に説明し昨日起きた事も説明する。
昨日の事を知らなかったであろうマルセル、第一騎士団長、ドイムが驚きをみせる。
特にエマは驚いているのが後ろからでも分かる。
皇后は陛下に聞いたのかあまり驚いていない様だった。
「そこでラドラインが言った
『ミラとランスのお父さんは僕で、アルヤはお母さん』の事を思い出しきたらしい。」
カレルドの説明が終わり、皆私を見る。
「はい。
侍女のエマが思い出してくれました。
『ミラとランス』と言うのは私が幼い頃持って回っていた2体の人形の事です。」
「人形の名をなぜラドラインが知っているのか?」
陛下が聞く。
「それは、私がシャンドリ伯爵の養女になって数ヶ月の頃まで遡ります。」
そう言うと、ふぅと息を吐き思い出しながら語る。
「当時の私は、1人でシャンドリ邸の庭で『ミラとランス』と言う名を付けていた人形で、おままごとをし遊んでました。
ある日いつもの様に、葉っぱや木の実など、使えそうな物を探しに裏庭などウロウロしてると、黄緑色に光目をした少年が立っていました。
庭だった事もあり怪しむ事なく、私は彼に一緒に遊ぼう。と誘ったのです。
『ミラとランスのお父さんはアナタで、お母さんは私ね』と。」
「その少年がラドラインで、
彼の中でまだ遊びが続いていると?」
陛下が腕を組みながら聞く。
「はい。私はそう考えてます。
会ったのはその一度だけです。
1人遊びを見兼ねたのか、すぐに遊び相手としてニーナが来て、またすぐにエマが来てくれ、遊んでいたので近づいて来なかったのだと思います。
が、周辺には居たのだと思います…」
そこで後ろのエマがボソッと言う。
「木の実…」
皆エマに目をやる。
「も、申し訳ございません!」
頭を下げて謝罪するエマに振り向き、肩をポンポンと叩き顔を上げさせ言う。
「そう。よく玄関の前に集めた記憶のない赤い木の実が盛られていたわよね。」
ニーナにも目をやる
両手で口を押さえて驚いている。
「その木の実はラドラインが集めた物だと?」
マルセルが言う。
「はい。
その少年と遊んだ時も集めたのです。
赤い木の実を。」
マルセルの方を向き説明する。
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