記憶喪失の令嬢は皇太子に激執着される

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お見舞いの花

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 廊下をマルセルと歩く。

「モテると大変ですね。」
 話を続ける。

「それは、アルヤでしょう?」

「私がですか?そんな事ないですよ」

「ダナンのあの真っ赤な顔、見なかった事にするつもりかい?」

 マルセルに言われ、さっきの真っ赤なダナンの顔を思いだす。
 思わずクスっと笑ってしまう。
「えぇ、見てませんもの?」

 はははっと笑うマルセル。
「可哀想なダナンだな。
 まぁ、俺には都合がいいけどね?」

 顔が熱を持つのがわかり俯いた。
 また、マルセルが笑う。

 “このままこの話はまずい…”
 話をかえる。

「そ、そういえば、演習を少し拝見しました。凄かったです。」

「ありがとう。
 声をかけてくれればいいのに。」

「いえ、邪魔になってはいけませんので、そのまま図書館に行きました。
 ロビィが嘆いてましたよ?」

 ばつが悪そうな表情をするマルセル
「だろうね。
 通達と声をかけましたが、あまり良い顔はしなかったし。
 今日はカレルドがいつもの場所を独占しててね。
 仕方なくあそこで許可を貰ったけど…」

 マルセルが、黙ってしまった。


 兵はいくつかのグループに別れている。
 ・皇帝陛下の直属のロイヤルナイト
 ・マルセル率いる第一騎士団
 ・カレルド率いる第二騎士団
 後は三騎士団から七騎士団が、ありそれぞれ役割が違う。



「後でお詫びの甘いものでも送っておこうかな。」
 ポリポリと頬をかきながら言う。

「それがよろしいでしょうね。」
 お菓子を頬張るロビィが想像でき笑う。

 そんな話をしていると私の部屋の前まできた。

 “ここまで付いてくるって事は私に用があるの?”

「お茶でも飲んで行かれますか?」

「ええ。そうさせて貰おうかな」
 ニコリと笑顔をみせるマルセル

 “その笑顔は卑怯ね…”

 エマが扉を開けてくれマルセルを、先に部屋に通す。

 扉の前でくるりと向き直し指示をする。
「ニーナは本を寝室に置いて少しお菓子の準備をお願い
 エマはお茶をお願い。」

「「かしこまりました。」」

 扉を閉めマルセルの方を向く。

 テーブルの上の薔薇を凝視しているようだ。
 一瞬だが見たことのない怖い顔になった。

「…どうされました?」
 恐る恐る聞く。

「いや。綺麗な薔薇だと思ってね。」
 ニコリといつもの笑顔になる。

 “…すごい顔してたくせに。”

「どうぞ、お掛けください。」
 マルセルをソファに誘導する。

 座ったのを見届けて私も座る。

「贈り物…だよね?」

 ”隠しとけばよかったかしら‥”

「ええ。カレルド殿下に頂きました。
 その白い小さいお花は皇后様から頂きました‥」

 ぴくっと反応し黙るマルセルから、殺気が溢れてくるのを感じた。

「意味があるそうですが、私にはわからなくて…ダメですね。」
 困った顔を見せると、殺気がすこし収まった気がする。

「この意味を調べる為に図書館に?」

「はい。ですが分かりませんでした。
 なので、お見舞いとして受けとっておこうと思います。」
 まだ意味は探す予定だが、ここはこう言わないと怖かった

 ”そんな殺気だてなくても…”

 マルセルを見ると心なしか表情が和らいだ気がする。

 ふぅーとため息をつき私が座ってる横に来て座る。

「殿下…?」

「…わがままかもしれないが。
 気軽に物を受け取らないでほしい。」

「え…」
 思わず声が出た。
 そんな私に笑ったのか笑顔を見せる

「全て断れとは言わないよ。
 でも、プレゼントには意味がある事が多いからね。
 受け取るだけで了承と取られるものもあるから。」

 マルセルの言ってる意味はわかる。
 返事をせずに居ると
 サラッと私の髪をとり口づけをする。


 コンコン。
「ミラディン ダナン様がお見えです。」
 扉横で護衛をしてくれている人の声だ。


「早速。意味のあるプレゼントかもしれないね。」
 笑顔だが笑っていない顔をするマルセル

「少し失礼しますね。」
 私は立ち上がり扉を少しあける。

「ダナン様?」
 すると目の前に色とりどりの花束が見えた。
 ゆっくりと扉を開きつつ上を見上げる。

 ダナンが色とりどりの少し大きめの花束を抱えて立っていた。

「アルヤお嬢様、先程は妹が失礼したね…
 寝込んでいたと聞いていたから…」

 途中で言葉を詰まらせるが花束を私に差し出してくる。

 “今、無闇に受け取るなと言われたばかりなのになぁ”

 少し後にさがりチラっと振り返りマルセルを見た。
 マルセルは足を組みコチラに手をかるくあげ言う。

「やぁ。」

「マルセル殿下!?」
 驚くダナン。
 “まぁ無理ないわね。”

「それはどういう意味の花束かな?」
 笑顔なのだがやはり笑っていない

「どういう意味と…
 あ!、いえ、寝込まれていたと聞いたのでお見舞いにと思い!!」

「ふーん。」

 “意外と意地悪なのね。”

 クスっと笑いダナンに向き直し言う。
「ダナン様、『お見舞い』のお花ありがとうございます。とてもキレイです。」
 お見舞いと言う言葉を強調し受け取る。

 “だいぶ大きいわね。”
 ズシッと重みを感じる。

 いつの間にか私の後ろにマルセルがきていて言う。

「ダナン。お見舞いの花にユリは使わないんだよ。」
 キッと怖い顔をして睨みつけるマルセル。

「も、申し訳ございませんでした!!
 失礼いたします!」


 そう言い急いで帰っていった。







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