上 下
3 / 192

私の侍女

しおりを挟む



 コンコン。


 扉をノックする音

「マルセル殿下。
 医師長とお嬢様の侍女二人を連れてまいりました。」

「あぁ。入ってくれ。」

 マルセル殿下はそっと立ち上がり扉の近くに移動する。

 扉が開き白髪の老人と
 侍女二人が部屋に入る。

 “医師長とアノルと、
 私の侍女のニーナとエマだ!
 …アノルはあまり変わりないけど
 侍女2人は大人になっちゃってる!!”


 護衛であろう方がお辞儀をし外に出て扉を締める。

 3人は深々とお辞儀をする。

「皇太子殿下にご挨拶申し上げます。」
 医師長のアノルが言う。

「朝早くにも呼ばれたのにすまないね。」

 3人とも顔を上げる。
「ほほっ大丈夫ですよ。
 お嬢様も朝より顔色が良さそうで。」
 私をみてニッコリと笑う。

 ペコリと挨拶をする。

 “顔色がいいって顔が赤いってこと?!!”

 侍女のエマがプルプルと泣いているようだった。

「あぁ、…ちょっとアノルと話があるんだ。
 君たち二人はちょっとお嬢様を見ててくれないか?」

 マルセル様は侍女二人に言う。
「はい!」
 力強く返事をし二人は小走りで私の元にきた。


「おじょおざまぁぁぁ!!」


 エマが私の前でペタンと座り込み大泣きしだした。

 “えぇー…”

「じんでじまっだがとおもいまじだぁあ!(死んでしまったかと思いました。)」

 ボロボロと泣く子をどうしていいか分からなくなる。

「ちょ、そんなに泣かないで…ね?」
 こんな事しか言えない。

 それを見てもう一人の侍女ニーナも口に手を当てグスングスンと泣いていた。

 “えぇ…あなたも…?!” 

「そ、そんなに泣いたらお嬢様に、ご、ご迷惑よ!」

 “そんなあなたも泣いてるけどねー”

 フフっ
 思わず笑ってしまった。

 大人になっても全然変わらない2人。

 私をとても心配してくれて、こんなにも泣いてくれる人がいる事はとても嬉しかった。 


 大泣きしているエマの頭をよしよしと撫でる。

「大丈夫よ。ちゃんと生きているわ。
 心配してくれてありがとう。」

「おじょおざまぁぁぁ!」
 私の腰辺りに抱きつくエマ。

 アナタもおいで?っともう片方の腕を上げる。
 伝わったったのだろう。
 もう一人の侍女ニーナも私の腕の中にきてポロポロと泣く。

 二人を抱きしめ
「もう、泣かないのー」
 と声をかけていると

「ほほっ 美しい友情ですのぉ」

 先程まで部屋の片隅で二人で話していたアノルとマルセルが戻ってきていた。

 私は少し困った笑顔をみせた

「さぁお嬢さんがた。診察しますのでその辺で。」

 アノルが侍女等にニッコリと言う。
 
「「はぃ…」」

 グスングスンと鼻をすすりながら二人は名残惜しいそうに私から離れる。
 
 それを見てまたフフっと笑いがでてくる。


 医師アノルが私の近くに小さな椅子を持ってきて座る。

 そして顎に手を当て何かを考えている。

 “さっきのマルセル様との話しはきっと私の記憶がない。との事だろう。”
 ならば。。。

「…アノル様」

「はい、何ですかな?」

「私、暖かいものが飲みたくて。
 白湯なら飲んでも構いませんか?」
 微笑みを医師に向ける。

 少し驚いたように見えたが
「えぇ、それは良い考えです!
 身体も温まりますからね。」

 私の提案を笑顔でのんだようだ。

 私は侍女等の方に顔を向ける。
「白湯を用意してもらえる?
 あと、身体も拭きたいの。お湯の準備もお願いできる?」

「もちろんです!」

 そう言うと侍女等は部屋を出て行った。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

別れてくれない夫は、私を愛していない

abang
恋愛
「私と別れて下さい」 「嫌だ、君と別れる気はない」 誕生パーティー、結婚記念日、大切な約束の日まで…… 彼の大切な幼馴染の「セレン」はいつも彼を連れ去ってしまう。 「ごめん、セレンが怪我をしたらしい」 「セレンが熱が出たと……」 そんなに大切ならば、彼女を妻にすれば良かったのでは? ふと過ぎったその考えに私の妻としての限界に気付いた。 その日から始まる、私を愛さない夫と愛してるからこそ限界な妻の離婚攻防戦。 「あなた、お願いだから別れて頂戴」 「絶対に、別れない」

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜

平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。 だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。 流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!? 魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。 そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…? 完結済全6話

貴方の事なんて大嫌い!

柊 月
恋愛
ティリアーナには想い人がいる。 しかし彼が彼女に向けた言葉は残酷だった。 これは不器用で素直じゃない2人の物語。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢

alunam
恋愛
 婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。 既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……  愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……  そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……    これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。 ※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定 それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!

処理中です...