異形の魔術師

東海林

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王立魔術院編

第20話

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 翌日は王立魔術院の演習場での実際に魔法や体を動かしてのテストだった
 ちなみにドルトスさんは結局古巣から帰ってこないらしい

 2人ともお願いだから責めるような目で見ないで欲しい
 ついでにミシュリーさんは何故か誇らしげなのは何でですかね?

 テスト結果から言えば、文字通り人間辞めましたレベルだった

 この姿になる前に魔法的には初級魔法しか使えなかったし、一度に込められる魔力も少なかったから属性魔法の威力だけ見ると低かった
 それが込められる魔力も増えたお陰で、初級魔法の威力を大幅に超えて中級クラスまで威力が出ていた
 魔法に関しては下手すると施設に被害が出そうなので終了、純粋な身体能力のテストに移った

 予想はしていたけど、この体のポテンシャルは凄かった

 まずは走りについて
 やはりこの足の形は走るのに向いているようで、軽く流した程度でもかなりのスピードで走る事が出来た
 王立魔術院の演習場はかなり広く、壁沿いを1周すると約1kmほど
 軽く流して走って約4分ほど
 頑張って2分少々で回れてしまった
 ちなみに10周ほど走ったけれどそんなに疲れてないので、持久力も申し分なし
 この次点で変な笑いが込み上げてきた
 身体強化使えば1周1分切れるんじゃ無いかな?

 ジャンプ力も軽い垂直跳びで7~8m、助走を付ければ15mは軽く跳べる
 今まで重く感じた重量も、軽々持つ事も出来た

 昼休憩の時には、ホントに化け物になったんだなぁとしみじみ思い返してしまったよ
 このからだとは出来るだけ短い付き合いでありたいんだけど……

 午後からは武具の合わせだ
 ミネアさんから冒険者も愛用する者が多い丈夫な生地で作られた服が届いたので早速着替えて演習場に戻ると、入り口付近に10点ほどの剣やメイスが並べられていた

 その中の一本はとにかく異彩を放っていた


 それは剣というにはあまりにも大きすぎた


 ってコレ作ったヤツ絶対に転生者だろ!
 しかも日本人の!
 アホか!
 こんなロマン武器使える人間居るわけ無いだろ!

 俺は大好きだけどな!!

「おう、ソイツが気になるか?見る目があるな」

 脳内で全力で突っ込みを入れていると、鉢巻きをしたスキンヘッドの筋肉隆々のおっさんに話しかけられた

「貴方は?」
「俺か?俺は魔術院で鍛冶関係を束ねてるアストナーって者だ、よろしくな
竜の兄ちゃん」
「ランディです、よろしくお願いします」

 人懐っこい笑顔で握手を求められたので握手に応じる

「話は大体聞いてる。竜の兄ちゃんの使ってた装備は見せて貰った。貴族の見栄なんて無い、実用性重視の玄人好みの良いセンスしてるぜ、それを元にこっちで装備を用意させて貰ったから安心してくれ」

 人の時に使っていた装備一式を渡して今の体に合わせて作り直して貰っていたのが間に合ったようだ
 店売りの普通の皮鎧一式に急所になる部分を鉄で補強して、裏側に魔方陣を刻印して柔軟性を失わずに堅くして重量の軽減を施した物に、楕円形のバックラーに片手長剣が自分のスタイルだった
 金属鎧でガチガチに固めてってスタイルも嫌いじゃ無いけれど自分には合ってなかった

 「それじゃまずは防具からだ」

 そう言われて用意されていた防具を身につけていく
 残念ながら体格だけじゃ無く、物理的に体型が変わったので新調になった
 ミネアさんから採寸情報が送られていたので 一般的な皮鎧一式を元に改造したそうで、作業自体はそれほど難しい物では無かったらしい
 そうは言っても微調整は必要で、先ほどから言われたとおり動いて調整してを繰り返しているけど、それも30分ほどで終了した

「さてお次は武器だ、とにかく丈夫なのってリクエストだったから幾つか見繕ってきたぞ。なんだったらさっき見入っていた秘蔵の一品でもいいぞ」
「ははは、それは後に取っておきますよ」

 最初に手にしたのは前からの愛刀である片手長剣
 フォーンツ家と取引のあった鍛冶工房の物で、自分でお金を稼いで貯めて、数打ちの剣の中でも吟味して購入した思い出の品だ
 もちろん魔方陣を刻んで強化してある
 剣を構え普段練習していた型をこなす
 身体能力が上がったお陰で振り回される事は無いけれど、縮んだ体には長すぎるし、何より全力で振ったら壊れるのが判ってしまった
 いずれ買い変えなければならないとは判っていたけれど、思い入れのある剣だっただけに残念だった
 用意されていた剣を幾つか試した結果、ショートソードを使っていく事にしたけれど、今ある中では強度に不安があるので1本打って貰う事になった
 オーダー品の剣なんていったい幾らかかるんだろうと悩んでいたら、それは研究費から出るとアストナーさんに豪快に笑われた
 なんでも堅くしなやかな剣を作る名目なそうな

 結局デライズ様との模擬戦用の武器は、メイスを選んだ
 理由は簡単、長さもちょうど良いし、今ある中では一番強度があったから
 後は日が暮れるまでひたすら稽古に励んで新しい武具を馴染ませていった


 ちなみにアストナーさんたっての希望で、でっかい剣を持ってみる事に
 両手で持ち上げる事も出来たし、なんとか振り回す事も出来た
 その姿を見て、研究班の2人は呆れ顔、ミシュリーさんは相変わらずニコニコ、アストナーさんは興奮しっぱなしだった
 剣の柄近くに、名が小さく目だたないよう刻まれているのに気がついた

 そこには『ザンカントウ』と刻まれていた

 やっぱりコレ作ったの日本人だろ!!
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