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夜空
しおりを挟むふらっと足が地面から離れる。
「じゃあな。」
カレルドはそう言い、私を抱えて高く飛ぶ。
狩猟大会が行われた森の上だ。
だいぶ高いところまで登ってきた。
遠くの街の明かりまで見える。
カレルドは私を立たせるように下ろし、クルッと私を回す。
「わ!」
「ほら、くるくるのご希望だぞ?」
「ここから見えるのでしょうか?」
「確かめてみようか?」
カレルドはパチンと指を鳴らすとまたキラキラっと降ってくる。
『わーーー!』と、声が聞こえた。
どうやら見えているようだ。
ふわっとカレルドがリードしてくれ私はただ合わせるだけ。
「純情。尊敬。私はあなたにふさわしい。
だったか。」
カレルドが言うが意味がわからなかった。
「なんですか??」
「宿題の答えだ。」
“そう言えば…白薔薇の花言葉を宿題にしてたわね…忘れてたわ”
「ええ。正解です。」
「それで?俺はお前にふさわしいのか?」
思わず笑う。
「ふふ。どうなんでしょうね。
でも、意外な一面もあって、優しい人なんだなって思いました。」
「俺がか?」
「はい。皆さんと話している時の殿下はとても穏やかで楽しそうで。
さっきの子らにも楽しい思い出を作ってあげてて、素敵でした。」
ニコリと笑うと、
カレルドに腕を引っ張られキスをされた。
「い、いきなり何でですか!」
「殿下って呼んだからお仕置きだ。」
「そんな!」
顔を赤くする私を笑うカレルド。
雲一つない夜空に月と星が満点と輝く中、二人のシルエットがくるくると回る。
「そろそろ降りるぞ。」
そう言い私を抱き上げる。
歩いてきた露店を下に、ゆっくりと壇上横に降りた。
わー!!っと歓声がわく。
恥ずかしいがニコリと笑っておく。
朝、マルセルと降りてきた階段をカレルドと登る。
ニーナとエノワールが、馬車の横で待っていて2人声を合わせて言う
「「おかえりなさいませ。」」
「俺はちょっとした片付けが残ってる。
エノワールに送らせるから先に帰ってろ。」
カレルドが私を馬車に乗せながら言う。
「わかりました。
露店、楽しかったです。ありがとうございました。」
「あぁ。」
ニーナも馬車に乗り込み、エノワールは馬の手綱を握る。
カレルドに手を振り別れた。
ニーナと話しながら馬車に揺られ、三人で部屋の前にきた。
「送ってくださりありがとうございます。」
エノワールに感謝を伝える。
「いえ、とんでもございません。
それでは、おやすみなさい。」
手を振りエノワールを見届けて部屋に入る。
「おかえりなさい!」
エマが出迎えてくれる。
「ただいま。」
「どうでしたか!!?」
エマが私とニーナを交互に見て聞いてくる。
「ええ、楽しかったわよ。」
私が言うとニーナが頷く。
「楽しかっただけ!?進展は!?」
キラキラした目でエマはニーナに聞く。
「何もないから!!もうやめて!」
顔を真っ赤にするニーナ。
そんな2人を見て笑う。
乙女3人。恋の話で盛り上がりながら就寝の支度をする。
カツン、カツン。
今はあまり使われなくなった離宮の端にある、昔からある見張り塔の地下に降りていくカレルド。
降りていくに連れて、大勢の男たちの声が響いてくる。
長い階段を一番下まで降りてきた。
階段の横にある椅子に座るのは、マルセルだ。
マルセルが率いる第一騎士も何人かいる。
「お疲れ」
カレルドが、マルセルに目を合わせはしないが言葉をかける。
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