記憶喪失の令嬢は皇太子に激執着される

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夜の散歩2

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「皇帝になりたいから、アルヤに執着してると思った?」

 こくりと頷く…

「ははは。逆だよ。
 俺もカレルドも、皇帝になんて興味はなかった。
 でも、アルヤには興味があったんだ。
 そこに、あの2人は目をつけたんだよ。
 あと、娘も欲しがってたしね。
 そうそう、これが理由で殺し合いに発展したんだ。懐かしいなー」
 マルセルは笑う
 
 あの2人とは両陛下の事だろう。

「そう…だったんですね…」

「カレルドは、今どう思ってるかは知らないけどね。俺は昔と変わらずだ。」

 私に微笑む。

「まぁ一応、継承権第一位だからね。皇帝になるように教育も受けてきたし、支持する貴族もいるし圧力もある。
 うんざりもするけど、宿命でもあるからね。
 ならないとは言わないが、なりたいなんて思ったことないよ。」

「…私は」
 ここで黙る。
 私に、婚約者だと嘘をついた理由を聞きたかった。皇帝になりたいのだろうと自己完結していたが、違うらしい。

「どうした?」

「…いえ、忘れてください…」
 聞く勇気はなかった。

「気になるなー、眠れなくてなってしまうなー」
 冗談なのがわかる言い方をしながら、チラチラと私を見ながら笑うマルセル。

「…婚約をしていたと、言うのは皇帝になりたいからと…」

 全ては言えなかった。

「…言ったろ?口約束だったって。
 俺は。カレルドこそ皇帝になりたいのだと、思っているけどね。」

 すると、マルセルが立ち上がる。
「さぁ、噂をすればすーぐきたぞ。」

「え?」

 マルセルが見てる方に顔を向ける。
 降りてきた丘の上に、カレルドが立っていた。

「全く。監視されている様でいい気はしないねぇ」
 降りてくるカレルドを見ながらマルセルは言う。

 私も立ち上がりカレルドが降りてくるのを見る。

「一日中動き回ってるくせに、元気だな。」

 マルセルは歩いて近づいてきたカレルドにいう。

「鍛え方が違うからな。」

「そうだろうな。
 じゃぁ、カレルドきたし俺は戻るよ。
 すぐ喧嘩になるからね。
 今日はごめんね。また明日。」

「いえ。私こそ、いろいろ聞いて申し訳ございませんでした。」

 手を振りカレルドとすれ違い、階段を登って行った。

 カレルドが前に来て花を眺める
 怒られると思ったが何も言わない
「カレルド…?えっと…」

「綺麗だな。」

 思いもしない言葉がでてきて驚く。

「はい…まだ満開ではないそうですよ…」

「そうか。」

 “怒って…ない?”

「あの…」

「怒られると思うならホイホイ付いていくなよ。」

 “う…ごもっとも…”
「すみません…」

「まぁ、知らせがあったから今回は許してやる。
 良い気はしないが、大体見てたから何もないのは分かってる。
 負けた兄貴への配慮だ。」

 ふっと笑うカレルド。

 “嫌味ったらしいわね”
 だが、それもカレルドらしい。

「見てたってどこから…」

 カレルドは私の後ろの上の方を指差す
 そこには真新しい見張り塔があった。

「俺の隊が今日の見張りだからな。あそこにいたら、お前が窓を開けるのが見えてな。」

「そんな所から!?」

「あぁ。」

 少し強い冷たい風が吹く。
 髪を掻き上げるカレルドの仕草は綺麗だった。

 なんの脈略もなくマルセルにした同じ質問をする。

「カレルドは…皇帝になりたいのですか?」

 顔を歪ませ私をみる。

「は?」

「どうなのかなと思っただけです…」

「アホなとこ言ってないで部屋に戻るぞ」

 そう言いカレルドは歩き出す。
「はい。」
 後ろをついて歩く。

 “否定はしなかったって事は
 マルセル殿下が言ってた通り、皇帝になりたいのかな…”

 マルセルの様に否定して欲しかった自分がいる。

 いつの間にか私の後ろに護衛の方がついてきていた。


 一言も話さないまま、私の部屋の前につく。

「余計なとこ考えなくていいから、早く寝ろ」
 カレルドに言われ頷き言う。

「はい…おやすみなさい。」

「おやすみ。」

 去っていくカレルドの後ろ姿を少し眺めて護衛の方にも言う。

「おやすみなさい。」

 ビシっと敬礼をしてくれ部屋にはいる。

 布団に入り眼をつぶる。
 今度はすぐに寝付くことができた。






 朝。
 いつも通りニーナが起こしにきて、エマが持ってくる朝食を食べる。

 “…眠たい。夜更かししすぎた。”
 ボーッとしている私にエマが言う。

「どうしましたか?疲れが残ってますか?」

 “夜中部屋を出たなんて言ったら怒られそうね…”
「えぇ。そんな所よ。」

「昨日は色々ありましたし、仕方ないですよ。」
 紅茶を淹れてくれるニーナ。

「ありがとう。」
 “本当、昨日は色々あったわね…”

 飲みながら今日の私のドレスを準備するエマを見る。
 ここで、ラドラインが言っていた事を思い出す。

「ねぇ、エマ。
 ミラとランスって覚えてる?」

「ミラとランス、ですか?
 あー、何でしたっけ…懐かしい響きですね」

 “エマも覚えてないか…”
 そう思い紅茶を一口飲むとエマが言う。

「あ!お嬢様が幼い頃持ってた、お人形のお名前ですね!思い出してスッキリしましたー」

 バッとニーナと顔を見合わせる。











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