3 / 220
私の侍女
しおりを挟むコンコン。
扉をノックする音
「マルセル殿下。
医師長とお嬢様の侍女二人を連れてまいりました。」
「あぁ。入ってくれ。」
マルセル殿下はそっと立ち上がり扉の近くに移動する。
扉が開き白髪の老人と
侍女二人が部屋に入る。
“医師長とアノルと、
私の侍女のニーナとエマだ!
…アノルはあまり変わりないけど
侍女2人は大人になっちゃってる!!”
護衛であろう方がお辞儀をし外に出て扉を締める。
3人は深々とお辞儀をする。
「皇太子殿下にご挨拶申し上げます。」
医師長のアノルが言う。
「朝早くにも呼ばれたのにすまないね。」
3人とも顔を上げる。
「ほほっ大丈夫ですよ。
お嬢様も朝より顔色が良さそうで。」
私をみてニッコリと笑う。
ペコリと挨拶をする。
“顔色がいいって顔が赤いってこと?!!”
侍女のエマがプルプルと泣いているようだった。
「あぁ、…ちょっとアノルと話があるんだ。
君たち二人はちょっとお嬢様を見ててくれないか?」
マルセル様は侍女二人に言う。
「はい!」
力強く返事をし二人は小走りで私の元にきた。
「おじょおざまぁぁぁ!!」
エマが私の前でペタンと座り込み大泣きしだした。
“えぇー…”
「じんでじまっだがとおもいまじだぁあ!(死んでしまったかと思いました。)」
ボロボロと泣く子をどうしていいか分からなくなる。
「ちょ、そんなに泣かないで…ね?」
こんな事しか言えない。
それを見てもう一人の侍女ニーナも口に手を当てグスングスンと泣いていた。
“えぇ…あなたも…?!”
「そ、そんなに泣いたらお嬢様に、ご、ご迷惑よ!」
“そんなあなたも泣いてるけどねー”
フフっ
思わず笑ってしまった。
大人になっても全然変わらない2人。
私をとても心配してくれて、こんなにも泣いてくれる人がいる事はとても嬉しかった。
大泣きしているエマの頭をよしよしと撫でる。
「大丈夫よ。ちゃんと生きているわ。
心配してくれてありがとう。」
「おじょおざまぁぁぁ!」
私の腰辺りに抱きつくエマ。
アナタもおいで?っともう片方の腕を上げる。
伝わったったのだろう。
もう一人の侍女ニーナも私の腕の中にきてポロポロと泣く。
二人を抱きしめ
「もう、泣かないのー」
と声をかけていると
「ほほっ 美しい友情ですのぉ」
先程まで部屋の片隅で二人で話していたアノルとマルセルが戻ってきていた。
私は少し困った笑顔をみせた
「さぁお嬢さんがた。診察しますのでその辺で。」
アノルが侍女等にニッコリと言う。
「「はぃ…」」
グスングスンと鼻をすすりながら二人は名残惜しいそうに私から離れる。
それを見てまたフフっと笑いがでてくる。
医師アノルが私の近くに小さな椅子を持ってきて座る。
そして顎に手を当て何かを考えている。
“さっきのマルセル様との話しはきっと私の記憶がない。との事だろう。”
ならば。。。
「…アノル様」
「はい、何ですかな?」
「私、暖かいものが飲みたくて。
白湯なら飲んでも構いませんか?」
微笑みを医師に向ける。
少し驚いたように見えたが
「えぇ、それは良い考えです!
身体も温まりますからね。」
私の提案を笑顔でのんだようだ。
私は侍女等の方に顔を向ける。
「白湯を用意してもらえる?
あと、身体も拭きたいの。お湯の準備もお願いできる?」
「もちろんです!」
そう言うと侍女等は部屋を出て行った。
64
お気に入りに追加
192
あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄されたので田舎に引きこもったら、冷酷宰相に執着されました
21時完結
恋愛
王太子の婚約者だった侯爵令嬢エリシアは、突然婚約破棄を言い渡された。
理由は「平凡すぎて、未来の王妃には相応しくない」から。
(……ええ、そうでしょうね。私もそう思います)
王太子は社交的な女性が好みで、私はひたすら目立たないように生きてきた。
当然、愛されるはずもなく――むしろ、やっと自由になれたとホッとするくらい。
「王都なんてもう嫌。田舎に引きこもります!」
貴族社会とも縁を切り、静かに暮らそうと田舎の領地へ向かった。
だけど――
「こんなところに隠れるとは、随分と手こずらせてくれたな」
突然、冷酷無慈悲と噂される宰相レオンハルト公爵が目の前に現れた!?
彼は王国の実質的な支配者とも言われる、権力者中の権力者。
そんな人が、なぜか私に執着し、どこまでも追いかけてくる。
「……あの、何かご用でしょうか?」
「決まっている。お前を迎えに来た」
――え? どういうこと?
「王太子は無能だな。手放すべきではないものを、手放した」
「……?」
「だから、その代わりに 私がもらう ことにした」
(いや、意味がわかりません!!)
婚約破棄されて平穏に暮らすはずが、
なぜか 冷酷宰相に執着されて逃げられません!?

(完結)伯爵令嬢に婚約破棄した男性は、お目当ての彼女が着ている服の価値も分からないようです
泉花ゆき
恋愛
ある日のこと。
マリアンヌは婚約者であるビートから「派手に着飾ってばかりで財をひけらかす女はまっぴらだ」と婚約破棄をされた。
ビートは、マリアンヌに、ロコという娘を紹介する。
シンプルなワンピースをさらりと着ただけの豪商の娘だ。
ビートはロコへと結婚を申し込むのだそうだ。
しかし伯爵令嬢でありながら商品の目利きにも精通しているマリアンヌは首を傾げる。
ロコの着ているワンピース、それは仕立てこそシンプルなものの、生地と縫製は間違いなく極上で……つまりは、恐ろしく値の張っている服装だったからだ。
そうとも知らないビートは……
※ゆるゆる設定です

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)
青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。
だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。
けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。
「なぜですか?」
「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」
イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの?
これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない)
因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。
腹黒宰相との白い結婚
黎
恋愛
大嫌いな腹黒宰相ロイドと結婚する羽目になったランメリアは、条件をつきつけた――これは白い結婚であること。代わりに側妻を娶るも愛人を作るも好きにすればいい。そう決めたはずだったのだが、なぜか、周囲が全力で溝を埋めてくる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる