風華風唱-400年経った世界は残酷で優しかった

Aime

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1章

15.

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ちょっとグロテスクな表現があります。






________________



攻撃をあしらいながら着いた先は古びた場所。


次々に繰り出される攻撃に嫌気が指してきた俺は、そのまま奥の方へ弾き飛ばした。


「ここは?」


コキコキと肩を鳴らしながら、先導していた学生に問いかける。


よく見ると闘技場のような所だ。


「以前使っていた戦闘科の専用闘技場だ。
今は新しい場所が出来たから使われていない。」


なるほど、ここだと寮からも遠いから少々暴れても問題なさそうだな。


「ぐぅ…」


そこへ奥の方に吹き飛ばされた男が頭をかかえながら瓦礫の中から出てくる。


「ふうん、結構しぶといな。」


「チッ、貴様何者だ?学生ではないな?」


「名乗るならお前からだろう、ゼロス。」


間合いを取りながらお互い闘技場の中心へ進んでいく。


その間にも放たれる爪をひらり、ひらりとかわしていく。


「誰が名乗るか!?…グッ、薬が切れたか。」


突然男は呻き、フラフラとしている。


よく見ると、目が通常の状態に戻りつつあった。


男はふらつきながらも、懐から小瓶を取り出した。


その赤黒い液体はまさに探していたトリナッツァだ。


そのまま男は瓶を傾け、その液体を飲み込んだ。


「ひぁっはあ!これだこれ!この力さえあれば俺は最強だぜェ!」


爪を振り回し飛びかかってくる男。


先程よりかはマシになった程度のスピードだから、まだまだ余裕がある。


俺はひらひらとステップをふみながら踊るように避けていく。


「くっ…お前何者っ?」


「名乗らない者に名乗る名はない。
ただ、依頼を遂行するのみ。」


また飛んできた爪を避け、答える。


「任務…?っまさか!!……風華組か!?」


男は焦って俺から距離をとる。


「確か、聞いた事がある。風華組の幹部No.1は踊るように戦うと。…乱舞姫か!」


「姫いうな、舞風だ。こちらも名乗ったんだから、お前も名乗れ。」


間髪いれずに返答する。


「いいだろう。俺はイナズカの108号だ。」


イナズカ


大日本帝国が誇る研究機関の名だ。


やはり国が関わっていたのか。


だが“ ヤツ”は400年前に滅んだはず。


一体どうやって…


「ははん。この名を聞いて怖気づいたか!
お前らは国家の研究機関に敵対しているんだからな!」


黙った俺を見た男は、何を勘違いしたのか声高らかに偉そうに胸を膨らませる。


「…」


「ふん、声もでないか!風華組もちょろいな!っっ死ね!!」


薬が馴染んできたのから男はスピードを上げて爪を振りかざしてくる。


「1つ聞きたいことがある。
お前能力を使い始めたのはいつ?」


俺はすぐには突っ込まず剣を使って攻撃をいなし、男に問う。


攻撃が当たらず怒りで動きが単調になっていた男は、俺の問に止まる。


「半年前くらいか?…ぐっ……何だ…?」


男が突然、苦しみ始めた。


以前薬をNo.8の白夜に調べさせたところ、この薬は依存性が高いだけではなく、副作用として服用し続けた人間は必ず“ アヤカシ”になっているという。


その時間はもって半年ほどとか。


「限界を超えたか……お前ら、見とけよ。これが、薬に依存した者の結末だ。」

 
柱の影に隠れている学生達は男の姿がぶくぶくと膨れあがっていくのに恐怖し、悲鳴をあげている。


通常の人間の体より何倍も膨れ上がった所々が肉が裂け、アヤカシ特有の瘴気が溢れだしている。


「アガァァァァァァァア!!」


男の正気もなく、ただ叫ぶだけになっている。


グロテスクな形になったそれは更に太くら鋭い刃物のような爪を振りかざす。


「っつ~…やっぱ模擬剣だとダメか…」


簡易模擬剣であしらうも、スパンッと切られ、使いものにならなくなる。


「お、おまえ、剣が!」


学生の1人がズタズタになった剣を見て悲鳴をあげている。


「ギャァァァア!!」


さて、少し本気になりますか。


「危ない!!」


学生の一人が叫ぶがお構いなしに、‘それ’を睨む。


「調子にのるな…」


ただ睨んだだけだったが、‘それ’の動きが止まった。


「なんだ…呑まれても、殺気には怖じけずくか。」


俺は一瞬、‘それ’に殺気を放ったのだ。


「ガ…ギャア!!!」


それは俺から殺気が飛ばなくなったのを見て、また襲ってきた。


「よし………」


その隙をみて、俺はパァンと柏手をうち、手をこするようにひねった。


「風を喰いしは……絶風ぜっぷう!!」


左手のひらから出てきた‘峰’をつかむと振り向き様に抜いた。


風翔ふうしょう流抜刀術……一閃風牙いっせんふうが-。」


俺は目にも止まらぬ速さで振り抜き、絶風を鞘におさめる。


チィン――トサッ


「ギャァァァァ!!」


「えっ…」


学生達が唖然とする中、‘それ’は真っ二つになった。


「ふぅ…弱いな。……極炎、そこにいるだろう。」


先程から気配のあったアキに呼びかけると、サッと俺の近くに膝まづく。


「はっ、ここに。」


「後処理と、警察に連絡を。
それと……二度と薬に手を出さないよう、ちょ…“教育”しとけ。」


「「「(今、“調教”って言おうとしたよな!!!)」」」


学生達は口元だけ笑っている俺をみて顔を引きつらせた。


「(たのしそうだな、姫……)」


アキはそんな俺をみて苦笑していたそうな…

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