記憶喪失の令嬢は皇太子に激執着される

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 壇上横に帰ってくると、エノワールがカレルドのマントを持って立っていた。

「お疲れ様でした。」

「ああ。」
 短い返事をしながら私のを降ろす。

「あれ、私いつのまにマントを離したんだろう…」
 本当に、記憶がない。
 “ずっと握りしめてたはずなのに…”

「ええ。ずっと握りしめていたと思っていたら殿下の元へ行く時にポイっと、なので拾っておきました」

 ニコニコと言うエノワール

 “そうだっけ?”

「持ってろって言っただろーが」
 カレルドが呆れた顔をして私のオデコをピンっと軽く弾いた

 オデコを押さえながら
「すみません。。。」

「ったく。」
 そう言いながら階段の方に歩くカレルド。

「シャワーを浴びてくる。また後でな。」
 振り返らず軽く手を上げ去っていくカレルドの後ろを、私に軽くお辞儀をしエノワールが付いていく。

 ここでニーナが追いついた。

「あれ?カレルド殿下は…」

「シャワーを浴びに行くそうよ。」

「あ、そうなのですね。
 お嬢さまはコレからどうされますか?」

「そうねぇ…」

 そう言い周りを見渡す。

 陛下と皇后は早速賭け金の精算を行うらしく盛り上がっている。

 “あの中には入りたくないわね…”
 と、思っているとマルセルが見えた。

 ドイムと少し会話をしている様だ。
 その様子を、見ていると視線を感じたのか目が合ってしまった。

 マルセルは少し気まずそうに笑顔を見せ軽く手を振った。

 私も笑顔を見せ軽く手をあげる。

 予想外の反応だったのだろうか、少し驚いて前を向き階段を、登っていく。
 マルセルも泥だらけだ。
 シャワーを浴びに行くのだろう。

「お嬢さま!」
 エマの声がした。
 皇宮の侍女を4人従えている。

「あら、どうしたの?」

「お嬢さまへのプレゼントをお部屋まで運ぼうと思いまして!
 生花もある様なので早めに!」

「そうなのね。私も行くわ。」
 ニコリと笑いみんなで移動する。

 すでに陛下と皇后のプレゼントは綺麗に片付けられていて何もなかった。

 1番目を引くあの巨大なプレゼント。
 蓋はすでに開き誰の仕業なのかも、わかっているから恐怖などはない。

「カレルド殿下の仕業だったのですね。」
 ニーナが誰が何を送ってきたかのリストを作りつつ話す

「そうね。風船なんて驚いたわ。
 殿下には、驚かせられぱなしね…」

 エマ達の作業を見守りながら私も何が届いているのか軽く確認する。

 ほぼ、すべてのプレゼントに綺麗な便箋が貼り付けられている。
 ”読むだけで日が暮れそうね…”

 運び終え、荷馬車2台分なった。

「でわ!運んできますね!」
 馬車に乗りエマが言う。

「ええ。お願いね、終わったら露店にでも行ってらしゃい。」

「ありがとうございます!
 今年はお土産、いりませんね!」
 ニヤニヤするエマに手を振り送りだす。

「全く、一言多いのだから…」
 ニーナが呆れていると声をかけられる。

「アルヤ。」

 振り向くとお兄様が立っていた。

「…お兄様?」

 長男のシャンドリ、ヴェラス

 若くしてシャンドリ伯爵の地位についたお兄様。

「やぁ久々だね。」
 笑顔なお兄様だが…
 何かが違う。

「お久しぶりです。
 セインお兄様はどちらに?」

 次男のセインは私兵を教育したり騎士団に、入隊するためのサポートをして兄弟2人で領を護っている。

「家だよ。騎士もここに集まっているから家を空けることは出来なくてね。」

「そうでしたか…
 ここでは何なので応接室にどうぞ。」

「そうだね。」

 離宮の応接室はお兄様がくる事を知った陛下が準備してくれた。

 歩きながら話す。

「大変だったね。大丈夫かい?」
 ニコリと笑うヴェラス

「ええ。でももう大丈夫です。」

 何ともない話をし応接室にお通しする。

「お茶の準備をお願い。」
 ニーナに指示する。

「ヴェラスお兄様、最近私がハマっているお菓子があるのです。持ってきますので少しお待ちくださいね。」

 有無も言わさずに部屋を出る。

 ニーナが待っていた。

「お、お嬢様…
 えっと…」

 言い渋るニーナ。
 私は人差し指を口元に持っていき静かに話す。

「大丈夫よ、分かってるわ。
 あれはお兄様じゃない…でしょ?」

 頷くニーナ。

「でも。どこからどう見ても伯爵様です…
 どう言う事なのでしょうか…」

「私にもわからないわ…」

 “新種の魔獣で人に変幻するのかもしれない…
 陛下に…いや、遠いわ、そこまで行く時間はない。”

 指輪を指で触れる。

 “疲れているだろうけど、カレルドを呼ぶしかない…”

 指輪を思い浮かべてカレルドを呼ぶ。

「お嬢様…?どうしますか…」

 不安そうなニーナ。
「とりあえず、お茶とお菓子を準備してきて。
 カレルド殿下がシャワーを浴びると言ってこの離宮に入られてたわ。探して呼んでくるから。」

 頷き急足で準備に向かうニーナを見送ると後ろから気配がした。

 ビクッとして後ろを振り向くとヴェラスお兄様が立っていた。

「どうしたんだい?」

「あ、いえ、あまり会えないヴェラスお兄様を1人にしてはいけないと思い…
ニーナにお菓子の場所を伝えてました…」

 苦し紛れの嘘を吐く。

「何してるんだ?」

 カレルドがさらに後ろからきた。

「カレルド殿下…」

 シャワー上がりだろうカレルドの髪はまだ湿っていて、シャツとズボン姿に剣を腰に刺している。
 きっと急いで来てくれたのだろう。

 私が言うとお兄様は胸に手をあてお辞儀をする。

「お兄様と…お話をする為に応接室をお借りしたので案内していたところです。」

 ヴェラスお兄様の姿をした得体の知れない人の事を、どうカレルドに伝えようか悩む

「なら入ったらどうだ。」

 カレルドが扉をあけた。

「ほら。」

 カレルドはヴェラスお兄様を凝視している。

「では。失礼して。」
 笑顔をみせ部屋に入る。

 すぐにカレルドに近寄り事情を知らせようとする。
「お、お兄様は…」
 震えて言葉が出てこない。

 カレルドは私の震える肩を抱き言う。
 チラッと見えたカレルドの耳につけられている魔鉱石が赤く光っている様に見えた。

「よく呼んだ。」


 そう言い私と一緒に部屋に入り扉を閉める。



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