上 下
10 / 192

両陛下お出迎え準備

しおりを挟む





「お嬢さま。おはようございます!朝ですよ!」


 呼ばれて目を覚ます。

「ニーナ?」

 ゆっくり身体を起こす。
 いつの間にか眠ってしまって朝になっている。

「おはよう。」

「おはようございます!カーテン開けますね」

 眩しい朝日が部屋を照らす。

「あれ?これ何ですか?」
 ニーナが拾ったのは昨日カレルドが持ってきた薔薇束のラッピングだ。

 ”そう言えば雑に捨ててたわね。”

「あ、それ夜にカレルド殿下がきて薔薇を持ってきてくださった時のね。」

「え、殿下が来られたのですか!」

 そう言い花瓶に目をやるニーナ。
 見るなりギョッと目を見開いた。

「ニーナが言ってた1本じゃなくて5本もって来てその内1本は白薔薇なの。
 殿下はコレで完成だと言っていたけどよくわからなくて。」


「え…これって…」
 ニーナがすごく驚いている。

「え?意味知ってるの?」
 そう尋ねると同時に勢いよく扉が開いた。


「おはようございます!お嬢さま!朝食持って来ました!」
 エマだ。

「こら!そんな勢いよくはいって来ないで!」
 ニーナがエマを叱る。

 えへへっとエマはテーブルに朝食を置く。
「昨日食べられてたポトフとパンを持って来ました!」

「ありがとう。エマは朝から元気ね」

 立ち上がり朝食が置かれたテーブルまで移動する。
 ニーナが椅子を引いてくれて座る。

「はい!とっても元気です!
 それに、聞いてください!」
 目を輝かせるエマが朝食を食べる私に言う。

「ん?」

「今日、両陛下がお昼前にお嬢さまに会いにくるそうなんです!」
 食べる手が止まる。

 “会いにくるって、私が行くのではなくて?!”

「あら!大変!色々準備しなくてわ!」
 後ろにいたニーナが言う。

「そうなんです!
 なのでアノル様にお嬢さまをお風呂に入れて差し上げてもいいか聞いて来たら、体調に問題なければ良いそうなんです!!

 お嬢さま!体調はいかがですか!?」
 ずいっとエマの顔が近づいて来た。

「え、ええ。どこも悪くないわ」

 私がそう言うとエマとニーナが顔をあわせる。

「私は浴槽の準備とクリームやタオルの準備をしてきます!」
 と、エマ

「じゃぁ、ドレスとアクセサリーの準備は任せて!」
 と、ニーナ。

 バタバタと準備が始まる。

 “懐かしいわね、この感じ。”

 そう思いながらパンをちぎり食べる。

 ニーナがウォークインクローゼットから私に声をかける。

「お嬢さまはご希望ありますか?色とか、形とか…」

「ないわ。あなたに任せるわ。」

 楽しそうなニーナを見ながら朝食を口に運ぶ。

 エマも寝室の左側の扉に行ったり来たりしている。

 あの奥に浴室がある。
 右側の扉の奥は執務室。勉強部屋と言った方が今は正確だろう。
 ここは皇后陛下が皇太子妃時代の時の部屋だ。


 シャンドリ邸をでて皇宮に越してきた時に教えてもらったことだ。

 部屋の壁をぶち抜いて部屋同士を繋ぎ改装をし使いやすいようにしたと皇后陛下に聞いた事がある。

 大胆なお方だ。

「お嬢さま!コチラとコチラ!どちらがよろしいですか!?」
 ニーナが二つのドレスを持ってきて聞く。

「んー、オレンジのほうかな。」

「わかりました!合わせてアクセサリーを選びますね!」
 両陛下が尋ねてくるのだ。気合いが入るのは当然だ。

「あ、ニーナ!帰られたら着替えるからその準備もできる?」

「わかりました!」

 朝食を食べ終える。
 少なめだが今の私の胃の大きさにはコレくらいがちょうど良い。

 丁度エマが帰ってきた。
「準備終わりました!いつでも入れますよ!」

「ありがとう。ニーナの準備が終わったら入りましょ。」

「久々のお風呂ですねー!気合いが入ります!!」

 やる気がみなぎっているエマ
「ふふ。お手柔らかに。」

「準備できました!さぁ!お風呂です!」
 ニーナもやる気がみなぎっている。





 髪や身体を丁寧に洗い湯船にはいる。


 チャプン。


 足からゆっくり入り浸かる。

「気持ちいいわね…」
 深く息を吐く。

「次は髪のトリートメント!お肌のパックと…あ!香りは何にしますか?」

 エマが言いながら髪にトリートメントを馴染ませる。

「香りはいらないわ。石鹸の香りで十分よ。」

「えー!そうですかー?色々ありますよ?
 バラ、ラベンダー、カモミール…」

「石鹸の香りがいいの。」

「はーい…」

 不服そうだがエマは従う。

 “石鹸の香り…”
 深夜のカレルドの香りを思い出す。
 ふわっと石鹸の微かな香り。
 抱きしめられた感覚も残っている。

 薔薇の事が頭から離れない。

 “ニーナが何か知ってそうだったな…
 エマも知っているのかな”

 チラッとエマを見る。

 次の準備をしているのだろう。
 楽しそうだ。


 “知っていたとしても。
 これは自分で調べなきゃ行けない気がする。
 ズルはダメよね。宿題だもの。”

 思いだし、ふふっと笑ってしまった。

「次はお顔のパックです!
 塗りますから触らないで下さいねー」

 そう言うとエマがハケで私の顔にパック
 をおでこから下へと塗る。

「そう言えばニーナは?」

「ニーナならお茶の準備と軽く執務室の掃除をしてくるそうですよ!」

「そう。」

「さぁ。お口周りを塗りますよー!」

 すると、ドタバタと廊下の方が騒がしくなった。

「な、なに?」

 とっさにエマの顔を見る。


 どんどんドタバタが近づきてくる。




『…陛下!』
 ???



「今、陛下って聞こえませんでした?」
 エマが言う。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

貴方の事なんて大嫌い!

柊 月
恋愛
ティリアーナには想い人がいる。 しかし彼が彼女に向けた言葉は残酷だった。 これは不器用で素直じゃない2人の物語。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜

平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。 だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。 流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!? 魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。 そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…? 完結済全6話

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢

alunam
恋愛
 婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。 既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……  愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……  そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……    これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。 ※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定 それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!

あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」 結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は…… 短いお話です。 新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。 4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』

処理中です...