記憶喪失の令嬢は皇太子に激執着される

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夜の散歩

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 ゆっくり扉あけると、すぐに護衛の方と目が合う。

「どうされましたか?」

「あ、眠れなくて、少しお散歩したいのだけど…」

「わかりました、私もついて参ります。」
 まぁいいか。と思い
「お願いします。」
 と、言い廊下を歩く。

 外に出る扉に差し掛かる前に扉が開きマルセルが来る。

「やぁ。こんばんは。」

 護衛はピシッと背筋を伸ばし敬礼する。

 お辞儀をし「こんばんは」と、ニコリと笑う。

「俺の散歩に付き合ってもらえるかな?」

 やはり悲しげなマルセルは手を差し伸べる。


 黙ってその手に軽く触れると、ふわりと軽く手を握られる。

「君は戻っていいよ。」
 護衛に言うマルセル。

「で。ですが…」

 ハッキリしない言葉が帰ってくる。

「あぁ、カレルドに言われてるのか。
 じゃぁ着いてくるといい。少し遠めでお願いするよ。」

「かしこまりました。」

 マルセルと外に出る。
 深夜なのに月明かりで、十分周りが見える。

 遠慮し、少し下がって付いていく。

「夜更かしさんだね。」

 歩きながらチラッと私をみてすぐ前を向く

「なんだか、眠れなくて。」

「まぁ、そんな日もあるさ。」

「殿下はどうして、こんな時間に外に?」

「…俺は仕事終わりの散歩さ。」
 ははっと笑うマルセル。

「こんな時間までお仕事だったのですね、お疲れ様です。」

「ありがとう。ココを登った所に良いところがあるんだ。」

 斜面になっていることろに埋め込まれるように作られた階段をのぼる。

 先に登ったマルセルが言う

「やっぱり少し早かったかな。」

 私も登る。

 そこには広い草原に小さな青い花が一面に咲いていた。
「きれい…」

 思わず声に出る。

「ここは元々訓練所だったんだけど、少し丘になってたり時盤が弱くて、不向きでね…
 花でも埋めるかって話になって出来たところだよ。
 4、5年前くらいかな。」

「すごいですね。一面青い…」

「ネモフィラって言うんだ。
 まだ、みっちりと花が咲くよ。」

「え、まだ満開ではないのですか?」

「そうだよ。満開になれ空の青と溶け合う風景になる。
 たまに来てみればいいさ。」
 笑顔が戻ってくるマルセル

「そうさせて頂きますね。」
 笑い返す 

「…もっと近くに行こうか」

 マルセルは歩き始める。その後ろをついていく。

 花の近くにきてしゃがむ。

 “まだ蕾がある…本当にまだ満開じゃないんだ…”

 そう思っていると横にいたマルセルがどかっと座って大きなため息をつく。

「…今日はごめんね。…怖かっただろう」

 身体がぴくりと反応した
 立ち上がりマルセルと人一人分くらい離れて座る。

「そうですね…怖くなかったと言えば嘘になりますね。」
 マルセルの顔を見ずお花を見つめながら言う。

「全く、あんな挑発に乗ってしまった自分が情けないよ。」

 マルセルは私の髪に手を伸ばし、少しずらし首筋をみる。
「大分赤くなっちゃったね、ごめんね。」

「数日で消えますから、大丈夫です。」
 殿下は…お怪我はないのですか?」
 あの戦いを思い出しマルセルを見る

「大丈夫だよ。身体はバッキバキだけど怪我はない。」

 どこにも治療をした後がない。
 本当に怪我していないのだろう
 黙っているとマルセルが話し出す。

「…暗黙の了解みたいなものなんだよ。

 いつだったかな…
 今日みたいにやり合ったんだよ。
 お互い本気で殺す気でね。」

「え!?」
 思わず声が出てしまった。

 ははっと笑うマルセル
「結果はお互いぶっ倒れて終わり。
 2人してベットから3ヶ月は起き上がれなかったよ。
 皆んなから泣かれ、怒られてね
 特にアルヤ。君があまりにも泣いてね。
 さすがに、俺もカレルドも反省したよ。
 覚えてるかい?」

 ふふっと思い出したのか笑みが溢れた

 “…覚えてない”
 首を横に振。

「始める前に『殺すな』って言てただろ?
 あれはそこからきているんだ。
 そして、傷つけなければ殺さないしアルヤが泣かないと言う解釈になっていったのさ。
 それがなければ俺はとっくに死んでいるだろうな。」

「怖い事いわないで下さい…」

「ごめん、ごめん。」
 話の内容にそぐわない笑顔をみせる

「昔も今も、アルヤの事でカッとなり2人で喧嘩さ。
 図体ばかりデカくなって何も変わってない。
 ホント、情けない話だよ。
 まぁ、もう出来ないだろうね。力の差がありすぎた。」

 夜空を見上げるマルセル。

「マルセル殿下は…皇帝になりたいのですか?」

 思わずきいてしまった。

「皇帝?…あぁ、そういう事か。」
 マルセルが笑う




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