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狩猟大会終了

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 嬉しい事に私達にも歓声はあがった。

「すごいな、アルヤは人気者だな。嫉妬するなー」
 階段を降りながらヴェラスは言う。

「あら?お兄様もですよ?」

「そーかー?」

「ええ。耳を澄ませてみて下さい。」
 踊り場のところで足を止め、耳を澄ますヴェラス。

 確かに聞こえるお兄様への歓声。

 忙しくしている為出会いはないそうだが、殿下達に負けないほどの美男子だ。

「どうですか?」

「わからんな。」
 ハハっと笑い残りの階段を降りる。

 壇上へ戻り、陛下と后皇に手を振られる。
 サッとお辞儀をし席に座る。

 マルセルもカレルドも自分の席に座っている。

 閉会式まであと少しだ。







 夕日が空を赤くしていく中、閉会式が始まる。

 60名ほどの新人騎士たちは胸に小さなバッチをつけて、
 何を何匹狩ったかわかる様になっている。

 上位10名が、陛下に名を呼んでもらえる。
 さらに上位3名は、自分の言葉で入りたい部隊と思いを伝えられ、その場で合否がもらえる。
 基本上位3名は、余程の理由がない限り志願した部隊に入隊が決まる。
 残りの人たちも志願書はだせるが希望通りいくかはわからない。

 上位10名が陛下から名を呼ばれ、その都度歓喜が沸き上がる。

 続いて上位3名が前に出て、名と入りたい部隊の思いを告げていく。



「3位!シャンドリ領から来ました!
 アドムン、サルマンと申します!
 第二騎士団への入隊を希望します!
 カレルド殿下の剣捌きを幼い頃から何度か拝見し、憧れを抱いておりました!
 ご指導よろしくお願いします!!」

 “お兄様のところの人ね…”
 カレルドは軽く手を上げる。入隊許可の合図だ。


「二位!マルンラルク領から来ました!
 アフダナ、ラークと申します!
 第一騎士団への入隊を希望します!
 先程の美しい演武に感銘をうけました!
 ご指導よろしくお願いします!」

 マルセルはニコリと笑いながら軽く手を挙げる。入隊許可だ。


 次の一位の人も入隊が決まるのだろうと皆が思ってた。

「一位。領地はなし。
 カイン、ロベルトと申します。
 ロイヤルナイト入隊希望です。
 女に現を抜かしているような方々の下につく気はございません。」

 会場がざわめく。

 ロイヤルナイトは特別部隊。
 長年訓練を重ねて成果を出し認められてやっと資格を得るもの。
 新人が言ってどうにかなるものではない。

 陛下がどよめきを抑える。

「ほう。我が部隊に入りたいと?」
 陛下がその怖いもの知らずに言う。

「はい。ほかの奴らとは違う事は一文瞭然なはず。」

 “確かにバッチの量は二位の人と三倍ほどの差はあるけど…”

「貴様のような思い上がりはいらぬな。」
 陛下は怖い顔をし睨みつける。

 あまりの迫力に近くにいた新人騎士から
ヒッと、短い悲鳴が聞こえるが本人は陛下を睨み返している。

 “すごい人ね…”

「第一騎士団にやるぞ?どうだ?」
 マルセルに言うが
 首を横に振る。

「そうか、いらぬか。
 第二騎士団はどうだ?」

 断るだろうと思っているとカレルドも思いもしない行動にでる。

 立ち上がったと思ったら壇上から飛び降りその人へと歩みを進める。

 なんだなんだと騒めく。

 目の前まで行ったと思った瞬間。

 カレルドは、新人騎士の腰にかかっていた剣を抜き首元に突きつける。
 新人騎士も負けておらず、カレルドの剣を奪おうとしているところで止まっていた。

「甘い。」
 カレルドが言う。新人騎士はどこからか短剣を取り出し、カレルドの首を狙うが
 背で投げられ地面に倒され押さえつけられていた。

 参ったと短剣を離し両手のヒラを見せる。

 歓声が沸く

 抑えていた手を離しながら言う
「いいだろう。俺がしごいてやる。」

「お、第二騎士団だな!荒波に揉まれてこい!」
 陛下がハハハッと笑う

 カレルドは席に戻りどかっと座り、新人騎士は立ち上がり舌打ちをした。

 “あんな人を入れて大丈夫なのだろうか。”

 少し心配ではあるけど、強い人が入るのはいい事だろうと思う様にした。

 陛下が閉会の言葉を述べて波乱だらけの狩猟大会が幕をおろす。



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