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2章
31.
しおりを挟むSide:唯都 ここは森の中。
この前会った人がいない森の奥深くの所で俺は寝ていた。
傍らではリィとロナが羽を休めている。
「っ……はぁ…」
学院での生活はいまだに慣れない。
よくここまで体を休めるために来ていた。
今日は少し胸騒ぎがする。
先日アキが言っていた野外訓練の日だからか、それとも…。
風と鳥たちが心配するように俺の髪をゆらす。
俺は心配ない、と風に話しかけ2羽を撫でると泉で顔を洗う。
リィとロナは水面に飛び立ち楽しそうに水浴びをしている。
「はぁ…。野外訓練か。面倒だと思わないか、アキ。」
「仕方ない。姫にとってはお遊び程度でしかないしな。学生らは実践経験がほぼ無いといっていい。」
木の影から邪魔をしないように様子見していたアキは俺の問いかけに答え近くによってきた。
「……どっちにしろ特殊警察も成体までしか戦わないし。」
「だが、今回はちょっと危険な所になった。」
そう言うとアキは俺に1枚の資料を渡してくる。
中身には、今日行われる訓練の場所と割り振り、メンバー表が記載されている。
「深樹の森?あそこはアヤカシが蔓延る危険度A級の森だろ?…何を考えているんだ、学長は。」
深樹の森はこの学院から少し離れた場所にあるアヤカシが大量に発生している危険な森だ。
普段から警備隊によって監視され、風華組も老生体や狂乱が現れた時は討伐に赴いている。
「原因は不明だが、深樹の森に通常の3倍のアヤカシが発生しているんだとか。警備隊では人手が足らないから、学生も訓練を兼ねて参加するだとよ。」
「にしては、このメンバー表。実力に偏りがあるように見えるが?」
「それは…。メンバーの実力によって担当する区画を決めてるから。姫達にはより内部に潜入してもらうと学長が。」
「面倒な…。」
よいしょと起き上がると水浴びから戻ってきた2羽を風で乾かし、撫でてやった。
学長は俺の正体を知っている。
だからこそのこの組み合わせなのだろう。
「すまない、姫。」
「いい。」
申し訳なさそうなアキを見ていればわかる。
彼に非はない。
「そういえば…なんでこの場所分かった?」
誰にも見つからないように奥まで来たのに。
「俺もこんな場所があるなんて知らなかったさ。姫を見つけるのは案外簡単だぞ?
いつも姫がいる方へ風は流れるからな。姫が本気で隠れようとしない限り見つけられるさ。」
「ふぅん…」
なるほど、いつもナンバーズが俺を見つける時はそうしているのだろう。
慣れた様子のアキをみればわかる。
「悠紀と來珂も今日から合流できるそうだ。特別講師として訓練に参加できる。イナヅカが接触しそうなメンバーには悠紀と來珂、七瀬と呂姫が各チームに別れて参加する。姫は1番接触がありそうなメンバーに意図的に入れてもらった。」
「分かった」
「そろそろ時間だ。」
今更だが面倒だ。
「表情の読めない姫でも、今のは分かったぞ。面倒がってないで来てくれ。」
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