45 / 217
夜空
しおりを挟むふらっと足が地面から離れる。
「じゃあな。」
カレルドはそう言い、私を抱えて高く飛ぶ。
狩猟大会が行われた森の上だ。
だいぶ高いところまで登ってきた。
遠くの街の明かりまで見える。
カレルドは私を立たせるように下ろし、クルッと私を回す。
「わ!」
「ほら、くるくるのご希望だぞ?」
「ここから見えるのでしょうか?」
「確かめてみようか?」
カレルドはパチンと指を鳴らすとまたキラキラっと降ってくる。
『わーーー!』と、声が聞こえた。
どうやら見えているようだ。
ふわっとカレルドがリードしてくれ私はただ合わせるだけ。
「純情。尊敬。私はあなたにふさわしい。
だったか。」
カレルドが言うが意味がわからなかった。
「なんですか??」
「宿題の答えだ。」
“そう言えば…白薔薇の花言葉を宿題にしてたわね…忘れてたわ”
「ええ。正解です。」
「それで?俺はお前にふさわしいのか?」
思わず笑う。
「ふふ。どうなんでしょうね。
でも、意外な一面もあって、優しい人なんだなって思いました。」
「俺がか?」
「はい。皆さんと話している時の殿下はとても穏やかで楽しそうで。
さっきの子らにも楽しい思い出を作ってあげてて、素敵でした。」
ニコリと笑うと、
カレルドに腕を引っ張られキスをされた。
「い、いきなり何でですか!」
「殿下って呼んだからお仕置きだ。」
「そんな!」
顔を赤くする私を笑うカレルド。
雲一つない夜空に月と星が満点と輝く中、二人のシルエットがくるくると回る。
「そろそろ降りるぞ。」
そう言い私を抱き上げる。
歩いてきた露店を下に、ゆっくりと壇上横に降りた。
わー!!っと歓声がわく。
恥ずかしいがニコリと笑っておく。
朝、マルセルと降りてきた階段をカレルドと登る。
ニーナとエノワールが、馬車の横で待っていて2人声を合わせて言う
「「おかえりなさいませ。」」
「俺はちょっとした片付けが残ってる。
エノワールに送らせるから先に帰ってろ。」
カレルドが私を馬車に乗せながら言う。
「わかりました。
露店、楽しかったです。ありがとうございました。」
「あぁ。」
ニーナも馬車に乗り込み、エノワールは馬の手綱を握る。
カレルドに手を振り別れた。
ニーナと話しながら馬車に揺られ、三人で部屋の前にきた。
「送ってくださりありがとうございます。」
エノワールに感謝を伝える。
「いえ、とんでもございません。
それでは、おやすみなさい。」
手を振りエノワールを見届けて部屋に入る。
「おかえりなさい!」
エマが出迎えてくれる。
「ただいま。」
「どうでしたか!!?」
エマが私とニーナを交互に見て聞いてくる。
「ええ、楽しかったわよ。」
私が言うとニーナが頷く。
「楽しかっただけ!?進展は!?」
キラキラした目でエマはニーナに聞く。
「何もないから!!もうやめて!」
顔を真っ赤にするニーナ。
そんな2人を見て笑う。
乙女3人。恋の話で盛り上がりながら就寝の支度をする。
カツン、カツン。
今はあまり使われなくなった離宮の端にある、昔からある見張り塔の地下に降りていくカレルド。
降りていくに連れて、大勢の男たちの声が響いてくる。
長い階段を一番下まで降りてきた。
階段の横にある椅子に座るのは、マルセルだ。
マルセルが率いる第一騎士も何人かいる。
「お疲れ」
カレルドが、マルセルに目を合わせはしないが言葉をかける。
11
お気に入りに追加
192
あなたにおすすめの小説

【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない
曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが──
「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」
戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。
そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……?
──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。
★小説家になろうさまでも公開中

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます
おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。
if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります)
※こちらの作品カクヨムにも掲載します


王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでのこと。
……やっぱり、ダメだったんだ。
周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間でもあった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表する。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放。そして、国外へと運ばれている途中に魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※毎週土曜日の18時+気ままに投稿中
※プロットなしで書いているので辻褄合わせの為に後から修正することがあります。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる