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指輪
しおりを挟む「それは、宿題です!意味はご自身で調べてください!」
プイッとカレルドとは逆の方向に顔を向けた。
「はははは。」
大きな声で笑うカレルド。
「なっ!そんな笑わなくても!
私は一週間ずっと薔薇の意味を考えて…」
言い終わる前にカレルドが迫ってきて少し押し倒される形になった。
「いいだろう。この俺様が調べてきてやろう。」
ドクン。と心臓が一気に跳ね上がる。
カレルドはすぐに離れ立ち上がる。
「だいぶ話したな。
さぁ、質問タイムは終わりだ。
これからについて決めようじゃないか。」
「これから…?」
カレルドは私が座ってる前で片膝を折る。
しっかり私の目を見て言う
「俺はさっき言った通り。
お前をまだ恋人と思っている。」
恋人という単語に心臓がドクンドクンと音を立てる。
赤い瞳から目が離せない。
「記憶があろうと、なかろうと愛している。
だが、もしお前が今他の誰かの事を思いたいと言い、俺が邪魔ならば。別れてやる。」
愛と別れ。相反する言葉が並べられる。
「アルヤの思いを聞かせて欲しい。」
沈黙がながれる中、カレルドは微動だにせず私の目を見続けている。
「私は…誰を思うとか愛するとか。
正直わかりません…」
これが私の答えだった。
「私は皆んなと過ごした日々が思い出せません…
ですが、カレルドの手の感覚は…わかりました。
夢で離れたくたいと思うほどに…」
言葉に詰まる私に何も言う事なくじっと見つめられ続ける。
握っていたハンカチをさらに強く握り
一筋の涙が流れる。
「その感覚を…信じていいですよね?」
もう自分でも何言っているかわからなった。
カレルドは立ち上がり私の手を取り立ち上がらせる。
「あぁ。信じろ。
その感覚も、俺を一度選んだ記憶の無くなる前のお前をもな。」
カレルドの片手が一筋の涙がつたった頬に触れる。
もう片方の手を私の腰に回す。
顔がゆっくり近づいてきた。
避ける事なく受け入れ目を瞑る。
2人の唇が重なる。
唇が離れギュッと抱きしめられる。
耳元でカレルドが言う。
「お前が俺以外を選んだら。
そいつを殺すまでだがな。」
バッっと顔だけカレルドから離す。
「な、変な事言わないで下さい!」
「ちなみに、お前が逃げるのなら捕まえて俺の部屋にでも監禁する予定だった。」
無邪気に笑うカレルド。
「冗談ですよね?」
眉をひそめて聞く。
「さぁな。」
“私、やばい人と恋人になってしまったのでは…”
そう思っているとカレルドは言う。
「次だ。
明日のマルセルのエスコートの件だが。
お前は何もしなくていい。
胸糞悪いがアイツのエスコートで会場までくればいい。
あとは俺に任せろ」
「…は、はい」
”何をするかは聞かない方が良さそう…”
「そして、これは俺の想像だが。
今夜、マルセルが訪ねてくるだろう。
侍女等にも言ってでも絶対部屋の中に入れるな。」
「え、どうして…」
「俺といた所を見たんだ、キスする寸前の近距離でいた所をな。
俺ならその場で殴ってるが、あいつは人目を気にする。
来るなら今夜だろう。」
コクリと頷く。
はぁ。とため息をつき私の肩にかけているカレルドの上衣のポケットから小箱を取り出した。
「お前は押しにも弱いし、抵抗しても勝てないだろうなぁ。」
そう言い、私の目の前で小箱を開く。
金色の細いリングに小さいルビーとその左右にダイアが埋められている。
「これは…」
「お守りだ。
俺の魔鉱石の削りカスを詰め込んだものだ。」
「そんな事して良いのですか!?」
ビックリしていると嘲笑うかように返された。
「俺の物だ何をしようが関係ないね。」
リングを取り出し私の小指にはめる。
「ぴったり…」
小指にはめられた指輪を眺める。
「あぁ。寝てる間に測った。」
“サラッとすごい事言うのよねぇ…”
「俺のはコレだ。」
と、首元から長めのチェーンをだぐり寄せ。先に同じ指輪がかかっていてネックレスにしていた。
「指輪で作ったのにネックレスにするのですか?」
素朴な疑問だった。
「公表してないのに同じリングは付けれないからな。」
“それもそうね。”
「使い方を教えてやる。
目を潰れ。指輪を頭の中でイメージするんだ。」
言われた通りに目を瞑り指輪をイメージする。
「できたら俺の名を呼んでみろ。」
「…カレルド。」
すると。カレルドの指輪のルビー部分が光を放ちゆっくり消えて行った。
ビックリして言葉なかならない私とは反対にカレルドは笑う。
「おお、上等だ。
コッチまで光ったぞ。」
そう言いカレルドは髪を耳にかけつけているピアスを見せた。
赤みの強いオレンジ?と言うのだろうかほんのりまだ光っている。
「コレがおれの魔鉱石だ。」
反対側の耳もみせ言う。
「…今の私が?」
「ああ、そうだ。
何かあったらコレを使え。俺が駆けつける。
逆もできるぞ。ほら。」
そう言うと同時に私の指輪が光る。
「わぁ!」
「ふ。さぁ、そろそろ出てやらないとな。
1時間くらい前からエノワールが焚き火をしだした。」
「え!?」
外をみると暗くなり始めていた。
全く気づかなかった!
「大変!ニーナとエマが凍えちゃう!」
「その中にエノワールを入れてやらないと拗ねるぞ?」
冗談を言いながらカレルドが温室のドアをあけた。
「ニーナ!エマ!大丈夫?!」
温室を飛び出る。
「あ、お嬢様!」
ニーナが反応した。
3人は焚き火を囲み何かを食べていた。
「な、なにを食べてるの?」
唖然としているとエマが言う。
「焚き火でジャガイモを焼いてたんです!エノワール様の提案なんですー!」
ホクホクと美味しそうに食べるエマをみてると何も言えなかった。
「エノワール、暇つぶしをしてて良いとは言ったが何してるんだ。」
カレルドがエノワールに言う。
「お二人と話してて思いついたんですよー
殿下の突撃訪問のための準備でパンしか食べてなかったらしいので旬のジャガイモ焼こうってー!」
ほうばりながらカレルドに説明する。
“そう言えば昼食は軽く済ませたんだったわね。”
「美味しいですよ!
ホカホカで暖まるし!こんなに調味料も準備してます!」
エマが私とカレルドの分と二つジャガイモも持ってきた。
思わず受け取るとエマが指輪に気づく。
「あれ、お嬢様、指輪してましたっけ……」
自分で言い口にしたらダメな事だと気づきハッと息を飲んだ。
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