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妃教育
しおりを挟む「いえ!マルセル殿下もカレルド殿下にも優しくして頂いておりますので…」
「本当ー?何かあったら言ってねー?」
皇后は心配そうに言う。
「もちろんです!」
“回避…できたなか?”
「私達が娘が欲しい。と言う理由でアルヤ嬢を息子のどちらかと、と言い出したんだ。
どちらも嫌なら相談しなさい。
その場合女帝で話を進めるから。」
真剣なのかおちょくっているのか分からない表情の陛下…
“女帝の話は終わってなかったか…。こうなったら話を変えるしかない!”
思い切って話しを変える。
「相談と言えばですね…お願いしたいことがあります。」
「なに!?何でも言って!追放する?」
サラッと怖いことを口にする皇后
「アルヤ嬢からのお願いとは珍しい。なにかな?」
陛下は置いてある小さなお菓子を取りながら言う。
「実は…妃教育をもう一度やり直したいのです。」
両陛下は顔を見合わせる。
「妃教育を?ずっと見ているけど作法は完璧よ?」
皇后様がキョトンとし言った。
陛下も賛同し言う。
「あぁ。出迎えてくれた時のお辞儀や紅茶を飲む仕草も申し分ないが?」
それを聞いて嬉しかった。
自信がなかったからだ。
「本当ですか?自信がなくて…」
肩をすくめて言う。
「ええ!完璧よ!アルヤは教育を受ける前からほぼ作法は出来ていたから、ココでもそんなに受けてないはずだしね!
だから自信を持って!」
皇后は言ってくれた。
「ありがとございます。」
すくめていた肩を戻し笑顔でお礼を言う。
子供の頃、お母さんとおままごとで遊びながら、何となく教わっていたのが役に立っていたのだ。
お母さんのようになりたい!と言う子供心を面倒がらずに何度も教えてくれたお母さんに感謝だ。
だが、それだけでは不十分なのだ。
「ですが、先程机にある歴史の本を見ましたが、やはり記憶になくて…」
「んー、確かに作法は身体が覚えているとしても座学はそうはいかんか。」
ソファの背にもたれ腕を組み陛下が言う。
難しいのはわかっていた。
再度授業を受け直しをすると言う事はそれなりの理由がいる。
だが、記憶がなくなったから再度授業受け直すなどは気軽に言えない。
言ってしまうと噂が広がる、と同時に利用しようと良からぬ事を考えているヤツが近づいてくるからだ。
「なら、私が教えましょうか?」
皇后様が紅茶を持ち上げながら言う。
カップに口をつけ紅茶を飲む皇后にみんなの視線が集まると。
「私とアルヤが部屋を行き来しても不自然ではないし、仲良しアピールもできて完璧じゃない?」
どうかしら?と皇后は輝かせる目を私に向けた。
“それ…ありなの?”と陛下に目をやると。
ガタン!
急に陛下が立ち上がる。
驚いていると思わぬ言葉が陛下から飛び出る。
「ズルイ!!!
私もアルヤ嬢と勉強会したい!」
“…はぃ?”
「あら?陛下がアルヤと2人で部屋にいるのは不自然でしょ?良からぬ噂がたったらどうするの?と、言うか時間ないでしょ?」
皇后はニコニコと煽るように陛下に
言う。
ぐぬぬ、と悔しそうに陛下は座った。
勝った。と顔をする皇后を私は見逃さなかった。
「いいでしょ?そうしましょ?」
皇后は私と陛下をチラチラと交互に見ながら言う。
「はぁ…わかったいいだろう。
だが!キミもやる事があるだろう!
マルセルとカレルドにも手伝わせる!私も時間が出来たら一緒に教える!
でどうだ!!」
「アノルにも来てもらいましょー!」
笑顔な皇后と深いため息をつく陛下。見事に両極端だ…
私をそっちのけで話が進んでいる…
「はぁ。そう言う事になりそうだが。
アルヤ嬢はそれでいいかい?」
陛下が私に問う。
“私から再教育を申し出たのだから嫌とは言えないわね。忙しいだろうに嬉しい提案だわ。”
私は立ち上がる。
「お忙しいのに私の為にありがとうございます。よろしくお願いいたします。」
スッとドレスの裾をつまみ深々と頭をさげた。
やった!っと手を合わせて嬉しそうな皇后
陛下が立ち上がり私に近づいてくる。
「顔をあげなさい。」
言われた通りに顔をあげ陛下の顔を見る為に上を見上げる。
皇后も立ち上がり私の方にくる。
「私達は、キミを本当の娘のように大事に思っている。
このくらい大した事ではないよ。」
陛下は皇后の肩を抱き寄せ言う。
「ありがとございます。」
心からの笑顔でお礼を言う。
「さぁ。だいぶ長い時間話してしまったね。
病み上がりなのにすまないね。
そろそろ行くよ。」
陛下は私の肩にポンと手を置き言う。
「授業の予定は後で知らせるわね!
楽しみねー!」
皇后はとても楽しそうだ。
「はい。わざわざありがとうございました。」
扉に向かう両陛下。
私も後に続く。
ニーナとエマが扉を開ける為にスタンバイする。
「あ、兄さん達に手紙を昨日送っておいた。
近々会いにくるかもしれないな」
陛下が振り向き言う。
「お兄様達にですか…お気遣いありがとうございます。」
「その事を言いに来たのに忘れる所だったよ」
はははっと笑いながら扉の方に向き直す。
ニーナとエマが扉を開け廊下で待機していた両陛下の護衛が見える。
「またね!」
と、皇后がヒラヒラと手を振る。
ドレスの裾を持ち両陛下が入って来た時と同じようにお辞儀をして見送る。
パタン。
扉が閉められた。
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