記憶喪失の令嬢は皇太子に激執着される

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賭け

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「お疲れ様。」
 振り返りニーナもエマに言う。

「お嬢さまこそ!お疲れ様でした」

 私は座っていたソファにまた腰を落とした。

 両陛下と話すのはやはり緊張する。
 2人ともとても良い方々だ。
 幼いころから何回も会っている。
 魔獣の多いシャンドリ領を定期的に陛下が訪れていたからだ。

 皇后とマルセル、カレルドと来たこともある。
 その出会いで気にってもらえたのか、妃候補になった。

 事件がありすぐ駆けつけてくれ皇宮で保護を申し出てくれた。
 両陛下には恩が多い。
 だが、やはり緊張はする。

 昔の事をしみじみと覚えている事を思い出しているとニーナが片付けながら言う。

「妃教育のやり直しされるのですね…」

「ええ。思い出す確証もないもの。ジッとはしてられないわ。」
 そう。思い出せるかもわからないのに何も行動せず待って時間を浪費することは出来ない。


 スッと立ち上がり2人に言う。

「さ!昼食にしましょ。
 その後、図書館に行きたいの。ついて来てくれる?」

「はい!」
 と、2人は同時に返事をした。






 コツンコツン。
 ヒールの音が廊下に響き渡る。

「どうしてキミが持って行った花の名を『ベール』とだけ言ったのか教えてくれるのだろう?」

 腕を組み一緒にあるく皇后に陛下は聞いた。

「あら、間違ってはいなくてよ?」

 部屋に着き護衛を廊下に残して中に入る。


 パタン。
 扉が閉まる。

「そうだが、あの花は『ブライダル・ベール』だろ?」 

「ブライダルなんて口にしたらアルヤが萎縮してしまうでしょ?
 でも、私はあの花を送りたかったの!」

 ふふふっと皇后が陛下の首に腕を回す。
 陛下もそれを受け入れて皇后の腰に腕を回す。

「花言葉かい?」

「その通りですわ。」

 見つめ合いお互い合わせて言う。



「「あなたの幸せを願う。」」




 陛下が額をコツン。と皇后の額につける。

「ぴったりだな。」
 と、言いキスをする。

 スッと唇をはなし陛下が言う。 


「ロザリア。賭けをしよう。」
 皇后は笑う


「ふふ。良いわよ。ロレンツォ」

「どちらの息子がアルヤ嬢を手にするか。
 戴冠式の指揮権を賭けようじゃないか。」

「息子とアルヤを賭けに使うの?
 悪いお方ね。」

「嫌かい?」

 皇后は陛下に回していた腕をとり離れる。
「いいえ。楽しそう。」
 満面の笑みをみせる。

「私が言い出したのだから。
 キミが決めて良いよ。マルセル?カレルド?どちらにする?」

 んー。。。
 真剣にかんがえる皇后。
 しばし沈黙のあと言う。

「マルセルかしら。」

「ほう。理由を聞いても?」

「マルセルはこのまま黙っているタイプではないわ。
 何か仕掛けてるはずよ。
 それに、再教育でマルセルとアルヤは一緒に過ごす時間は増えてくるわ。
 カレルドは結局は不器用なのよね。」

 はははっと陛下が笑う。
「カレルドは薔薇を送ったのだぞ?
 記憶が失われたとて、深い仲だったのは間違いない。
 今度もカレルドが仲を深めていくと思うがね。」

「あら。それを黙って見ている子ではないと言っているのですよ。」

 2人の間に火花が散る。

 はははっ。

「良い勝負になりそうだ。な。皇后よ」


「ええ。陛下。」




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