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両陛下
しおりを挟む「そ、それは覚えていないわ…
なぜわざわざ2冊に分けたのかしら」
「それは私にも…一度聞いたことがありますが、秘密と言われてしまって。」
“日記が2冊…
なぜか、という疑問は置いておいて
その日記を見れば私が失った記憶が描かれているのね。
鍵を見つけなければいけないわね。”
考え込む私にエマが声をかける。
「お嬢さま?大丈夫ですか?気分が悪くなったり…」
「あ、大丈夫よ。ちょっと考え事してただけだから。
教えてくれてありがとう。」
ニコリと笑う。
コンコン。
エマが扉を開けにいく。
ニーナが台車を押しながら帰って来た。
「お待たせしました!これで準備万端です!」
台車にはティーポットとカップ。昼食前だからか軽く摘むくらいのお菓子が載っている。
「お疲れ様。」
「お嬢さま用に一応、白湯も準備しましたので言ってくださいね!」
「あら、ありがとう」
コンコン。
皆息を飲む
「両陛下がお見えです。」
外にいる護衛の声だ。
私は椅子から立ち上が扉の前へ。
両開きの扉の左右にニーナとエマが立つ。
ニーナが私をチラッと見て開けるタイミングを伺う。
ふぅー。と深呼吸をして頷く。
ニーナとエマが息を合わせて扉を同時にあける。
陛下、皇后の顔が見える。
ニーナとエマは扉の横でお辞儀をする。
サッと両手でドレスの裾をつまみ、軽く持ち上げる。
膝を深く曲げ、腰を曲げて頭を深々と下げ言う。
「皇帝陛下、皇后陛下にご挨拶申し上げます。」
両陛下が部屋に入って来る。
「やぁ、アルヤ嬢。体調はどうかな?」
陛下が言う。
スッと顔をあげ笑顔で答える。
「お心遣いありがとうございます。ご心配おかけしました。もう大丈夫でございます。」
ニーナとエマがゆっくりと扉を閉める。
「急に来て申し訳ないね。特にロザリアが。」
陛下が皇后を見ながら言った。
ロザリアは皇后の名前だ。
「アルヤごめんなさいね。」
皇后が言う。
今朝の事を言っているのだろう。
「いえ。心配して来てくださったのですから嬉しかったです。」
ニコリと陛下と皇后とを見ると、少し拗ねているように見えた皇后に笑顔がみえる。
「どうぞ、お座りください。」
と、ソファに誘導する。
「ありがとう。」
陛下がソファの前に進むが皇后は私の前に来た。
「これを、貰ってくれる?」
と、手に持っていたキレイにラッピングされた花をくれた。
「わぁ、ありがとございます!」
受け取り花をみる。
小さくて白い花びらが三枚のついている。花の名前は分からない。
「これを、あの薔薇の花瓶と一緒に入れて欲しいの!」
“カレルド殿下が持って来た薔薇に?”
断る理由はない。
「ええ!もちろんです!」
ニーナ目配せをする。すぐにニーナが動く。
「ありがとう!」
そう言い陛下の横に行き2人でソファに座る。
座られたのを確認し、エマが素早くお茶を入れ両陛下に差し出しテーブルの真ん中にお茶菓子を置く。
その間に私も両陛下と向かい合う方のソファに座る。
エマが私を見て紅茶のティーポットを持ち上げる。
“ああ、白湯もあったんだっけ。白湯だと心配されそうね…”
頷き合図する。エマもコクリと頷き私の前に紅茶を置く。
すぐにニーナが戻って来て薔薇の入った花瓶をテーブルに置いた。
「おお、それがロザリアが言っていたカレルドがアルヤ嬢に送った薔薇かね?」
興味深そうに陛下が言う。
“すでに皇后様から陛下に伝わっているのね。”
「そうなの!あの子がこんな事するなんて想像してなかったわ!」
とても嬉しそうに皇后が陛下に話す。
“陛下もこの薔薇の意味がわかるのだろうか…”
受け取った花を花瓶に刺すためにラッピングを取ろうとするが手が止まった。
「アルヤ?どうしたの?」
皇后のが尋ねてくる。
「あ、いえ、とてもラッピングがキレイなので取るのが勿体なく思ってしまって」
「まぁ!そんなの良いわよ!」
そう言うと皇后様は立ち上がこっちまで来てラッピングを取る。
陛下はその間、紅茶をすする。
「さあ、取れたわ!一緒刺しましょー、はい!」
ラッピングが外され出て来た花を一輪私に差し出す皇后。
「ありがとございます!」
2人で薔薇の隙間に小さい花を刺す。
「きゃー!アナタみて!娘と花瓶にお花をさしてるわ!私ー!」
無邪気に笑う皇后。
「ずるいぞ!私にも一本かしなさい!」
と陛下。
一本を皇后から受け取った陛下は私の所にきて花を刺す。
「どうだ!私も娘と花を刺したぞ!」
いえい!っと両陛下がお互いに手をパチンと、合わせる。
呆気に取られながら何とか頂いたお花を全て刺すことができた。
“歴代1仲良し夫婦だと言われてるだけあるわね。”
ほぼ歴代の皇帝は側室を何人か作っているが現陛下は皇后様お一人だ。
前の皇帝陛下、つまり現皇帝陛下のお父様は女好きで側室はもちろん色んな所に女性がいたとか。
薔薇だけだった花瓶に、白い小さいな花が増え華やかになった。
「とても華やかになりましたね!ありがとうございます」
お礼をする。
「私が気に入ってるお花で『ベール』っ言うの!薔薇にも合うと思って!」
ニコニコと皇后様は言う。
「『ベール』と言うお花なのですね!小さくて可愛いですね」
「でしょー!」
っと手を腰に当てて『えっへん』と胸を張る。
「見つかってカレルドに激怒されても、私はしらないからな?」
陛下が笑みを浮かべながら言う。
「な!怖い事言わないで!」
焦る皇后をしりめに笑う陛下。
紅茶を一口飲み思う
“本当に仲がいいわね。”
見ているこっちまで羨ましくなる。
はははっと、笑い終えた陛下が一口紅茶を飲み言う。
「本当は昨日、目が覚めたとマルセルから報告を受けてすぐ来ようとしたんだが、マルセルに止められてね
『気を使わせて疲れされるからダメだ』
だと。
夜中にカレルドとも話したが
『行くな。』
とだけ言うんだ!
全く…息子どもは、もう少し気の利いた言い方かができないものかねぇ」
“止めてくれて良かったわ…”
心の中ではそう思ったが言えるわけがない
「そうでしたか…」
苦笑いするので精一杯だった。
表情を隠そうと、紅茶を口もとに持って行き少し飲む
「だから2人が忙しい午前中に会いに来たのよぉ!」
皇后…
“なるほど、だから午前中で私が謁見室に呼ばれなくて両陛下が来たのね…”
「あれじゃ、顔が良くてモテて結婚できたとしても、内面があれじゃすぐ離婚だな!」
はははっと笑う陛下だが皇后のは真剣に言う。
「あんなバカ息子たちから選べなんて事になってごめんなさいね?
嫌になったら、すぐ言って!
絶縁してこの国から追い出すから!」
“…冗談よね?”
ははーと乾いた笑いをすることしか出来ない。
「それはいい!何なら2人とも追い出してアルヤ嬢を女帝で迎えるか!」
“とんでもないことに言い出した!!!!!?
この2人は本当に、しそうで怖い!”
、
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